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コロナ下で見えてきた米国大学オンライン授業のリアル~小さなリベラルアーツ大学から~

はじめに

こんにちは、今年の9月からアメリカアイオワ州にある小さなリベラルアーツカレッジ、グリネル大学に進学しているavocadoです。今回はこれまで3週間ほど受けて来たオンライン授業の実態と、そのメリットデメリットについて自分なりに考察してみようと思います。大学受験のプロセスなどについては過去に別記事にて書いていますので、そちらをご確認下さい。

オンライン授業の形式

自分の大学ではオンライン授業はWebex MeetingBlackboardというアプリと通して行われます。他の大学ではZoomを使うところもあるようですが、おそらくセキュリティの観点からWebexをメインに使っているようです(あとWebexは大人数が参加するメーティングに向いているようです)。Blackboardは大学独自の授業管理サイトのなかに組み込まれていて、サイト上で開いて使います。Zoomみたいにブレイクアウトグループで複数グループに分けることができたりPoll(投票)機能が備わっていたりして、授業中に問題を解く理系の授業に使われやすい気がします。

今年はコロナの影響で、特別に学期が通常の2学期制をさらに半分に分けた4学期制になっているため、1学期7.5週間で、履修科目も通常の半分の2クラス(+アルファ e.g. 音楽・ライティングなど)になっています。短いスパンで凝縮されて授業が進むので、変動的なコロナ下の授業にアジャストされているようです。毎日同じ2クラスの授業を受けるので、実際科目数が少なくてかなりスケジュール管理が楽なのはメリットですが、一方で通常より少し早い進度で授業が進むので、予復習が大変、とデメリットにとるかテスト範囲が少ないので最初の方に習ったことを忘れなくていい、とメリットにとるかは難しいところです。

今学期は物理と経済のイントロダクションの授業をとっています。物理は日本時間朝9時から12時まで、経済は日本時間深夜3時から4時半までです。そうなんです!大学はアメリカ中部時間で動いているので、アジアに住んでいる人は昼夜が逆転するんです。ただ自分の場合は経済はともかく物理は日本の朝(アメリカの午後7時〜)の楽な時間にとったり、経済もリアルタイムで出ないといけないのは週一だったりと(追って話します)、結構楽に授業を組めたので、今のところ昼夜逆転せずに過ごせています。人によっては夜だけ授業で昼夜逆転を余儀なくされたり個人差がありますが、自分は授業時間を受けやすい時間にどうにか管理できました。(ちなみに夜3時の授業は、一度寝てから受けてます。終わったら即また寝ます笑)

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(1週間のスケジュール、オレンジ塗りが物理で緑塗りが経済の授業、金曜の列の下の方午前3時にオンライン授業がある)

3週間受けてわかったオンライン授業のメリット

日本ではオンライン授業の対策が遅れておりデメリットばかりが揶揄されていますが、個人的にはメリットもいくつかあるように思いました。総論としては、思ったりよりもそんなに悪くないという印象です。メリットをまず、いくつか紹介します。

一つ目に、授業時間・場所を”選べる”ことがメリットに感じます。オンライン授業といっても、テキストの内容確認レベルの基本事項は(いわゆるレクチャー)録画された講義ビデオを見て勉強します。オンラインで実際に授業をするのは、物理だったら確認問題を教授が出して生徒が4択で答えるとか、授業内に課題を出されて4人くらいのグループに分かれて相談しながら問題を解くとか、アウトプット中心の授業になっていますし、経済も同様基本事項は録画された講義ビデオを見て勉強し、週一回のオンライン授業ではレビューをざっとした後、その週に習ったコンセプトの応用編や実際社会にどのように活用されているのかを教授が示してくれたり、課題で難しかった・質問の多かった部分を全体で説明してくれたりと、基本的にオンラインで行うのはテキストや講義ビデオでは触れられなかったワンステップ上のレクチャーになっています。当然録画された講義はいつでもどこでも見られるので、自分だったら午後の空いてる時間や夜のまとまった時間に見ています。たまには気分転換に外出してスタバや近くのカフェでも授業が見られるので、時間・場所問わずフレキシブルに学べる点は大きなメリットだと感じます。

