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AIのべりすと怪文書『珍獣ハンター高杉晋作』

 高杉晋作は長州藩が誇る珍獣ハンターである。彼は土佐の坂本龍馬からもらった珍獣ホイホイで、ツチノコを捕獲し、大喜びした。だが、そのツチノコは、ただのツチノコではなかったのだ。
「……こいつぁ、スッポンじゃねぇか!」
 そう、それは幻の動物スッポンだった! しかもスッポンはツチノコと違って食用になる。つまり金になる生き物なのだ。高杉晋作はその日から、ツチノコよりスッポン探しに夢中になった。
「この俺様が、ツチノコごときに負けるかよ」
 しかし、いくら探してもスッポンは見つからない。そんな時、晋作の目の前に一頭の栗毛の馬が現れた。言わずと知れたオルフェーヴルである。彼はスッポンスッポン言いながらウロチョロする晋作を見て、「うるせぇなあ……」と思っていたのだが、やがて面倒臭くなったのか、晋作を乗せて走り出した。そして……
「あったぞ! スッポンだ!」
 なんと、そこは牧場だった。晋作は嬉々としてスッポンを捕まえようとしたが、オルフェーヴルの方が一枚上手だった。
 彼は牧場主と交渉すると、晋作を連れて牧場を一周してみせた。
「すげー! スッポンってこんなに広いところに住んでんのか!?」
 晋作はオルフェーヴルを褒め称えたが、牧場主は苦笑を浮かべている。
「いや、ウチは別にスッポンを飼ってるわけじゃないんだけどね」
 その後、晋作は牧場主に頼み込んで、スッポンを譲ってくれるように交渉したが、なかなか首を縦には振ってもらえない。
「悪いけど、ウチも商売だからさぁ」
 困り果てていた晋作の前に、また別の馬が姿を現した。今度はあの名馬ディープインパクトである。彼は牧場主に向かって言った。
『おっちゃん、オレがこの人を乗せて走るから、スッポンちょうだい』
 こうして、晋作は無事にスッポンを手に入れることができた。彼は早速それを料理屋に持ち込み、自慢気に語った。
「どうだ? 俺様にかかれば、どんな珍獣だって簡単に手に入れることができるんだぜ?」
 それを聞いた桂小五郎は、笑顔でこう答えたという。
「晋作は本当にすごいなあ。僕も頑張らないと」
 ……とまあ、こういう経緯を経て、スッポンを手に入れた高杉晋作であるが、ここで話は終わらなかった。

 ある日のこと、彼が自宅に帰ると、庭先に一匹の巨大な蛇がいた。ニシキヘビだった。
「うわあああっ!!」
 晋作は悲鳴を上げて逃げ出した。だが、彼は知らなかったのだ。実はその大蛇こそが、伝説の怪物キングコブラだったということを……。
「くそぉっ! 俺様が何をしたっていうんだよ! ただちょっと珍しい蛇を見つけただけだろ!」
 そう叫びながらも、彼は必死になって逃げた。だが、キングコブラはどこまでも追ってくる。ついに彼の背中に牙を突き立てようとしたその時――
「待ちなさい! その子を傷つけたら許さないよ!」
 という声と共に現れたのは、なんと劉邦の妻・呂雉だった!
「大丈夫かい? 君たちを助けに来たよ!」
 そう言って、彼女はキングコブラを追い払った。それから劉邦たちは晋作に謝ると、礼金を置いて去っていったという。

