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「漠然とした不安を抱えて目標達成の手前で減速しているクライアント」にどうコーチすればいいですか?

コーチングの実践を頑張っているコーチからこんなご相談をいただきました。

クライアントさんで、自分の行動について漠然とした満たされない感覚を感じている方がいらっしゃいます。

その原因として、ゴール手前になって油断している、コロナで漠然とした不安がある&コロナで生活のルーティンが崩れている、単に楽をしたいから、などと推測しています。

・今の不安やもやもやする感情を話してもらい手放してもらう
・コロナに関してはリフレームするとどう見えるか、別の捉え方を試してもらう
・ゴールを達成したその先のゴールを設定する
・次回のセッションまでにコミットすることを聞く

という流れでやってみようかと思っているのですが、そうさんだったらどうしますか…?

まとめますと
☆漠然とした不安に対しての対処
☆ゴール達成間近のときの対応
に関してお伺いしたいです~!!

ご質問ありがとうございます!

ご自身ですでに、しっかりと流れを考えていらっしゃいますね!

ではそれに関連して今日は3つの考え方をご紹介したいと思います。

<今日のご紹介すること>
①「漠然としたもの」の扱い方
②「理想とは違う行動」の扱い方
③「○○のせい」に対する考え方

<こんな方に>
・成長を続けたいコーチの方
・クライアントにより良いセッションを提供したいコーチの方
・漠然とした不安を感じている方
・「思っていることとやっていることが違う」ということが起こる方

こんな人が書いています。


1. クライアントにとって何が「課題」なのか

まずは、今回クライアントが挙げているテーマについて考えてみましょう。

ここには記載していませんが、いただいたご質問を見るとクライアントは今の感覚について独特の表現をされているように感じます。

例えば、「行動してもその時間の満足度が高くない気がする」と話しているとします。

これを読んでくださっている方もぜひ考えてみてください。

あなたがコーチだとして、クライアントが「行動してもその時間の満足度が高くない気がするんです」と言われたら、どう返しますか?

「満足度が高くない、そうなんですね」
「今の満足度は何点くらいですか?」

など、話を前に進めたくなるかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください。ここでは、クライアントにとって何が課題なのかをもう少し聞いてみる必要があります。

ここではぜひ

「満足度が高くないというのはどういうことですか?」
「満足度というのはどんな種類の満足度ですか?」

など、さらに質問をしてみましょう。

「満足度が高くない→それは良くないことだと思う」ということは、「満足度が高くない」という状態についてコーチが自分なりのイメージを持っているということです。

それは本当にクライアントが持っているイメージと同じでしょうか?

そもそも満足度が高くないことの何が問題なのでしょうか?

クライアントが独自の比喩(言い回し)を使っているときや、一般化された言葉を使っているときは、クライアントが持つ心の世界を一緒に見るチャンスです。

そんなときはぜひ

・それはどんな種類の○○ですか?
・それはどういうことですか?
・それについてあなたはどう感じているのですか?
・それはあなたの目標にどんな影響を与えていますか?

などの質問を投げかけてみましょう。

そしてもし、結果として何かクライアントがネガティブだと感じる状態になっているのであれば、そこでさらに

・その代わりにどんな状態でいたいですか?
・本当はどうしたいのですか?

と理想の状態を聞いてみましょう。

クライアントが口にしていることは、本当の課題でも、本当に実現したい姿でもないということは多くあります。その手前にある「課題のようなもの」に目が行っているのです。

言葉にしてみると「今起こっていることは問題だと思っていたけれど、自分の目標に対してネガティブな影響が出ているわけではない」ということに気づくかもしれません。

もしくは、「漠然とした不安」の正体が明確になれば、それに対する行動の選択肢も見えてきます。

まずは「感じていること」と「実際に起こっていること」の両方を言葉にすることを後押ししていきましょう。

感じていることを言葉にすることを後押しする場合は、たとえば

・その感情(もやもやなど)は何から生まれるのでしょう?
・その感情はあなたに何を伝えようとしているのでしょう?

などの質問を使うこともできます。

また、実際に身体感覚を元にするとより深い無意識の領域にアクセスしやすくなりますので、感情とともに感覚を感じてもらい、先ほどの質問の感情を感覚に置き換えて質問をするということもおすすめです。

これが、ご質問いただいた1つ目の「漠然とした不安に対しての対処」でもあります。

<①「漠然としたもの」の扱い方>
・その人独自の表現や一般化された表現を、違う言葉で表現する
・「その結果実際に起こっていること」に目を向ける
・本当に手に入れたい状態を見つける

2. 行動は無意識や本心と結びついている

続いて、②「理想とは違う行動」の扱い方について考えてみます。

今回のご質問では、「ゴール達成間近まで来ているのに行動が減速している」ということが起こっていることは想像されます。

こういうことって珍しくないんですよね。

なぜなら、「行動が減速すること」で手に入るものがあるためです。

そんなことあるの?と思うかもしれません。あるんです。

ぜひ考えてみてください。

▼行動が減速することで手に入っているものがあるとすると何ですか?





