Rider's Story 明日には雪が
割引あり
バイク小説短編集 Rider's Story 僕は、オートバイを選んだ
武田宗徳 オートバイブックス 収録作品
交差点で横転した一台のバイクが、短い渋滞をつくっていた。
僕は車の列の後ろで考えた末、バイクだからできるすり抜けで交差点まで行き、バイクを降りて倒れたバイクを起こすのを手伝うことにした。ライダーは怪我をしているようには見えなかった。倒れたバイクはSRで、ヘルメットの後ろからのぞく髪の毛と華奢な身体つきから、乗り手は女性のようだった。
「手伝いますよ」
僕はそう言い、SRのハンドルに手をかけた。
「高志?」
女の子はそう言ってきたが、僕は高志ではない。きっとゴーグルをしているから人違いをしているのかと思い、ゴーグルを取って言った。
「違いますよ」
「あ……ごめんなさい」
女の子は、小さな声で呟くように言った。
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