 このように、晋作は様々な珍獣を手に入れて、皆に自慢しているようだが、果たして彼は本当に凄い男なのだろうか? まず、晋作はスッポンのことを「ツチノコよりも価値がある」と言ったが、そもそもスッポンはツチノコと違って、そこまで珍しくもない。
 さらに言えば、晋作はツチノコを探すために何日も歩き回ったそうだが、実際にはオルフェーヴルに乗って走っただけで、それほど疲れてはいないはずだ。
 つまり、晋作にとってスッポンは「大したことない珍獣」であり、ツチノコは「超レアな珍獣」ということになる。
 最後に、晋作は「俺様は何をしてでも、必ず目的を達成する」と言っているが、実際は「スッポンを探して、牧場を走り回っていただけ」である。しかも、牧場主との交渉はオルフェーヴルに任せっきりだったし、キングコブラに襲われた時も、劉邦夫妻に助けられたのは晋作の方だ。
 晋作の行動を見てみると、彼は珍獣を見つけるたびに騒ぎ立てるだけの、ただのミーハー野郎にしか見えない。晋作の行動はまるで、「俺様は人気者だぞ!」とアピールするためだけに生きているような感じすらする。
 そんなことをしていて楽しいのかと疑問に思う人もいるかもしれないが、晋作本人はいたって満足そうである。
 なぜなら、彼は自分の行動によって誰かが喜んでくれることを知っているからだ。だからこそ、彼は誰からも愛される人間になったのだろう。

「高杉さん、ついにモノホンの珍獣をゲットしたんですか!?」
「ああ! それも二つだ!」
「おおっ! それはスゴイですね! ところで、その珍獣は今どこにいるんですか?」
「一つは下関の水族館にいるが、もう一つは秘密だ!」
「え~、教えてくださいよ! 気になりますってば!……あ、それより高杉さん、これから一緒に食事に行きません? 美味しいステーキのお店を見つけましてね……」
「いいねえ! 行くぜ、相棒! 今日はパーっと騒ごうじゃねぇか!」
 こうして、長州藩では今も珍獣ブームが続いているらしい。

 その頃、新選組の近藤勇と土方歳三は、謎の珍獣についての噂を耳にしていた。
「おい、トシ。妙なものが見つかったって聞いたんだが、本当なのか?」
「ああ、どうやら本当のようだ。なんでも、象の群れがいるらしい」
「まさか!? あのゾウガメみたいなのか!?」
「いや、もっとデカい。おそらく十メートルはあるだろう」
「なんと!? そんなバカな!? ありえないぞ!」
「だが、目撃者が大勢いる以上、これは事実だと認めるしかない」
「信じられん……。本当に実在したというのか……」
「それで、その珍獣の名前はなんというのだ?」
「ズンドコベロンチョだ」
「……」
 こうして、日本にも遂に珍獣ブームが到来したのであった。

 件の黒船が来航したのは、謎の珍獣ズンドコベロンチョが目撃された直後のことである。
 ペリー提督を乗せた軍艦は、浦賀沖に停泊すると、幕府に対して開国を迫った。
 だが、幕府の対応はあまり芳しくなかった。というのも、当時、日本の武士は外国の文化を恐れていたからである。そこで、将軍・徳川家茂は諸外国の圧力に対抗するため、横浜に開港することを決定した。
 そして、翌年の春――
 江戸の街に、異国の人々が次々と上陸してきた。彼らは「オハヨウゴザイマス」「コンニチワ」などと言いながら、江戸の街に散っていった。
 その様子を見ていた外国人の一人が、こんなことを呟いたという。
「あれはズンドコベロンチョではないか」……と。
 ちなみに、当時の日本人の多くは、西洋人が日本語を話しているとは思っていなかったため、彼らが何を言っているのかさっぱり理解できなかったそうだ。
 その後、江戸の人々は異人たちのことを「夷狄」と呼ぶようになった。

 さて、話は変わるが、この頃、薩摩藩の西郷隆盛は、琉球に使節を派遣する計画を立てていた。
 薩摩の使節団が琉球に到着したのは、それから間もない頃のことだった。
 ところが、琉球の役人たちは、彼らからとんでもない要求を突きつけられた。
「この国で生糸を生産したいので、蚕を貸してほしい」
 これに対して、琉球側はこう答えた。
「お断りします」
「なぜですか? 我が国には、あなた方を支援する用意があるのですぞ?」
「そういう問題ではありません。私たちは、自分たちの力で生きていきたいと思っているのですよ」
 だが、この時の薩摩藩は、まだ琉球王国の事情をよく知らなかった。そのため、彼らは自分たちの都合で物事を進めようとしたのだ。その結果、彼らの身勝手な態度が災いして、琉球との関係は悪化の一途を辿ることになるのだが、それはまた別の話である。

