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【Queen和訳】7/11マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン~光は闇の中でこそ輝く~【message from angel♥】

はじめに

Queenの2作目のアルバム「QueenⅡ」より、フレディ・マーキュリー作詞の「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」の和訳・分析をしています。

前回は詩の1番までの解説。

今回は2番の前半です。(重要なので2回に分けます。)


ここは、この曲の肝ともいえます。

時間配分で言うと、ちょうど3分ピッタリのところから始まります。

ピアノ、ベース、ドラム、ギター、コーラスやベルなどすべてが演奏されていたのがピタッと止まり、静寂の中、アカペラが入るところです。

ここだけ、今までの邪悪で騒々しい黒の世界から、光がさして、白い世界、時空にワープしたような感じがします。

詩の内容は、内面世界です。

この詩に込めたものは何か、この詩の役割は何か、ご一緒に探っていきましょう。


"The March Of The Black Queen"
Written by Freddie Mercury

詩の2番

A voice from behind me reminds me
Spread out your wings you are an angel
Remember to deliver with the speed of light
A little bit of love and joy
Everything you do bears a will and a why and a wherefore
A little bit of love and joy
In each and every soul lies a man
and very soon he'll deceive and discover
But even till the end of his life, he'll bring a little love

(直訳+手直し)

後ろからの声が私に思い出させます
あなたは天使です、あなたの翼を広げてください
光の速さで届けることを忘れないでください
ほんの少しの愛と喜びを
あなたがすることはすべて意志と理由を持っています
ほんの少しの愛と喜び
ありとあらゆる魂が一人の男に嘘をつき
そしてすぐに彼はだますようになり、悟るでしょう
しかし、彼の人生の終わりになってさえ、彼は少しの愛をもたらすでしょう

今回はこの太字について発音から解説します。


ここの部分は、主にフレディ自身のことを言っていると思われます。

天使が出てきたり、アカペラだったり、かなりspiritualな部分です。

ここは、次回の大作「ボヘミアン・ラプソディ」の冒頭、アカペラコーラスを彷彿(ほうふつ)とさせます。

規則的な今までと違って、割とテンポを無視して、自由な間隔で歌われます。

では、詳しい分析です。


分析

A voice from behind me reminds me
Spread out your wings you are an angel
Remember to deliver with the speed of light
A little bit of love and joy

後ろからの声が私に思い出させます
あなたは天使です、あなたの翼を広げてください
光の速さで届けることを忘れないでください
ほんの少しの愛と喜びを


behind me reminds meは韻を踏みます。


Spread out your wings you are an angel

は、コーラスも入ります。

曲の「ボラプ」や「サムバディ・トゥ・ラブ(愛にすべてを)」などでおなじみの、天の声のようなコーラスです。

「自分の後ろからの声」と言っているので、自分の中にある天使的な部分でしょうか。

彼が幼少から影響を受けたパールシーにおけるゾロアスター教においては、唯一神のほかに、良い神と悪い神が7人ずついるようです。

Spread your wings

は、のちのジョン・ディーコンさんの曲(1977)のタイトル(永遠の翼)ですね。その中の、

Spread your wings and fly away

というフレーズはフレディのソロ・アルバム(1985)のタイトル曲「ミスター・バッド・ガイ」でも使われ、映画「ボラプ」でも言及されました。気に入ってたようです(Spread your wings and fly away with me)。


翼をひろげなさい、あなたは天使です。


これは後発だが、「ヱヴァンゲリヲン」のアニメのOPテーマ曲「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子:歌、及川眠子:作詩)を思い起こさせます。

だけどいつか気付くでしょう その背中には
遥か未来 めざすための羽根があること

evangelとは、キリスト教における福音(良い知らせ、ゴスペル)のことで、使徒(しと:the Apostles)というイエスの12人の弟子がこの教えを伝道します。単語の中にも「angel」がありますね。(ヱヴァンゲリヲンでは使徒は地球を侵略します。)


