見出し画像

猫、再び

朝起きたら猫がいた。

正確には、夜中、目が覚めると蚊帳の外に黒いシルエットがあった。

隣に寝ているピーターさんが「cat」とつぶやいた。その数十分か数時間か前に彼が足元に何かがいるというようなことを言っていたのを思い出す。おぼろげな意識の中「何を言っているんだこの人は」と思ってすぐに眠りについたけれど、どうやら足元に猫がいたということらしい。

蚊帳越しに触れると、これでもかというくらい頭を押し付けてくる。初めて会った猫にされたことのない反応だ。

頭がかゆいのか、体調が悪いのか、とにかく触れるところをぐいぐい押してくる。

寝ぼけ眼のまま「レロス島で赤ちゃんだった猫が来たんだ」と言うと、「そうだね」という返事が返ってくる。

昨年の8月、ギリシャの小さな島で生後間もないであろう子猫の世話をして以来、どこかで小さな猫を見るとあのときの猫が姿を変えてそこにいるかのような感覚を覚えた。

少しずつ大きくなり始めた頃に島のカフェで働く女の子に託した猫が、幸せに暮らしていてほしいという願いをいつも持っていた。

猫との別れは、数ヶ月ごとに国をまたいで旅をする中で、唯一、ひとところに居続けられない寂しさを感じた瞬間だったかもしれない。

そんなわたしたちのところにまた猫がやってきた。

開け放った寝室の扉から入ってきて、ベッドに飛び上がり、そして蚊帳越しに何かを訴える。おなかがすいているのだろうか。昨日湖のほとりに遊びに来た誰かとはぐれて迷子になってしまったのだろうか。いやむしろ、これは夢なのだろうか。

そんなことを思いながら遠のく意識の中、朝起きたときにも猫がいたらいいなあという望みをこめて「猫の友達ができた」と英語で言うと、日本語で「ネコ、トモダチ」という言葉が返ってきた。「ネコ、トモダチ」という音の響きを味わいながら目を閉じた。


窓越しに見える山肌は光を浴びている。

猫は見当たらない。やはりひと夜の夢だったか、と周囲を見回しながら残念に思っているとピーターさんが言った。

「僕の足元に猫がいるよ」

見ると彼の足元に丸まっているものがある。

どうやら一晩中ベッドの上の、彼の足元にいたらしい。


そして今、窓際の大きな机でジャーナルを綴るわたしの横には猫が座っている。

冷蔵庫の中にあったチーズをあげるとすごい勢いでかぶりつきあっという間に食べてしまったので、ピーターさんは近くの商店にキャットフードを買いに行った。

と言っても、歩いて15分以上ある場所にある小さな店で、そもそもそこにキャットフードが置いてあるかも分からない。でも店はきっと7時に開くだろうと出て行く姿を見て、この人のこういう姿勢はいったいどこから出てくるのだろうと思った。

その店が開いていなくてもきっと、普段食事を取っている小さな食堂のような場所できっと鶏肉を茹でるか焼くかしたものを買ってくるに違いない。

ちょうど数日前、来月の滞在場所について話をしたところだった。


二人ともいたくこの場所が気に入っているのでわざわざ他の場所に行かなくていいかもねとそんなことを話した。

レロス島でも気に入って滞在2ヶ月目に入った場所に子猫がやってきた。

どうやらわたしたちは長く一つの場所に滞在していると猫がやってくるらしい。

ここには1年ほどイスラエルから来た女性が暮らしていたが、きっと彼女がこの猫に食べ物をあげていたのだろう。

期せずして、ニカラグアの湖のほとりでも猫との暮らしが始まった。

2022.2.13 Sun 7:35 Nicaragua Laguna de Apoyo

ここから先は

0字

【こちらは2022年6月よりawai Lagunaの活動へ移行します】 リフレクションジャーナルを綴ることにご関心がある方はawai Lagunaにご参加ください。 https://laguna.awai.space/about

【こちらは2022年6月よりawai Lagunaの活動へ移行します】 リフレクションジャーナルを綴ることにご関心がある方はawai La…

【こちらは2022年6月よりawai Lagunaの活動へ移行します】 リフレクションジャーナルを綴ることにご関心がある方はawai Lagunaにご参加ください。 https://laguna.awai.space/about

【こちらは2022年6月よりawai Lagunaの活動へ移行します】 リフレクションジャーナルを綴ることにご関心がある方はawai La…

このページをご覧くださってありがとうございます。あなたの心の底にあるものと何かつながることがあれば嬉しいです。言葉と言葉にならないものたちに静かに向き合い続けるために、贈りものは心と体を整えることに役立てさせていただきます。