たとえば、一番最後にある難しい課題に向き合わなくて済むかもしれません。その結果「上手くいかなかった」という体験をしないで済むかもしれません。「カッコイイ自分」というセルフイメージを失わなくて済むかもしれません。

他にも「やらない」結果、得られるものって、実はたくさんあるんです。


私たちは無意識のところにある「本当に手に入れたいもの」が手に入れられるように行動しています。

無意識の自分は、意外とちっぽけだったり、怖がりだったりします。

そんな自分を認められたときに人は自然と次の行動に踏み出していきます。

だから私の場合は、「今の行動を作り出している自分」や「心の底にある手に入れたいもの」を見つけることを後押しすることが多いです。

でもそこに向き合うのは勇気もいるし、いつも「思考」モードの人や「理想の自分」の鎧が厚い人はすぐには難しいかもしれません。

その場合は、「上手くいかせることのできる自分」を過去の経験の中から見つけることを後押しします。

もしかすると、このクライアントはこれまでもゴール達成間近で行動が減速したりもやもやがわいていくるということが起こっていたかもしれません。もしくは、これまではそうではなく、ゴールに向かって一直線に走ることができていたかもしれません。

いずれにしろ、何かしらのゴールを達成してきているはずなので

・これまで目標達成をしたときは、達成の手前はどんな状態でしたか?
・どうやって上手くいったのですか?
・上手く行き始める直前には何があるのでしょうか?

などと聞いてみることがおすすめです。

もしかしたら「これまでも同じことがあったなあ。これが自分のパターンなのか」と気づくかもしれません。そこで「ゴールを達成した先のイメージができたらやる気が湧いた」ということが分かるかもしれません。

「上手くいくメカニズム」を自分で自分の中に見つけることは、クライアントが自分との信頼関係を強めるとともに、上手くいくことの再現性を高めることにもつながります。

これが、2つ目のご質問の「ゴール達成間近のとき(行動が減速しているとき)の対応」への回答でもありますがいかがでしょうか。

<②「理想とは違う行動」の扱い方>
・理想とは違う行動をしていることで手に入れているものを考えてみる
・理想とは違う行動をしていることで失っているものを考えてみる
・心の深いところでは何を望んでいるのかと向き合う
・「上手くいった」経験から、上手くいくメカニズムを見つける

3. 「コロナウイルスのせいで」は本当ですか?

最後に、この時期クライアントが口にすることが多いであろう「コロナウイルスのせいで」ということについて、一つの考え方をご紹介できればと思います。

それは、アドラー心理学で「目的論」と呼ばれているものです。

ざっくり言うと「人は、原因があってその結果何かの行動をしているのではなく、目的があってそれを満たすために行動をしている」という考え方です。

生活のルーティンが崩れているのは本当にコロナウイルスのせいでしょうか?

本当は、これまでずっと忙しくて、少しごろごろしたかったのかもしれません。

不安を感じて行動が進まないのは本当にコロナウイルスのせいでしょうか?

本当はあまりやりたくないことだったのかもしれません。

それはもしかしたら、台風が来たら台風のせいにするし、不況になれば不況うのせいにするかもしれません。


もちろん中には、「本当はやりたいけどできない」という悔しい思いや苦しい思いをしている人もいるでしょう。

だから全てのことが「あなたが本当はやりたかったことなのでは」というのは乱暴だとは思います。

でも、よくよく考えてみてください。

いろいろな制限がある中でも、本当にやりたいことは何らかの形でやろうとしているのではないでしょうか。どうにかこうにか知恵を絞ろうとしているのではないでしょうか。

「自分の外側に原因があると思っていることほど自分の内側に目的がある」という考え方を、選択肢として持っておくことができると、自分に起こっていることやクライアントに起こっていることに対しても新たな見方ができるのではと思っています。


あなたが今、「コロナウイルスのせい」にしていることはありますか?

それはもしかしたら、あなたの心が、本当は望んでいたことかもしれません。

ぜひまたお話、聞かせてください。

*個人的にいただいたご相談を元に相談者の許可を得て、ご相談内容を編集したものに回答を記載しています。通常のコーチングセッションでは、お悩みの相談をお受けすることやアドバイス・セッション内容の公開は行なっておりません。

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Illustrated by HISAKO ONO




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