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コーチとして生きることを決めた人に生まれる葛藤と乗り越え方【プロフェッショナルの成長のプロセス】

大好きなことを仕事にしたけれど、どこか苦しさを感じる。

さらなる成長を目指したいけれど、こっちの方向でいいのだろうかと不安になる。


わたしたちがプロフェッショナルとして力を発揮していこうとするとき、さまざまなな壁や葛藤にぶつかります。

それはわたしたちが新しいステージに向かっていくからこそ感じるものであり、とても自然なものです。

でもそれが自然なものだと分からないと「これでいいのだろうか」と不安になり、不安がある状態が続いて心が疲弊していってしまうという負のサイクルに入ってしまいます。

一方で、成長のプロセスで起こることやそのメカニズムが分かっていると「こういうものなんだな」「自然なことなんだな」と、ゆったりした気持ちで起こっていることを受け止めることができます。

というわけで、今日は「コーチとして生きていこう」と決めた人に生まれる葛藤の正体をご紹介します。

コーチとしてさらなるステージを目指す人はもちろんのこと、ご自身の専門領域でプロフェッショナルとしてステップアップしていきたい方にもご活用いただければ幸いです。

好きなことを仕事にしたはずが…


コーチングを学び、仕事として(プロとして)コーチをしていきたいと思った人の多くが描くのが「コーチとして生きよう」というイメージです。

これは「必要なときにコーチングスキルを使うのではなく、在り方として常にコーチでいよう」という心構えとも言えます。「コーチングマインドを常に発揮している状態」とも言えるかもしれません。

プロとしてコーチングをメインの仕事にするのではない場合も、コーチ的な関わりや在り方を常にしていたいと思う人も少なくないでしょう。

たとえば、コーチングセッションの時間以外でも、人の話にじっくりと耳を傾けるようになったり、質問をするようになったり、深く共感をするようになったり。

それによって、関わる相手が自然に自分で気づきや勇気を得ていくという体験をし、ますます「コーチングって素晴らしいなあ!」なんて思ったりして。

そしてますます、コーチングスキルやコーチとしての在り方を深めていくことになります。

そしてますますクライアントさんや周囲の人の前進や変容の後押しをすることができて、毎日がとっても幸せ!

となるといいのですが、そうとも限りません。

「コーチとして生きよう」と決めてコーチングを続けていると、ときに

・好きでコーチング(コーチ)をしているはずなのにどこか苦しい
・この方向のまま進んでいっていいのだろうかと不安になる

ということが起こります。

大好きなことを仕事にして、人にも喜んでもらえているのになぜそんなことが起こるでしょうか。

「○○として生きようとする」ときに起こること


それは「コーチとして生きようとする」という構造から葛藤が生まれているためです。

どういうことか。


コーチングは(様々な定義がありますが)コミュニケーションや相手との関係性の形のバリエーションの一つです。

そしてコーチングスキルはコーチングに必要な具体的なふるまいを細分化したものです。

それらのスキルは、わたしたちが自然と行っているふるまいの一部でもあります。

わたしたちが行っているふるまいの一部ですが、全部ではありません。

自分の意見をハッキリ伝えることもあれば、一人で考え込むこともある。
人の話が聞けないこともあれば、誰かを非難することもある。

「コーチとしてふるまう自分」は自分の一部に過ぎないにも関わらず、「コーチとして生きていきたい!」と思うが故に、全ての時間「コーチ」でないといけないと感じてしまう。

そして「コーチ的でない自分」は「あるべき姿に則していない」と感じてしまう。

「コーチとして生きていこう」と決めた人に生まれる葛藤は、自分の一部であったはずのコーチ(コーチング)が自分より大きなもの(生き方のモデル)となり、自分がその一部になってしまうこと、それによって本当は存在しているはずの「多様な自己」の居場所(発揮の場所)がなくなってしまうことによって起こるのです。

これはコーチ以外の仕事や職業でも起こります。

わたしたちが何かに取り組むとき、まずは必ず「その(仕事の)世界観に自分がどっぷり浸かる」ということが起こります。自分がその世界観の一部になるのは、自然なことです。

同時に、特定の能力に意識を向け「どんなときでも使えるように」訓練するのは、その能力を自由に使えるようになるために効果的なプロセスでもあります。

しかしプロフェッショナルとしての成長にはさらなるステージがあります。

自分がその世界観の一部になるのではなく、自分の一部としてその世界観を活かしていく。というステージです。

コーチである前にあなたであることを大切に


その業界の第一人者として知られる心理療法家の方は、プライベートではとても「サラッとした」方だったと聞いたことがあります。

心理療法の場では相手の話にじっくり耳を傾けているとしても、道ゆく全ての人にそうしていたら、時間もエネルギーも到底足りなくなってしまうでしょう。

プロであるからこそ「プロとして力を発揮する場」で力を発揮できるよう自分自身をマネジメントしている。

また、コーチングであれば、コーチ自身が多様な自己にしっかりと居場所をつくっているからこそ、クライアントがさまざまな自己を発揮していくことを後押しすることができます。

あなたはコーチである前に一人の人間です。

コーチ以外のさまざまな側面も持っています。

コーチらしくふるまえないときがあってもそれは自然なことです。


「コーチとして生きようとすること」によって起こる葛藤や苦しさに出会ったときは、ぜひ、コーチ以外のあなたの存在に目を向けてください。

あなたにはいろいろな特徴や想いがあるはずです。

あなたの中にはいろいろな声があるはずです。

コーチ以外のあなたが輝いたとき、コーチとしてのあなたもさらに輝きを増すはずです。



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