 高杉晋作は噂の珍獣ズンドコベロンチョを探しに、長崎の出島に向かった。しかし、彼が出島に足を踏み入れた瞬間、事件は起きた。
「なんだ、てめぇは? ここはガキが来るところじゃねぇんだよ!」
 そう言って、一人の男が晋作を怒鳴りつけた。
 晋作は思わず頭突きをかましたが、男はビクともしない。それどころか、今度は晋作の腕を掴んだ。
「痛っ! ……離せよ、おっさん! 俺は高杉晋作っていうんだ!」
「うるせえ! そんなことは知らん!」
「知らないはずないだろ! 俺は珍獣ハンターとして有名な男だぜ!?」
「珍獣だぁ? 何言ってやがる! お前なんかより俺の方がよっぽど珍しいだろうが!」
「どこがだよ! あんたがどれだけ凄い人間だろうと、俺だって負けてないぜ!」
「ふざけんじゃねぇぞ、クソガキ! 俺様はな、二十年以上も前に、南蛮人どもにボコられて以来、ずっと鎖国に徹しているんだぞ! それをテメェみたいな小僧が、珍獣呼ばわりしやがって!」
「へえ、そうなんだ。でも、俺だって似たようなもんさ!」
「何ぃ!?」
「俺も昔、異国の奴らに捕まって酷い目に遭ったことがある。だから、気持ちはよく分かるよ。俺だって、いつかあいつらを見返してやるって思って頑張ってきたんだ。まあ、結局、見返すことはできなかったけどね」
「……」
「なあ、おっさん。俺たちは似ていると思うんだけど、どうだい?」
「……確かに、言われてみると似てるかもしれん。よし、気に入った! これからは同志だ!」
 こうして、二人は意気投合した。
「ところで、ズンドコベロンチョを見たって人はいるかい?」
「ああ、いるよ。ただし、そいつは『ズンドコベロンチョ』なんて名前じゃないぜ?」
「どういうこと?」
「ズンドコベロンチョは、出島の外に生息しているんだ」
「マジかよ! そりゃあ大変だ!」
「早くしないと逃げられちまうぜ?」
「くぅーっ! 急がないと!」
 こうして、晋作は急いで出島を出た。

 一方、その頃、新選組の土方歳三と沖田総司は、薩摩藩の西郷隆盛と会っていた。
「久しいのう、トシ」
「ああ、まさかこんな形で再会することになるとはな……」
「まさか、お主と再び肩を並べて戦う日が来ようとはな」
「俺も同じことを考えていた」
「フッ、嬉しい限りだ」
「あの珍獣ズンドコベロンチョとやらが現れたせいで、幕府の連中は大慌てらしいぞ」
「それは本当か?」
「ああ」
「なんと愚かな……」
「まったくだ」
「薩摩としても、あの珍獣は是非とも手に入れておきたいものだ」
「うむ、あの珍獣が生み出す絹糸は、きっと素晴らしいものになるはずだ」
「おい、西郷。その珍獣を譲ってくれないか?」
「それはできぬ相談だ」
「どうしてだ?」
「我々は既に珍獣ズンドコベロンチョを手に入れたからじゃ」
「なんだと!?」
「その証拠に、ほれ」
 そう言うと、西郷は懐から大きな袋を取り出した。
「開けてみるがよい」
 言われるままに、土方が袋を開けると、そこにはズンドコベロンチョが入っていた。
「これは一体……?」
「ズンドコベロンチョは、薩摩に代々伝わる家宝だったのじゃ」
「しかし、ある日のこと、突然、この珍獣が暴れ出しての。困り果てた我らは、遂にこの珍獣を殺すことに決めたのじゃ」
「すると、この珍獣は命乞いを始めた。そこで、我は言った。『ならば、貴様の生み出す絹糸で着物を作ってくれ。それができれば、助けてやろう』と。すると、珍獣は涙を流しながら、こう答えた。『分かりました。このズンドコベロンチョの命と引き換えに、この国の人々に幸せをもたらしましょう!』」
「そして、珍獣は自らの腹の中に糸を吐き出した。その後、珍獣は息を引き取った。だが、不思議と悲しくはなかった。なぜなら、珍獣が生み出してくれた糸によって、日本の人々の服が豊かになったからだ。それ以来、我が一族はズンドコベロンチョを祀るようになったのじゃ」
「なるほど。つまり、この珍獣は生ける神となったわけか……」
「左様。だから、お主に渡すことはできない」
「分かった。それなら仕方ないな」
「分かってくれたか」
「ああ、俺たちの目的はあくまでも開国させることだからな」
「うむ、では共に戦おうではないか」
 こうして、新選組は薩摩藩とともに、幕府と戦うことになった。