「あなたが天使だ」というので、声の主は、天上でもっと上級の存在なのでしょうか。キリスト教においては、天使はseraph(セラフ)とcherub(シュラブ、複数だとシュラビム、ケルビム)の2階級に別れ、どちらも子供の姿で描かれます。


Remember to deliver with the speed of light

光の速度(光速)とは、物理学用語で、宇宙で一番速いもの(真空中で)といわれています(相対性理論?)。

かのガリレオも、光速を計ろうとしてうまくいかなかったようです。

クイーンの詩には光速(speed of light)がよく出てきます。

次作アルバム「シアーハートアタック」のロジャーさんの「テニメント・ファンスター」では皮肉のように出てくる。

「ドント・ストップ・ミー・ナウ」は「オレは光速で世界を飛び回っている」のあとに、「君の中の超音速人間を引きだしたい」という。音速(sonic)自体は光速よりは遅いです。例えば、雷は「ピカ、ゴロ」となるので光の方が速いです。他にも、重力法則を無視したとか、華氏(ファーレンハイト、F°)など物理用語が並びます。宇宙の運動法則をとび超え、世界をひっくり返し、快楽を否定せずに楽しんで、恍惚とした世界に旅立ちます。

メイ氏は物理学の修士を当時から持っていたようですし、電子工学出身でアンプも作るディーコンさんもかなりできたようです。

科学に裏付けされたアートというのがクイーンのコンセプトにあると思います。


「光」自体は、ゾロアスター教における一番大事な要素で、その象徴である火を尊ぶので拝火教と呼ばれます。

光のスピードは、めちゃくちゃ速い、という意味と、光という神聖な単語を入れていると思われます。

羽といい、スピードといい、これはギリシャおよびローマ神話の、ヘルメス、メルクリウス(英語名マーキュリー)を思わせます。

サンダルに羽が生えた神です。

ボラプのPVで着ているのが、真っ白な羽をモチーフにしたボレロ付きジャンプスーツです。

また、占星術のみならず、ヘルメス思想なる秘教もあり、19世紀のロマン主義に影響を与えたといわれます。


戻って、そのほかの要素について分析します。

remember(覚えておきなさい)は、remind me(思い起こさせる)の内容の続きですね。

Remember to deliver with the speed of light
A little bit of love and joy

A little bit of love and joyは繰り返されるし、かなり長く、エコーをかけてフェードアウトとしながら響きます。特に「愛」。教会で賛美歌の音に包まれているかのよう。心洗われるサウンドです。


deliverは届けること。同アルバムの「フェリー・フェラーの神業」では妖精「木こり」がみんなの前で披露する(deliver)のはマスター・ストローク(渾身の一撃)でした。

ストローク(stroke)は、打撃や球など打つことのほかに、血栓による卒中(そっちゅう)も意味し、脳に血栓がいけば脳卒中、心臓に行けば心筋梗塞になる。心筋梗塞は、シアー・ハート・アタック(心臓発作、または心臓を一突き)ともいえます。生物学専攻のロジャーさんらしい言葉かも?

アナログ時計の短針がうって、0分ピッタリを表すことにも使うので、フェリーフェラーの神業のイントロが時計のような始まりかもしれません。

また、脈をうつときも使う。

同アルバムの最初の曲、メイ氏の「procession(プロセッション)」は、プロセスの名詞形。行進や行列を意味し、marchにも通づる。だいたいは葬列(葬式の行列)を表すよう。ショパンの「葬送(そうそう)行進曲:funeral march」はゲームオーバーのBGMなどでも一度は聞いたことがあるはず。「プロセッション」は、心臓の鼓動のようなドラムの音から始まる。ギターはオーケストラのよう。


