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「サークル」

原題:The Circle
監督:ジェームズ・ポンソルト
制作国:アメリカ
上映時間:2017年 110min
キャスト:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、カレン・ギアン、ビル・パクストン、エラー・コルトレーン

 相変わらずの興行サイドミスリード。映画を正確に紹介し集客することではなく如何に「一人でも」多く、それが勘違い客でもよいとなると最大公約数を見込める「『いいね』の為に生きている」と嘘のキャッチコピーになるのだろう。私人としても啓蒙活動をしているエマ・ワトソンがどのような映画を択びながらハリポタから離れていくのかが気になって択んだ映画だった為、この的外れなコピーで裏切られる気分は味わずに済むが、これからご覧になる方は注意あれ。(*因みにタイトル写真で解るように「Knowing is good.Knowing everything is better.」が作品の趣旨)

 トム・ハンクスの出番が少ないとの声もあったが作品的にはCEOを描く作品ではない為に相応に出演しているとみていい。要所で顔を出し「サークル」という胡散臭い企業を観る人に喚起させている。
 招集した社員への提案シーンも含め、社屋など特定既企業を彷彿とさせ苦笑。この映画自体、皆がイメージするアメリカIT企業の集合体だ。
 ホワイトウォッシュを避けること、またIT業界が人種を越えていることをアピールしたかったのか出演者は白人だけではないが、アジアに関しては日本人には見えずある意味正確かもしれない。そうした中でメークのなせる技だろうと映ったのがトム・ハンクスが時として黒人寄りに見えたこと。

 評価が低いのは映画の作りがかなり雑だからではないか。上記シーンでは社内で伝説的システムエンジニアが「君は信頼できそうだから」と一般社員が立ち入れないエリアへ連れていくが二人を結びつける導入が殆ど無い。感で秘密共有者として彼女を択んだとした場合は茶番だ、現実から遊離し過ぎている。

 主人公メイの親友役アニーが実は話全体を体現しており、脇を固める役者の一人として記憶に残る。

 幼馴染マーサー役エラー・コルトレーンも彼女をリアルで繋がる人として好演。もっと演技を観たかったが出演場面は少ない。

 主役、脇役、役者に支えられた映画。SNSの世界的な広がりをみるとこの映画の危うさは絵空事ではなく今現在誰もが既に見て見ぬ振りをしている世界の提示で共感を呼び易かっただけに掘り下げが浅く残念。これで終わる?の展開もいただけない。影のようにいたタイの存在も生かされていないまま。
 SNSが持つ対岸の火事を見る人達の無責任な暴走と覗き見程度しか伝えられていない。映画でも触れられていた個人情報集約が持つのコイン裏表世界に絞った方がまだ作品は纏まり、便利の裏の怖さの方がサスペンス要素は強い。
 何度か作品中描かれるイーモン(トム・ハンクス)が「唱和させ、煽っていく場面」は言葉で洗脳していくということの背筋の寒さを描き、それは新聞等で話題になる新興宗教を描いているようでもあったがこうした場面が単発で終わったのも評価の低さに繋がっているのだろう。

  メイの父親役ビル・パクストン氏がこの2月心臓病手術後合併症で亡くなりこの映画遺作となる。
★★☆


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