迷子いずれ家に帰りそして旅に出る

どんどん頭が悪くなっていく気がするよー、それはなんて恐ろしいことだろうね?今まであったはずの私の中の物差しのようなものが、1つずつしっかり壊れていく、そんな1年だったよ、世界の焦点が合わなくて、全てがぼやけて見える、全てが騒音に感じる、何が大事なのかわからなくなる、大事なひとは?いるはずだ、いることはわかるんだけど、このアイコンの中のどれなの?だれに話せばいいの?だれを頼ればいいのかわからないからとりあえず叫ぼう!どこに居たらいいの?どこに行けばいいの?わからないから道端にしゃがみこみます!なにを見たらいい?なにを見ないようにすればいい?わからないので、目を閉じて、なるべく閉じています!気づくと線路脇の道を歩いていて、月に一度の通院の帰り道、主治医の診察は、短い、こちらが一生懸命話しても、聞いているのか聞いていないのかわからないような態度だよ、きっと私が支離滅裂な話をしているんだね、まあいいか!治療が上手くいけばそれでいい、納得したふりでもしないと歩き出せないわ、歩道橋の階段を登る、線路の向こうのバス停に向かう、線路の真上、歩道橋の真ん中、空の色はイエローとブルー、太陽の沈んだ直後、このレモン色とソーダ色が好きだ、早く家に帰らなきゃって思う、夜はすぐそこだってわかる、電車電車…電車電車…電車電車…電車が通り過ぎる、電車のエネルギーはとてもパワフルだ、轟音と共に一瞬で通り過ぎていく、いやなかんじ、心臓にガムテープを巻き付けられて、思いっきりベベベッと剥がされたようなかんじなんだ、電車ってすごいのよ、人間の能力を遥かに超える速さ、鉄の重さ、とんでもない騒がしさ、そのうえ人を運んでいるのよ、何百人も、そんなエネルギーの塊みたいなものが一瞬で過ぎ去っていくんだもの、びっくりするわよ、こちとら歩いているのに!ひとりだっていうのに!157センチで!ちっぽけな自分とでっかい電車のエネルギーのギャップに耐えられない、心臓がびりびりしゃう…うるうる涙、高速道路を走る車や飛行機を見ても同じような気持ちになるね、それでも電車が通り過ぎるだけで、失恋したくらいの胸の痛さなのよ、こんなんじゃ現代社会、生きていけないじゃない、ぽろぽろ、呆れて笑うよ、バスに乗る気は失せたし、泣き笑い、歩いて帰宅、ここまでは覚えている、翌日、もしくは何ヶ月も経ったのか、わからないれど、何も感じない時間がやってきた、いいえ実際には感じていましたとも、それも過敏に、ただ細かいことは思い出せないな、思い出さなくてもいいのかな、目の奥を突き刺すような眩しさ、脳震盪を起こすような騒音、文字情報が私の周りの空間を覆い尽くす、本は沢山捨てたみたい、バリエーション豊富な耳栓が机に散らばっている、サングラスをふたつ買ったんだ、私の物差しはぶっ壊れている、物忘れが酷くて、ぶっ壊されたのか、ぶっ壊したのかは思い出せない、だからぶっ壊れていると思う、何を言っているんでしょうか…忘れる生き物で、よかったなあ、ぶっ壊れている物差しで世界を見て、『あらおかしな世界だわ』と思うのも楽しかった、うそだ、楽しくないよ!自分で自分が不安になるよ!明日自分が死んでしまう気がするんだ!毎秒、毎秒、こころがすり減っていく気がするんだ!こころにヤスリをかけないで!物差しは壊れたのにヤスリはあるんですか?お願いだからもうやめて、毛布を、毛布を、毛布を…誰か来てください!人が倒れています!あなたは119番通報を!あなたはAEDを!それから私に毛布を!私、このまま生きていけるほど強くない、私を信じられないままに世界は愛せません、


2021年8月23日

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