先ほどの話の付け加えになりますが、基礎事項は自己学習で、オンライン授業はそこからワンステップ上なので、限られた授業時間をすごく効率的に利用できている感じがします。というのも、高校では一コマ決まった時間で先生が内容をざっと解説する、そして次の時間で演習だったりディスカッションだったり応用になるなど、最初の解説の授業が効率悪いな、と感じることもしばしばでした。特に自分は物理は得意で、逆に経済は全くの初めてなので、物理の内容は簡単に思えるし、経済は時間をかけてしっかり勉強したいと思います。人によっては物理が初めての人もいますし、経済を高校でやってた人もいますから、基本事項を全体でやらずに個人の好きな時間のかけ方で勉強できるというのは効率がいいように思います(講義ビデオは一時停止したり倍速にしたりできますし)。授業がアウトプットもインプットの機会も同じくらいに取られていることに感謝です。

3つ目として、授業外のサポート・ヘルプが豊富だと感じました。どの授業もレポートだったりクイズ(練習問題)だったり課題がたくさん出されます。そのどれもが授業やテキストで習った物とは2、3ステップレベルが上で、なかなかスラスラ書ける/解けるものではありません。またただでさえオンラインで授業しているので、普通の授業より分かりにくかったり質問しにくかったりするのは当然です。教授ももちろんそれを認識しています。そこで生徒にはいくつもの質問できる、再復習できる機会が用意されています。物理では、授業とは別に過去に同じクラスをとったことのある上級生がメンターとしてセッションを開いてくれます。自分はまだ必要を感じていないので一回しか参加してませんが、最低週一回以上は授業を開いてくれて、課題の解説や追加の問題を出してくれます。経済でもメンターが存在します。メンターセッションを週一で開催してくれて、オリジナルの問題を作って解説してくれます。自分はこのメンターセッションに毎週出ていますが、講義ビデオで理解が微妙だった部分を、問題で出た時にどういう風に解けばいいのか教えてくれるのでとても役立っています。同時に、経済にはOffice Hourという指定された時間内なら予約なしに教授に質問できる時間帯があります。オンラインでも指定された時間にWebexのリンクを踏んで入れば間違いなく教授と1対1で質問ができます。これはめちゃくちゃ良いです。このように、例えオンラインであったとしても生徒にはいくつものサポートを得られる機会があり、分からないところは必ず教えてくれます。オンラインだとしても、そのサポートは全く変わらないところはメリットだと感じます。

3週間受けてわかったオンライン授業のデメリット

もちろん、オンラインだからこそのデメリットもたくさんあります。

1つ目に、友達ができない(相談相手ができにくい)ことが挙げられます。普通は授業で同じディスカッショングループになったり席が近くなったりすれば、授業外でもコミュニケーションを取る機会はあるはずです。ですがオンラインはそんなことはできません。授業が終われば、「会議を終了する」を押して退席です。毎回誰とも雑談できずに授業を抜けています。正直オンライン授業では友達はできにくいです。幸い、自分の場合は同じ日本人で大学に通う1年生や上級生と結びつきがあるので、同じ授業は共有してませんが、授業がどうだったとか課題がどうだとかコミュニケーションを取ることはできます。ですが、いまだに同じ授業内で知り合った人とSNSすら交換できていないのは少し残念です。今まで以上に自分のコンフォートゾーン(快適な空間)を抜け出すのが大変そうだと感じます

