エトルリ

毎年行っていたイタリアが遠ざかり、ずいぶん心が平たくなってしまい、書くことから離れてし…

エトルリ

毎年行っていたイタリアが遠ざかり、ずいぶん心が平たくなってしまい、書くことから離れてしまいました。それは文章と習字の両方。それでも、描くことを始めて、その楽しみが増えました。ひとつスイッチが入ったので又書いてみようと思います。

最近の記事

2012ローマ

空は、暑さに疲れた水色。大気は自転に遅れているように気だるい。仕方ない、7月の朝だ。 オスティア・アンティカを思い出す。ネット予約をしたガイドとの待ち合わせはローマ・テルミニ駅脇8時だった。二重に門のあるレジデンスに宿をとってしまった私は、持たされた鍵束をガチャガチャ言わせて、慌ただしく時間通りにその場所に着いた。 ローマ焼けと私がかってに表現している、日に焼けたガイドがすでに待っていた。彼女の衣服から出た部分はすべて褐色。ノーメイク、白い膝丈のワンピース、素足に黑のサンダル

    • 半夏生

      7月、日曜の朝、起き上がらないけど起きている。部屋のなかの日陰、目を瞑って鳥の囀りを聴く。南側の網戸から風が流れ込み、からだの周りに漂い過ぎていく。きょうも暑くなる。夜中に降った雨粒が残るゼラニウムたちはきっと灼けるだろう。 きのうはアカデミア美術館の作品の勉強会に参加した。講義を受けながら夏のフィレンツェを思い出した。シニョーリア広場の雑踏を抜け、橋を渡り、ミケランジェロ広場までの坂道での息切れの記憶が戻る。開けた丘から遠く正面に見える山へ向かったバスの揺れさえよみがえる。

      • 心臓

        自分の鼓動がうるさくて目が覚めるときがある。今朝がそうだった。そういう時は、起きる。ガラス越しに晴れを見て、起きる。駅から離れて鉄橋を渡る電車の響きが届く。ラジオのボリュームを上げたときトークではなく、なにかしらメロディが聴こえてきたら最高だ。ジャズだ、良かった。重いサッシを開けて狭いベランダに出るとモッコウバラの枝葉が空を仰ぎサワサワと揺れていた。南を横切る機影の輝きにドバイで買った銀色のポットを思い出した。いつのまにか心臓音がすべてに紛れていた。珈琲を入れよう。

        • 紫陽花

          5月 朝はヒンヤリ。となりに建った校舎が我が家の日の出を遅らせるから、出窓の花に光は届かず。恨めしく思いつつ、ルッカで買ったポットでコーヒーを入れる、そんないつもの朝。 あちこちの道や空が混む映像。“ここ”を離れる人々の大波、軽くなった“東京“から萌えだす緑や遠く突き抜ける青空に心の衣を解放できる、そんな、いつもの5月の、その気分。少し苦めに出たエスプレッソ。ふと、あっマニキュア塗り直そう!…まだ7時前、わたしの朝はものすごく優雅だなぁとほくそ笑む。ん?ようやく校舎の屋上を削