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20歳の時にたてた誓い

20歳の時にたてた誓い

10年前の初秋、20歳になった。

記念すべき20歳の誕生祭当日。
自身のことを盛大に祝うべく私はドイツのバイエルン州の山奥へと向かった。

おとぎ話に出てくるような木造の可愛らしいおうち達。おうちの窓からは色とりどりのお花が均等にひょっこりと顔を出す。

私は童話の中に迷い込んだのかなと錯覚しながら、石畳の山道を登る。
人ひとりが通れるような吊り橋が目の前に出現し、忍足でその吊り橋を一歩づつ進んでいく。
橋の真ん中辺りまで辿り着くと、観光客で賑わっている。
観光客に紛れながら、観光客の私自身もそこで立ち止まる。

するとそこに、緑がしたたる木々の中にそびえ立つ真っ白なお城が姿を現した。

言葉を失うほどの美しさだった。

記念すべき20歳の誕生祭当日。
一際異彩を放つ純白なお城を前に、
私は私自身に誓いを立てた。

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19歳の夏、ヨーロッパ各地で開催されていたサマーワークキャンプなるものに応募した。
応募はしたものの、現地までの航空券やその他諸々の手配については個人で行う。

手探りで旅の手配や準備を整え、初めてひとりで日本から飛び出した。北京乗り継ぎの一番安い航空券と紺色のパスポートを握りしめ、自身が隠れるほど巨大な70リットルのリュックを背負って、人生で初めてひとり、海の外へ飛び出した。


初めてひとりで降り立ったミュンヘン国際空港
自分とは異なる顔立ちの人々
聞き馴染みのない硬い言語
辺りに漂うプレッツェルの香り

20時間以上のフライトで身体は疲れているはずなのに、重たいリュックを背負いながらスキップしそうな気分だった。

鉄道へ乗り込みミュンヘンからニュルンベルクへ向かう。
ニュルンベルク駅で待っていたのは、映画に出てくるような金髪の青い瞳をもつ美しい女性だった。

車で2時間ほどで、目的地に到着した。
ただ田園が広がる小さな小さな村だった。

目的地で待っていたのは、同年代、もしくは私より年下くらいの男女11人が集まっていた。

ドイツ人
フランス人
スペイン人
イタリア人
ウクライナ人
アゼルヴァイジャン人
韓国人
そして、日本人である私

3週間の長いワークキャンプが始まった。

日中の主な仕事は地元の歴史博物館の修繕作業
日替わりで料理当番や共同生活している宿の掃除
(以下略)

日々彼らと生活を共にしていく中で、私はもどかしさを感じていた。

彼らは当たり前のように第二言語であるはずの英語を流暢に喋り、自身の意見や意思を明確に伝えている。年齢もそこまで変わらないのに、喧嘩をするように意見をぶつけ合う。

そんな彼らを横目で見ながら、私はいつも隣で内容も理解できぬまま、ニコニコしながら相槌を打つことしかできなかった。

日本人は私ひとりだったため、勿論彼らは私に対して容赦無くただ純粋に日本について質問を投げかける。

日本の歌はどんな歌があるの?歌ってみて?
日本の食べ物は?SUSHI?他には?
日本語という言語はどういう仕組み?文字は?僕の名前、日本の文字で書ける?
日本の政治は?
宗教は?日本人は何を信じているの?(宗教的な意味で)

わたし自身についても質問してくる。

大学の専攻は?
そこで何を学んでいるの?
それを持って何がしたいの?将来の夢は?
人生において何を成し遂げたい?

容赦無くくらう質問に、たとえ英語を流暢に喋れたとしても回答できなかっただろうとおもう自分が情けなかった。


ある日、私より5つ年下の14歳のフランス人の男の子に、フランス訛りの英語で面と向かってこう言い放たれた。

『君は、自分の国のことすら英語で説明できないじゃないか。』

鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはまさに私のことだったと思う。

ど正論。
ど正論すぎて、悔しさのあまり、シャワールームでひとり泣いていた。

悔しい思いもしたけれど、
それ以上に充実していたワークキャンプは終わりを告げた。

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ワークキャンプ終了後、私はまだドイツにいた。
日本へ帰る前に、20歳の誕生日という節目に訪れたい場所があったから。

向かったのは、南ドイツ•バイエルン州にあるノイシュヴァンシュタイン城
シンデレラ城や眠りの森の美女のお城などディズニーに影響を与えたと言われている、あのお城。
目の前にそびえ立つ巨大な荘厳な城は、まるで自身がディズニーのお姫様になるような錯覚に陥った。

谷底から約90mもの高さに架かったマリエン橋から、遠目に巨大な純白のお城を眺めてみた。

その日20歳を迎えた私は、この世で見たことのないような美しい風景を目に焼き付けながら、私自身に誓いをたてた。

『10年後、英語を喋れるようになって、またここへ戻ってこよう』

その誓いから10年の月日が経った今年、30歳を迎えた。

その誓いがあったから、今年2023年、欧州へ旅に出た。

結局、私は、

(ドイツ一回行ったことあるし、また同じとこ行くのもなぁ…)

というそんな理由で、
ドイツのお隣のフランスとブリュッセルへ行ったのだけれど…笑

だけど、

10年前のあの時、あの誓いがなかったら、30歳になる年に欧州行きの航空券すら購入していなかっただろう。

10年前のあの時、英語が全く喋れないからという理由で異国のワークキャンプに応募していなかったら、悔しさももどかしさもワクワクした気持ちも感動も経験していなかっただろう。

10年前のあの時、フランス人の男の子のあの一言がなければ、英語を喋れるようになりたいと猛勉強することはなかっただろう。

10年前のあの時、純白の美しいお城を眺めていなかったら、世界の美しい景色を見るために旅をしていなかっただろう。

10年前のあの時、あの誓いがなかったら、今現在、英語を使ってインドネシアで仕事をすることはなかったかもしれない。

一つひとつの事象が今の自分をつくってきた。

30歳になった2023年。
今年訪れた欧州旅行をきっかけに、

『来年、フランスで暮らそう。』

と、自身に誓いを立てた。

やりたいと思ったことに素直に。
胸が高鳴る方へ真っ直ぐと。


今までそうしてきたように。これからもワクワクする方へ進みたい。


#かなえたい夢
#振り返り #海外移住 #海外生活 #ドイツ #エッセイ

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