斜線堂有紀にはまったお話

才能のある人が努力して、だけどそれだけではどうにもならないような苦しい思いをするお話が好きだ。

それは「サクラダリセット」や「ウォーター&ビスケットのテーマ」であったり、「CROSS † CHANNEL」であったりする。

余談ではあるが、壁にぶつかった主人公が誰かに支えられて、もう一度立ち上がるシーンとか大好き侍である。

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第23回電撃小説大賞のMW文庫賞を受賞した斜線堂有紀はまさに天才で、「私が大好きな小説家を殺すまで」、「夏の終わりに君が死ねば完璧だったから」だったり、作品ごとに様々なテーマや切り口で、歪んだ人間をきれいに描いているところがとても魅力的だと思っている。

講談社タイガより1月に刊行された「詐欺師は天使の顔をして」は、ミステリー作品だ。
主人公の要はタイトルにあるように詐欺師で、相方である冴昼をカリスマ霊能力者に仕立て上げ、荒稼ぎをしていた。しかし、ある日、冴昼が失踪してしまい、失意の要は無気力に日々を過ごしていた。

物語は、そんな、要のもとに一本の電話がかかってきたところから始まる。それは失踪したはずの冴昼からで、見知らぬ街で殺人の容疑をかけられたので助けてほしいというものだった。二人は再び詐欺師としてコンビを組み、華麗に事件を解決したが、再び、冴昼は失踪してしまう。なんと、冴昼は様々な世界を渡り歩く体質なってしまっていたのだという。

その後も二人は様々な世界を転々としながら難事件を解決していくのが本作の大まかなストーリー。もちろん斜線堂作品なので、二人が旅する世界や巻き込まれる事件はウィットに飛んだものばかりだ。超能力が実在する世界で超能力が使えないことを理由に犯人として疑われたり、死者が蘇る世界とそこでの現実から乖離した倫理観を真に描いている。

講談社タイガから刊行ということもあり、ミステリ要素はしっかりとしていて、それに加えて二人の関係性の描写が充実している、まさにタイガでしか出せない傑作なので、MW文庫の斜線堂作品しか読んでない人も気軽に読んでほしい。むしろ、こんなnoteを読んでる暇があったら読もう。

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