 それからしばらくして、晋作は出島にやってきた。だが、彼はそこにズンドコベロンチョの姿を見つけることができなかった。
「ちくしょう! 間に合わなかったか!」
 晋作は悔しさのあまり、地面を叩きつけた。そんな時、晋作に声をかける人物がいた。
「よう、兄ちゃん。何か探し物かい?」
 晋作が振り向くと、そこには見知らぬ男が立っていた。
「あんたは……劉邦じゃないか!」
「ほう……俺のことを知っているのか? こりゃあ驚いたなぁ!」
「いやいやいやいや! あんたが有名人すぎるだけだろ!」
「いやぁ~! 照れるぜぇ!」
「あんたが凄いことは認めるが、今はそんなことを言っている場合じゃないんだ!」
「へえ、何があったんだい? 話してみなよ」
「実はかくかくしかじかで……」
「へえ、ズンドコベロンチョを探しているんだ。よし、俺も手伝ってやるよ!」
 こうして晋作と劉邦は、珍獣ホイホイを探すことにした。
「ところで、あんたは何をしているんだ?」
「俺か? 俺は珍獣ハンターとして世界を回っているんだ」
「へえ、そうなんだ」
「そういうお前こそ、何してんだよ?」
「俺か? 俺は珍獣ハンターだよ」
「へえ、そうなんだ」
「ところで、その珍獣って何?」
「珍獣っていうのは、珍しい動物って意味だ」
「要するに、変わった生き物ってことか?」
「まあ、簡単に言えばそうだね」
「ちなみに、ズンドコベロンチョって知ってるか?」
「ああ、知ってるよ」
「どこにいるか知らない?」
「悪いけど、知らねえわ」
「そうか……まあ、そりゃあそうだろうね。でも、ありがとう。一応、聞いてみただけさ」
「そっか。まあ、頑張ってくれ」
 こうして二人は別れた。

 その後、晋作と劉邦は、とある建物の中で珍獣ホイホイを見つけた。
「これだ!」
「やったぜ!」
 晋作と劉邦は、早速、珍獣ホイホイを使って、珍獣ズンドコベロンチョを捕らえようとした。しかし、ズンドコベロンチョは逃げ足が速く、なかなか捕まえることができない。
 結局、珍獣を捕獲できたのは五回中二回だけだった。しかも、その二匹は珍獣ズンドコベロンチョではなく、珍獣モヒカンだったのだ。
「ちくしょう! あと少しだってのに……」
「諦めんなよ、兄ちゃん。まだチャンスはあるはずだ」
「ああ、そうだな……」
 その時だった。
「おい、大変だ! 西郷たちが攻めてきたぞ!」
「なんだと!?」
「急げ! 逃げるんだ!」
 そう言って、人々は一斉に逃げ出した。だが、そんな中、一人の少女が泣き叫んでいた。
「ママァーッ!」
 少女の母親らしき人物は見当たらない。どうやら、逸れてしまったようだ。
「大丈夫かい?」
「うん……」
「俺が一緒に探してあげるよ」
「本当!?」
「ああ、もちろんだとも」
「お兄ちゃん、大好き!」
 そう言うと、少女は晋作の手を握った。
「おい、待てよ。その子は俺が先に見つけたんだぞ?」
「そうはいかない。この子は俺と一緒に行くと言ったんだ」
「ふざけんじゃねぇ! それはこの俺が先約だ!」
「うるせぇ! この子を助けるのは、この俺だ!」
「テメェみたいな野郎に任せられるか!」
「上等じゃねえか!」
 晋作と劉邦は喧嘩を始めた。そこへ、二人の男が現れた。
「お主たち、何をやっておるのじゃ!」
「貴様らは、西郷隆盛と大久保利通じゃねえか!」
「なぜ貴様らがここにいる!」
「決まってるじゃろう。我らは今からズンドコベロンチョを捕獲しに行くところじゃ」
「なっ……なんだって!?」
「フハハッ! 貴様らも運がなかったのう!」
「くぅ……!」
「さあ、お嬢さん。行きましょうか」
「うん!」
 こうして、ズンドコベロンチョを巡る戦いは、日本全土を揺るがすほどの大きなものへと発展していくのであった。

