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「バリー・シール アメリカをはめた男」

原題:Barry Seal
監督:ダグ・リーマン
制作国:アメリカ
製作年・上映時間:2017年 115min
キャスト:トム・クルーズ、ドーナル・グリーソン

 映画冒頭よくみられる「実話に基づく話=Movie based on a true story」。
 それでは実話に基づくのならば心動かされるのか、否、全てには当てはまらない。その実話にどれほど人を惹き付けるものが内在しているのか。
 映画では俳優魂と呼ばれる努力で極限まで躰を絞る、或いは鍛え上げる等で姿形から自在人物に近付ける俳優は多いがこの映画のトム・クルーズは違う。「皆が期待するだろう彼」のままだ。

 バリー・シールは、天才的なパイロットだったらしく15歳で学生パイロット証明書、16歳でプライベートパイロット証明書を取得。TWAでは20代で最年少の司令官になっている。バリー・シールを調べたがあまりに闇に暗躍した人物で人柄を垣間見る記事を中々探せない。そうなるとトムの演技するバリー・シールしかない。

 バリー・シールは闇、それもホワイトハウスやCIAを巻き込んだところで動いた為に最終的には政府に利用され命を失ったようなものだ。トムの爽やか過ぎる演技には終始違和感があった。

 実際に小型機をトム自身が操縦し見せ場はある。出来ればもう少し政府側の内側も描いて欲しかった。内容としては事実と比較して如何にも薄い。そもそも彼は何故危険極まるCIAの仕事を引き受け、尚且つその上をいく危険な中南米の運び屋を択んだのか。その部分は描き切れていない。実話フレーバーの娯楽映画に終わってしまっている。

 CIAが民間航空会社から引き抜き彼に与えた広大な土地に私設とは信じられない規模の飛行場が作られる。この場所では映画後半親米派兵士を訓練の為招くシーンが描かれている。極めて政府の闇に近いところで彼は関与していた。
 観終わって疑問が拭えないのはどうして証人保護プログラムが動かなかったのかということ。実際にはルイジアナ州のウィリアム・グステー司法長官が訴え証人保護プログラムに入るか否かの調査が行われてはいるようだが、政府弁護士はバリー・シールがそれを拒否したとある。真相は何処にあるのか。
 また、バリー・シールが暗殺された時、一部の報道によるとブッシュ大統領の個人的な電話番号が彼の財布に残っていたらしい。あまりに闇が深いと映画では描きたくとも制約があった可能性はある。
 この映画は日本人が観ることとアメリカ人が観ることでは大きな隔たりがありそう。


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