Takashi Hattori

開発者、XNOVA CEO

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最近の記事

ビッグデータ解析の拡張:AIによるカント主義的視点の導入

ビッグデータの解析は今日、私たちの生活の多くの面で重要な役割を果たしています。マーケティングから政策決定、健康管理まで、このビッグデータは我々の日々の意思決定に影響を及ぼしています。しかし、これらのデータ解析の多くは、功利主義的な視点から行われています。すなわち、最大多数の最大の効果を生み出すことを目的としています。 ビッグデータと功利主義:保険業界における離脱率改善へのアプローチ例えば、保険業界では、被保険者の離脱率改善にビッグデータ分析が有効に用いられます。これは母集

    • AIと無意識:失敗から生まれる情報量

      無意識の表出フロイトによれば、人間の行動は深層心理に根ざした欲望によって動かされるものであり、その多くは我々の意識に到達することはありません。つまり、私たちが口にする言葉、とった行動、さらには「間違い」や「忘却」も、無意識の表出であるとされます。 このフロイトの理論は、AIと特にLarge Language Models (LLMs) の学習において、新たな視点をもたらしてくれます。それは、人間が生み出す「間違い」や「忘却」は、ただのエラーではなく、人間の無意識の表出であ

      • 信念の変容と陰謀論:ローティのアイロニストとオーウェルの二重思考

        信念を形成し、維持する方法は、個々の認知スタイルや対応策に深く影響を受けます。 この観点から、リチャード・ローティの「アイロニスト」とジョージ・オーウェルの「二重思考」は、信念の変容や対応についてのフレームワークとして特筆すべきものです。これらは、矛盾した情報を処理しようとする我々の努力の中で生み出された、2つの異なるアプローチです。 アイロニストは、自身の信念や世界観を「絶対的なものではない」と捉え、新たな情報や経験に対して信念を柔軟に変容させることができます。 一方

        • [3/3]AIとコミュニティ―東浩紀 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』を読んで

          第1回:一般意志2.0とAI 第2回:一般意志2.0とITシステムの未来 この記事は、あくまで東浩紀氏の「一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル」を読んだ方向けのものであり、私個人の感想と解釈を備忘録的に述べています。 人間の仕事、AI、そして社会的不平等社会的奴隷制や人間の不平等は、人間が一人または少数で達成可能な仕事や技術から距離を置くことによって引き起こされるとの説が存在します。大規模なプロジェクトや事業を成し遂げるための人間の協力は魅力的ではありますが、これは

        ビッグデータ解析の拡張:AIによるカント主義的視点の導入

          [2/3]一般意志2.0とITシステムの未来―東浩紀 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』を読んで

          第1回:一般意志2.0とAI 第3回:AIとコミュニティ この記事は、あくまで東浩紀氏の「一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル」を読んだ方向けのものであり、私個人の感想と解釈を備忘録的に述べています。 複雑性縮小とAIの役割情報の海に溺れてしまう現代人。インターネットは有益な情報源である一方、その膨大な情報量と広告等による過剰な情報は、私たちに混乱をもたらし、事態をより複雑にしています。そのような状況の中で、AIは複雑性を縮小し、問題解決のプロセスを整理・提示する役

          [2/3]一般意志2.0とITシステムの未来―東浩紀 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』を読んで

          [1/3]一般意志2.0とAI―東浩紀 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』を読んで

          第2回:一般意志2.0とITシステムの未来 第3回:AIとコミュニティ この記事は、あくまで東浩紀氏の「一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル」を読んだ方向けのものであり、私個人の感想と解釈を備忘録的に述べています。 再定義される集合的知性とその可能性最近、東浩紀の「一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル」を手に取り、その中に描かれる「無意識」による集合的知性の発想が、私の認識を一新し、これまでの政治理論や民主主義についての理解を大きく揺るがせました。この重要な視

          [1/3]一般意志2.0とAI―東浩紀 『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』を読んで