 西暦一八四三年(天保十四年)。薩摩の国・鹿児島にて。
「さあ、ズンドコベロンチョ! 今日も張り切って珍獣を生み出すのじゃ!」
 ズンドコベロンチョは腹の中に糸を生み出し始めた。だが、その量はいつもより少ない。
「ううむ、どうしたのじゃ? 今日のお前は元気がないではないか」
 すると、ズンドコベロンチョは涙を流しながら言った。
「実は、私には好きな人がいます。その人は、とても優しくて、私のことを大事にしてくれます。私はそんな彼のことが大好きだ! だから、彼と一つになりたい!」
「なんと! お前にもついに春が来たというのか!」
「はい!」
「そうか、そうか。ならば、お前に彼氏を作ってやるとしよう」
「ええっ!? そんなことができるんですか!?」
「うむ。ただし、条件がある」
「はい、なんでもします!」
「では、まずはその男の精気を全て吸い尽くすがよい」
「ええっ!? そんなことをしたら死んじゃいますよ!」
「心配はいらん。相手は人間ではないのじゃ」
「ええっ!? それってどういう意味ですか?」
「まあまあ、とにかくやってみるのじゃ」
 こうして、ズンドコベロンチョは、薩摩藩の武士に化けた。

「ズンドコベロンチョ殿。折り入って頼みたいことがあるのだが……」
「はい、何でしょうか?」
「実は最近、部下の様子がおかしいのだ」
「ほう、具体的にはどんな風に?」
「突然、奇声を上げたり、全裸になったり、時には女装までする始末なのだ」
「なるほど」
「このままでは、仕事に支障が出てしまうので、何とかしていただきたい」
「分かりました! そういうことでしたら任せて下さい! ズンドコベロンチョの珍獣魔法をお見せしましょう!」
 そう言うと、ズンドコベロンチョは呪文を唱えた。
「珍獣化!」
 その瞬間、武士の姿は消え去り、代わりに珍獣モヒカンが現れた。
「ブヒャッ!?」
「これで大丈夫です!」
「おおっ! これは素晴らしい!」
「あとは、あなたの心の中に戻りなさい」
「はい、ありがとうございます!」
 こうして、珍獣は心の中に戻ろうとした。だが、その時だった。
「待ちやがれ!」
 何者かが乱入してきた。
「誰だ!?」
「俺の名前は高杉晋作! 長州藩が誇る珍獣ハンターだ!」
 晋作は珍獣を捕獲しようとする。しかし、ズンドコベロンチョは素早く逃げ回る。
「ちくしょう! ちょこまかと動き回りやがって!」
「無駄だ! 俺を捕まえることなど不可能だ!」
「こうなったら、オルフェーヴルの蹄だ!」
 晋作は必殺技を発動するが、ズンドコベロンチョには効かない。
「ちくしょう! こんな時にバケモノバスターがあれば……」
「フハハッ! 残念だったな! 貴様らの負けだ!」
「ちくしょう!」
 晋作は膝をつく。しかし、劉邦が立ち上がる。
「諦めんなよ、兄ちゃん」
「ああ、そうだな」
 晋作は再び立ち上がった。
「さあ、観念しろ!」
「そうはいくかよ!」
「ならば、力づくでも捕まえてやる!」
 そう言うと、晋作は必殺技を発動しようとした。だが、その直前、ズンドコベロンチョは言った。
「おいおい、いいのか? 本当に俺を逃してもいいんだな?」
「なんだと?」
「俺はお前たちのことを忘れないぞ」
「そうか。なら、今ここで息の根を止めてやる!」
 晋作は必殺の一撃を放った。だが、ズンドコベロンチョは素早い身のこなしで攻撃をかわした。
「さらばだ、晋作。また会う日まで」
 そう言って、ズンドコベロンチョは去っていった。
「待て!」
「おい、落ち着け! 深追いは危険だ!」
「くそっ!」
 こうして、ズンドコベロンチョは逃げ切ったのであった。