2つ目に、授業中の技術的トラブル、コネクションの問題がよく起きて困ることが大きなデメリットだと感じます。これは特にコレクションの弱いBlackboardを利用した物理の授業で感じます。具体例としては、教授の電波が悪くて途中ぷつぷつ切れて聞き取れない、教授が画面共有をよく忘れるので説明している画面が見えない、日本が雨・曇の日は若干通信が悪く感じる、同じタイミングで話始めると譲り合うのに一苦労する(同様に話始めづらい)など、挙げると際限がありません。正直これが一番困っています。日本の大学のオンライン授業でもおそらく同様のトラブルが起きていると思いますが、自分の場合は母国語でない言葉で授業に参加している、地理的に遠い距離から参加しているため、聞き取れないことが多くあり困っています。もちろん、授業が始まる前からこの問題は想定していましたが、実際ちょくちょく困るので大変です。

3つ目に、キャンパスで働けない、キャンパスの施設が使えない、キャンパスでのイベントに参加できない、ことがデメリットとして感じます。施設の恩恵を受けられていないです。アメリカに渡航して大学に入るには学生ビザというものが日本人だけでなく全留学生必要ですが、大使館のビザ発行が遅れているため今現在私はビザを持っていません。以前トランプ大統領のビザ発行に関する規制で大学が反対し撤回するという問題もありましたが、やはりビザがなくて困っています。ビザがないと、アメリカにはいけませんしアメリカでバイトをすることもできません。渡航できてないのだからバイトなんてできるわけないと思うかもしれませんが、現在では大学からのオンラインでできるバイトや、来年夏のオンラインで働ける学生インターンに関する募集が始まっています。ビザのない留学生は、これらのスポットに応募することはできません。既にこの点でディスアドバンテージを強く感じています。また、当然の事ながら、図書館や実験室なども利用することはできませんし、キャンパス内でのイベントに参加することもできません。物理の授業では週1~2回実験の授業があるのですが、当然実験もオンラインで行います。その仕組みは、教授が実験を行なっている様子が録画された物をみんなで見て、画面上で数値を測ったり、または初めから測定されたデータを利用してグラフや表にまとめ考察する、といった感じです。これにはメリットとして、教授が行なった精度の高い実験なので極めて理論に即した数値が取れるということもありますが、やはり実験自体はできないのでデメリットを強く感じます。このように、物理的拘束が様々なリソースを制限しているため、本来大学が生徒に与えられるリソースの価値自体が下がってしまっている気がします。これは深刻なデメリットに感じとても残念です。早くキャンパスに入って授業を受けたり勉強したりしたいのですが(ちなみに自分の大学では春学期から一年生のみ入れます、今は全員オンラインです)。。。

最後に、学費がオンラインなのに高い、というデメリットを感じます。アメリカの大学の学費は以前から日本よりも遥かに高く、教育機会の格差を広げてしまっている問題点があります。私立大学は年間全て合わせて700万円くらいかかりますオンラインでもそれは変わりません。もちろん、大学自体や外部の機関が奨学金を学生に提供し、より通いやすくしてはいますが、オンラインという環境上、どうしても以前と同じ価値は見出せません。先ほども、経済の授業は日本時間の深夜だけど週一しかないので助かっている、と述べましたが、言い換えれば高い学費を払っているのにリアルタイムで参加する授業は週一回しか無いんです。ちょっと割高に感じませんか?一部の大学では学費を下げたところもあるようですが、自分の大学は変わっていません。代わりに自分の大学はコロナ奨学金として全生徒に多少の補償金を提供しました。これは学生にとってありがたいですが、それでもなお、コスト対リソースには疑問を呈します。

最後に

これまで自分が3週間大学に入学してオンライン授業を受けて感じたことを書いてきました。最後に言いたいのは、どの大学もできる限りの努力を尽くしてくれているが、その度合いは大学によって異なっている、ということです。自分はコロナ下で大学選びを行なったので、比較的コロナへの対応が良かった大学を選びました。ですので自分の体験はどちらかというと対応に恵まれている方だと感じます。それでもやはり、オンライン授業には大きなデメリットを感じました。この記事を通して、小さなアメリカのリベラルアーツ大学に通う大学生から見た、アメリカ大学オンライン授業のリアルを汲み取っていただけると幸いです。

大学受験の経験についても以前記事を書いてますのでお読みいただけると嬉しいです。ここまでお読みくださりありがとうございました。


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