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好きな本 〜心落ち着く4冊〜

現実に疲れてしまった時、私はよく空想をしているのだけど、時々、うーん…なんか今日は(空想が)乗らないなぁと思う日がある。そんな時は何を考えてもいまいちすっきりしないので、無理せず本の力を借りることにしている。

というわけで今回は、私が現実逃避する際によく読んでいる「心落ち着く本」をご紹介します。

1.『星旅少年』坂月さかな【漫画】

私は「誰かがここに居たんだな」って思える痕跡が好きだ。足跡👣のように雑に脱がれたスリッパとか、丸まった靴下とか、ぐちゃっと捲れた掛け布団とか。そういうのを見ては、台所からリビングに来たんだな〜とか、いつも通りだな〜とか、今日はこうしたんだな〜とか、私の知らない所で起きた誰かの日常を想像するのが楽しい。
街の中の痕跡も好きで、ゆったりとしたカーブを見ると昔は川だったのかなとか、平たい建物はコンビニだったのかなとか、ぼろぼろのプランターを見れば、知らない誰かの毎日の水やりが目に浮かぶ。
この本は、そんな誰かが生きた痕跡を、思い出と共に大切に仕舞ってくれる星旅人のお話。
残された寂しさ、残される寂しさ。
限りある時間、限りない時間。
夜更けにゆっくり読みたくなる本です。


2.『ひらあやまり』嬉野雅道【エッセイ】

嬉野さんは、そよ風のような人だなと思う。テキストから聴こえてくるその声は、とても穏やかで心地良く、ふわっと私を包み込んだあとに、砂のようにさらさらと、笑顔でどこかに消えていく…。なんかそんな感じがする。
会社の一室でおもむろにカフェを始めた話や、そのカフェに訪れる人々との触れ合い、そして嬉野さんの死生観。賑やかな周囲とは裏腹に、飄々とした佇まいが魅力的な一冊です。


3.『アラスカ 永遠なる生命』星野道夫【写文集】

私は寒いのがとても苦手で、秋の空気になった途端、すぐさまモコモコした服を着て、ぐるぐるにマフラーを巻き始め、頭と手をなるべく服の中に引っ込めて、じっと動かなくなる。出来ることなら冬眠したいほどだ。
しかし子供の頃から、"圧倒的に寒くて冷たくて静かで険しい自然"に魅力を感じていて、特に極地(北極や南極、山岳地帯や深海、宇宙など)の写真を見るのが大好きだった。たぶん、自分がいかに小さくて消えそうな存在か確認出来るのが好きだったんだろう。
極地の写真を集めた本には、大抵、被写体に関する情報(名称や説明文)だけが記載されていて、どこか現実味がない。しかし本書では撮影までの経緯や著者が感じた一言が添えられているので、極地の空気を身近に感じることが出来てとてもワクワクするし、やっぱり自分は小さな点だなと感じられて安心する。
抜け落ちたムースの角が、苔むしながら自然に還っていく写真が素晴らしいです。


4.『天平の甍』井上靖【小説】

歴史小説は登場人物が多くて私は不得手なのだが、もともと仏教(主に美術)に興味があったのと、日本画家 平山郁夫さんが表紙を描かれている、という理由で本書を手に取った。
一見難しそうな内容ではあるのだが、細かい情景描写が多いためか、目を閉じれば悠久の時を超え、寺院の景色と凛とした空気が辺りを包み込み、すーっと穏やかな感覚になっていく。
心荒ぶってしまった日に読むのがおすすめです。
(*先日、本書に縁のある唐招提寺へ、ようやく足を運ぶことが出来まして。伽藍も仏像も大変素晴らしかったので、奈良観光される際はぜひ。)

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