においで醒めた(2016年1月と2月)

御社、って口にするとき恥ずかしい 高価な服を着てるみたいで

参拝の帰りにいなり寿司を買い駅のホームで食べれば冬だ

憎しみは輪郭を得て憎しみは奔馬となってぼくを出てゆく

 *

一時間すわったままで聞いていた話のオチがおばあちゃんかよ

寝転んで就活のこと考えてきょうのアルバイトはさぼりたい

友達が最低な夜、飲んでたら最高な夜 まちがってゆく

使いきるだけなのにただ難しいひとりぐらしのココアを捨てる

たまに出会って遊ぶ程度の関係とおもうオリオンビールを飲むと

ハイランドパークに舌が痺れてる なにを考えてもきみだった

お向かいの女性の口の中にあるガムのミントのにおいで醒めた

(初出:「塔」2016年4,5月号)

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