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「運」の考え方について

「ああ、今日は運が悪かったな。」

「ああ、今日は運がよかったな。」

私たちが日常の中で当たり前のように信じてやまない「運」という概念。

「運」とはなにか、考えたことはあるでしょうか?

今回紹介する本は、「運転者」です!

* * *

物語は、保険の営業を生業としている修一が、不登校気味の娘の面談に向かう場面から始まる。常にノルマに追われ、なんとかうまく仕事を回していた矢先にお得意様だったお客様から保険の解約を告げられ、予定していたパリ旅行どころか、これから先の生活すら危うくなる事態に焦る修一。しかし、妻の優子と待ち合わせている学校に行かなければならず、気持ちの整理もできないまま通りかかるタクシーに乗り込んだ。

ふと、乗っているタクシーの料金メーターは増えるのではなく減っていくことに気が付く。

さらにおかしなことに、修一は目的地を伝えてないのにも関わらず、運転手はそそくさと娘の中学校に向かって車を走らせているのである。

困惑し怒り出す修一。

運転手は落ち着いた対応で、

「岡田さんは運がいいですか?」

突拍子もない質問に困惑する修一。そして、運がいいことなんてなかったと言ってふてくされる。

「そうですか、そんな人の運を変えるのが私の仕事です。」

* * *

本書は「運が悪い」を人生の言い訳にしてきた男性が、一人のタクシー運転手との出会いをきっかけに更生していく自己啓発本のような小説です。

私もいいことも悪いことも「運」のせいにすることはよくあります。

しかし、運転手によれば「運」というのは、いい悪いではなく、「貯めて使う」ものだと言います。

「運」は貯めなければ使えないので、何もしなかったら「運」は貯まりません。完全後払い制です。

ここで重要になるのが、「運」をいつ使うかです。

「運」を使うのは自由ですが、そのタイミングによって自分の人生を大きく左右する出来事が生まれます。

では、「運」を使うべきときに使うにはどうすればいいのか。

運転手曰く、「常に上機嫌でいること」です。

私なりの解釈をするならば、起きる出来事に対して前向きな姿勢でいることです。

出先で急に降り出した雨。いそいで駆け込んだ喫茶店で、もしかしたら素敵な出会いがあるかもしれません。

今日の出来事が、もしかしたら数十年後に「あの日から人生が変わった」と言える日になるかもしれません。

そういう心持ちで生活することで、自然と「運」がいいと思える使い方ができるでしょう。

* * *

本書の「運」に対する素敵な考え方として、「運」は自己完結するものではなく、共有するものだということを紹介します。

街中でゴミが落ちていてそれを拾う。そうしたら、それを見ていた誰かも落ちているゴミを拾うかもしれない。

自分が持っている「運」はお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚の人からいただいたものかもしれない。

そのようにして考えると、毎日の生活を全力で頑張ろうと「上機嫌」に過ごすことができると感じました。

最後に、保険の営業マンとしての修一に納得させられた言葉を、ネタバレにならない程度にすこしだけ。

(保険というのは)たとえば百人の人が毎月お金を出し合ってプールしていく。そのお金はその百人の人たちみんなが困った時に使う権利がある。ただ、<困った>というのも人それぞれ基準が違ってしまってはいけないので、こういうときには使えるということを決めよう…という取り決めがある。そういうものです。
だから、<掛け捨て>という言葉だけ聞くと、何もなかったときに存しているように感じるかもしれませんが、世間でよく言う<安心を買った>というだけでもないような気がするんです。保険というのは本来、将来の自分のために貯めてあるというよりは、今困っている人がいて、その人のために援助しているということだと思うんです。そうやって払ってきた人だから、自分が困ったときにも助けてもらえる。まあ、私個人の解釈ですけど。

では、また!


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