脱線が続いてしまった。戻ると、


天の(または内なる)声が僕に思い起こさせる

「羽を広げなさい、そなたは天使なのです、

ほんの少しの愛と喜びを、光のようにすばやく届けることを

いつも心にとめておきなさい」


このセリフで思い起こされるのは、引き寄せの法則。

10年前くらいにブームを起こした。

ボルテックスというのがキーワードで、

主にキリスト教圏で流行ったと思われる。いまだに日本でも本が多い。

かなりざっくりいうと、今信じている神でなく、宇宙人を信仰するというもの(つまり今世界が信仰しているものを脱するという意味と思われる)。

バシャールやエイブラハムといった存在に、チャネリングできる人物がその言葉を伝える。多くの著名人も支持していますね。

私も一時期Youtubeでエイブラハムを聞いたりしていたが、なかなかいいことを言っています。

「あなたは、(産まれる前に)使命を果たそうと、喜び勇んでこの地球に生まれてきました。」

「あなたはあなたのままでいいのです」

などとスピリチュアルな教えが流れます。


後発ですが、これもこの詩に近い感じです。

フレディは自分のことを言っているのだと思いますが。


つまり、彼の信じている、自分の生まれた意味を発表しているのです。

そしてその使命(ミッション)を果たすことを宣言したのです。


「人類に、ほんの少しずつ、喜びと愛を届ける。」

光の速度とは、素早いこと、ラジオや、のち普及するテレビなどのことかもしれません。

電気も、光と同じく波としての性質を持って伝わり、光速の1/3という速さを誇ります。

音を増幅させる文明の利器、アンプやエレキギターやエレキベースなども含むかもしれません。レコードやライブなども伝道の一助となりますね。

速いこともフレディの才能の一つ。音楽を作るスピードや頭の回転、行動など、せっかちとさえ言われます。時には短気にも、癇癪(かんしゃく)にもなる。クイーンがアルバムを作るスピードも尋常ではありません。最初は年1枚、後年はメンバーも他の仕事も掛け持ち、2~3年おきに。全員作詞しますから、普通のバンドより速いのですね。

まるで生き急ぐかのように素早く行動するのは、アルバム「ジャズ(1978)」でも表れていて、メイ氏の「デッド・オン・タイム」は、速さを求められて生きる現代人の皮肉とともに、クイーン及びフレディの生き方のようにも聞こえます。


まとめ

A voice from behind me reminds me
Spread out your wings you are an angel
Remember to deliver with the speed of light
A little bit of love and joy

後ろからの声が私に思い出させます
あなたは天使です、あなたの翼を広げてください
光の速さで届けることを忘れないでください
ほんの少しの愛と喜びを


詩の2番は、ロックの曲としてはかなり霊的であり、天使(angel)やミッションのようなものが表れます。

ブルースや霊歌、ゴスペルなどに近いかもしれません。

天使はどの宗教の天使なのか、人類全体に当てはまるのかなどは分かりません。

ただし、このお告げの内容は、フレディの個人的な話のような感じがします。

「ほんの少しの愛と喜び」の届け方が、「光の速さ」でという限定付きだからです。

何のことかわかりませんが、とにかく速く、そして具体的には、名声やレコード、テレビなどの文明の利器を使って、速く広く届けるのではないかと思いました。

与える愛や喜びの量が「ほんの少し」なのも、不特定多数の多くの人に届けるからだと思います。ちょっと謙虚な表現です。


速い行動ができるというのは、人物が限られます。

偉大な作曲家や画家などで知られる人物も、夭折(ようせつ:若くして死ぬこと)の人物も多いです。身が破滅する前に功績を残さなければなりません。

恐らく、速い人とは、天から特別な才能を与えられた人だと思います。

音楽的才能(聴力)、声、美的センス、商才、などなど。

つまり、この曲は、彼に課せられたミッションを宣言している、という仮説を立てました。


才能というものは隠していてはだめで、傷つくことがあっても世のために出して貢献していかなくてはいけません。

また今世(こんせ)の宿題のようなもので、しょうがない、親(天)もうるさいし、そろそろやるか、と覚悟を決めるようなものかもしれません。


では続きは次回です。

ありがとうございました。



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