 時は流れて、2023年。歴史学者の宮本武蔵は、とある博物館を訪れていた。目的はズンドコベロンチョの展示を見ることである。
「お、これがズンドコベロンチョか」
「すごい迫力ですね」
「ああ、まさに芸術品と呼ぶに相応しいだろう」
「確かに、この珍しさはもはや奇跡的と言えるでしょうね」
「まったくもって、その通りだ」
「ところで、先生。珍獣の生態について興味はありませんか?」
「珍獣の生態だと?」
「はい、実は私もズンドコベロンチョを研究しているんですよ」
「ほほう、それは興味深い話じゃないか」
「よかったら、研究の成果を見ていただけませんか?」
「ああ、是非とも拝見させてもらおう」
「では、こちらへどうぞ」
「うむ」
 二人は展示室の奥へと進んだ。そこには、ズンドコベロンチョの剥製が置かれていた。
「どうですか? 見事なものでしょう?」
「うむ、実に見事だ」
「実は、この珍獣には秘密があるんです」
「ほう、それはいったい何かね?」
「実は、ズンドコベロンチョは生きているのです」
「何だって!?」
「本当ですよ。私は何度も解剖を試みましたが、心臓は動いているし、呼吸もしていました」
「信じられん……!」
「ちなみに、私は今でも定期的に餌を与えていますよ」
「なんということだ……」
「さらに、私はズンドコベロンチョに名前をつけました。その名もズンドコベロンチョ2号です!」
「なんというネーミングセンスだ……」
「もちろん1号は私の飼っているペットです。名前はズンドコベロンチョ3号です」
「まさか、そんなことが……」
「ちなみに、ズンドコベロンチョは人間に化けることができます。実際にやってみましょう」
 すると、ズンドコベロンチョは武士の姿になった。
「おおっ!」
「これで信じていただけたでしょうか?」
「ああ、信じるしかあるまい」
「それでは、ズンドコベロンチョの秘密を教えましょう! ズンドコベロンチョの珍獣魔法は、実は人間の精気を奪っているのです! だから、珍獣の飼い主たちはどんどん老化していくのであります!」
「なんと恐ろしい魔法なのだ!」
「そして、その魔法は珍獣自身にも影響を及ぼしているのであります! ズンドコベロンチョは、自分が死ぬ前に子孫を残したいと願っているのであります! そこで、オスの珍獣とメスの珍獣が合体することで、新たな珍獣を生み出すのであります!」
「なんてこった!」
「そうして生まれた珍獣こそ、珍獣王・ズンドコベロンチョなのであります! ズンドコベロンチョは、その圧倒的な珍獣パワーによって世界征服を目論むのであります! しかし、珍獣バスターの活躍により、珍獣王は倒されてしまうのでした。めでたしめでたし」
「待て! まだ話は終わっていないぞ!」
「えっ!? どういうことです!?」
「実は、ズンドコベロンチョは私が保護しているのだ!」
「なんですって!?」
「ズンドコベロンチョは絶滅危惧種に指定されているからな。私の手で守ってやらねばならんのだ!」
「くそっ! なんてことだ! せっかく、ここまで育てたのに!」
「残念だったな」
「ちくしょう! 殺せ! いっそ、ひと思いに殺してください!」
「分かった。お前の命を奪うことは容易いが、ここはあえて見逃そう」
「ありがとうございます!」
「その代わり、二度と悪さをするんじゃないぞ」
「はい、分かりました!」
 こうして、宮本武蔵はズンドコベロンチョを逃がすことを決意したのだった。その後、珍獣の飼育は禁止となり、珍獣ハンターは絶滅した。

『珍獣ハンター高杉晋作』(完結)

【氷川きよし - きよしのズンドコ節】

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