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ChatGPTを使ってエンジニアが開発を進めたら、視覚障がい者のもっと大きな社会課題の解決につながった


みなさんこんにちは!今回は、アバナードが取り組んでいるコーポレート・シチズンシップの、ソーシャルイノベーション創出活動について書きます。

ChatGPTを使って、社会の課題解決につながるような何かができないか?
 そんなエンジニアの好奇心から有志たちが動き出して開発したChatGPT点字変換サービス。点字ディスプレイとは 「ピンが上下に動いて点字を表示します。メモや読書等での使用のほか、Blutoothやwifi、USBでパソコンやスマートフォンと接続することで、文字情報を点字で表示して、メールやインターネットの各種サービスを活用できます。文字を入力することもできます。」

盲ろう者が災害時に逃げ遅れないよう、適切な情報を集めて最適な避難経路を点字で知らせるこのシステムが、2023年7月に、東京は有明の「東京臨海広域防災公園 そなエリア東京」で、公開展示されました。翌月、このプロトタイプを視覚障害当事者にプレゼンしたところ、事態は思わぬ方向に……。一体何が起きたのでしょうか。


AIで視覚障害者の避難誘導をサポートするシステムとは?

アバナードジャパンが毎年開催している社内メイカソン「!nnovate(イノベート)」。ここにアバナード関西の杉本さん・大北さん達による「ChatGPT点字変換サービス」プロジェクトが参加して、各分野から注目を集めているOpenAI社のChatGPTを活用した点字変換システムのプロトタイプが誕生しました。

PCでChatGPTが取得した情報を点字ディスプレイ(右)に表示する

このシステムでは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスから専用ウェブサイトやアプリケーションにアクセスすると、最新の災害状況をAIが取得し、点字ディスプレイを通じて、視覚障害者に適切な情報提供と避難経路の誘導を行います。災害が発生すると、視覚障害者の避難を補助できる健常者が離れたところにいたり、先に避難してしまったりと、視覚障害者が孤立してしまう可能性がありますが、AIは逃げません。従来のAIに比べ、あいまいな質問に対しても適切な回答を提示でき、ネット上のデマ情報なども認知してより正確な回答ができるChatGPTの特徴を生かしたツールとなっています。

*詳しくはこちら

実証実験で発見した、新しい課題

有明での展示公開の翌8月、視覚障害の当事者のもとに伺い、システムをプレゼンする機会を得ました。今回ご協力いただいたのは、日本点字図書館の理事長であり、筑波技術大学で教鞭を取っていた名誉教授でもある長岡英司(ながおか・ひでじ)さん。点字を頼りに大学に進学し、視覚障害者の就職・復職を支援する仕事などを経て、当事者の学生を対象とした情報処理教育や修学支援などに取り組まれている、点字のプロフェッショナルです。
 
デモンストレーションでは、避難経路の文章や、気象庁が発信している情報などをAIが取り込み、点字ディスプレイに表示。長岡さんはスラスラと淀みなく点字を読み取り、情報は正確に伝達されました。

点字ディスプレイで読み取る長岡さん

しかし、視覚障害者全員がこの点字ディスプレイを所持しているわけではなく、そもそもの点字の識字率も、視覚障害者全体の約1割と言われています。ユーザーが点字ディスプレイを日常から使用している視覚障害者に限られる点が、システム普及の課題として浮き彫りになりました。

実はいま視覚障がい者の社会で困っているのは……

デモンストレーションに対してフィードバックをいただく段になって、「実はいま、視覚障がい者の社会で本当に困っていることは」と、長岡さんや点字図書館の職員の方が話し始めました。
視覚障害者が本を読むには、点字化された図書あるいは音声で読み上げられた録音図書という二つの手段があります。日本点字図書館は点字図書・録音図書の製作や出版・販売などの役割も担っていますが、いずれもボランティアが活字の図書を一字一句、点字あるいは音声に置き換えて製作しています。そのボランティアの数が今後減少し、点字化・音声化の需要に追いつかなくなるのではないかという懸念が、深刻な問題となっているそうです。
 
この現状を聞いた瞬間、アバナード社員の目が輝きました。
「それ、ChatGPTを使ってシステム化できますよ!」

社会課題は、エンジニアの心に火をつける

後日大阪に戻ったアバナードチームは、早速新たな点字変換システムの創出に取り掛かり、わずか2日の間に新たなシステムの開発に成功。詳細はまた別の記事でご紹介します。
 
アバナードがパーパスとして掲げている「Make a genuine human impact」。コーポレート・シチズンシップ活動はまさに、“真のヒューマンインパクト”を体現しているプロジェクトばかりです。社会課題は、エンジニアの持てる技術や存在価値を最大限に発揮できる機会であり、そのチャレンジはアバナードにとって将来のビジネスシードにもつながる可能性を秘めているのです。そんな課題にワクワクしながら向き合うことで、思いがけない真のヒューマンインパクトが生まれるのかもしれません。

コーポレート・シチズンシップリード 日野紀子

アバナードでは、重要な企業活動として「コーポレート シチズンシップ」に力を注いでいます。アバナードのコーポレート シチズンシップのミッションは、若者や過小評価されているコミュニティや環境に、持続可能な影響を与えることです。

また、アバナード ジャパンの活動では、社会課題の解決に取り組む「チェンジ メーカー」を支援することを大切にしています。

今後も社員も、会社も、受益者と共に豊かに成長していく姿勢で、持続可能な社会を創る 「新たな価値創造」に挑戦していきます。


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