見出し画像

スタッフ泣かせな19歳のおおかみギャング

みなさん、こんにちは。
オーストラリアでおたんこナース、
クリニカルナーススペシャリストの
高橋奈央子です。



ここ1,2ヶ月は、
日本の帰省に加え、
個人セッション等のお申し込みが
大変増えていて、
発信が滞っていました。



先月、
シドニーに帰ってきてからは、
風邪をこじらせ、
咳とガラガラ声にも
悩まされましたが…



なんとか生きていますよ!



時おり、
最近生きてますか??



なんて公式LINEメンバーさんからも
お気遣いのメッセージを
頂いたりもしてました。
本当にありがとうございます。



ということで、
本日は久しぶりに
本業のナースのお仕事について
投稿しようと思います。



ナースの人も、そうでない人も、
海外の医療ドラマを観るように
楽しんで頂けたら幸いです。

先週、私は、
フロアマネージャー的な
業務についておりました。



とにかく、
フロアがスムーズに動くように、
スタッフ、患者さん、モノ、予定の
トラブルシューティングを
していくこの役割が、
私はかなり好きなんですね。



つまり、トラブルシューティングが
好きなんです、私。



そこで先日一番に
舞い込んできた連絡は、
CTの放射線科技師から。



ちなみに
私は南半球最大の
放射線科外来に勤務しております。



救急外来から19歳男性の
腹部CTを取りたいんだけれども、
とにかく言うことを聞かないので
手を焼いているから早く来てくれ。



そのような依頼だったんです。



私って、
こういう一癖ある人の対応が
得意なので、
さてどんな患者さんかなーと
興味津津で向かうと…



まだあどけなさが残る、
ひょろりと背の高い
中東系ギャングスターっぽい
青年だったんですね。



眉間にしわを寄せて
苛つく態度をあらわにしながら彼は、
まず怒りを私にぶつけてきました。



小さい頃から慢性疾患のため
入退院、手術、検査、治療を
たくさん繰り返しているので、
若いのに血管がボロボロ。



だから造影剤を血管に
注射する必要がある検査は
受けたくないというのが、
彼の気持ちだったんですね。



私が話を聞くまでに、
何度も同じことを言っているので、
イライラもマックスに
達しているようでした。



病院側からすれば、
腹痛で救急外来に来たら、
原因究明のために
その検査は不可欠。



でも私自身も10歳の頃に
悪性リンパ腫を患い、
死にかけたり、
長期間の化学療法を受けた経験から



検査や治療の苦痛を経験しているので、
彼の気持ちもよく分かるんですよね。



この検査を受けなきゃ、
治療も決まらないっていうことは
分かっているけれど、



彼のように慢性疾患で
病気を治すのではなく、
病気と付き合っていくしかないと
言われている場合は、



なおさら検査や治療で受ける
苦痛って何の意味があるんだろうって
思うんだろうなと。



彼は病院に対する不満、
スタッフが自分の苦痛を
理解してくれないことに対する葛藤を
色々話してくれたんですね。



そして私が、
「それで検査はどうする?
受ける?拒否する?
あなたが決めていいのよ」
そんなふうに話すと、



彼は、ポカーンとした顔で
私を見たんです。



「ん、どした?」と聞く私に、



「えっ、ナースは俺に
検査受けなきゃダメだって、
そのために腕に点滴を
入れに来たんじゃないの?」
そう彼は聞いたんです。



「たしかにそれは私の仕事だけど、
あなたがどれだけ今まで
ツライ思いをしているかも
想像できるし、



あなたが言う通り、
検査をして何かが分かったところで
あなたの苦痛をどれだけ
取れるのかわからないじゃない?



そんな検査を何がなんでも
受けろって言うつもりはないよ。



あなたの体のことは、
あなたが決められる年齢でしょ?」
そう言うと彼は黙っていました。



彼の沈黙が続く中、
私の目に止まったのは
彼のすねに入っていた
見事なタトゥー。



「そのタトゥーかっこいいね!
キツネ?」
って聞いてみたところ、



「ナース、これはどう見ても
オオカミじゃん!」
って突っ込まれました笑



「なんでオオカミ入れたの?」
と聞くと、



「オオカミってかっこいいじゃん!」
と得意げに話し始めたので、
どうしてオオカミがかっこいいと
思うか聞いてみると、



「周りの友達はみんな
ジムに行ってムキムキになって、
誰と喧嘩しても勝てるくらい
強いやつばっかり。



でも俺は、
病気してばっかりで
身長は伸びてもひょろひょろで、
強いって感じじゃないじゃん?
だからオオカミに憧れたんだ」



そんなふうに話してくれたんですね。



「そっかー、
小さい頃から病気で
いろんなことが出来なくて、
理想の自分になれてない感じが
あるんだね。



友達みたいに
当たり前のことを当たり前に出来る
生活を手に入れたいって思うんだね。



でも、それでも
私は君がオオカミのような
強さを持っていると思うよ」



そう返すと彼は前のめりになって



「どうして、どうして?
ナースはこの俺が
どうして強いって思うの?」と
興味津々に聞いてきました。



「私はさ、
こう見えてね、結構この部署では
ベテランナースなんだよ。



私は他のスタッフから要請を受けて
手を焼く患者さんのもとに行く。



だから私は今、
君と話しているんだけどね笑



君は19歳という若さで、
ドクターやナースの提案した
検査や治療プランに
NOと言ったんだよね。



納得がいかないことがあって、
ちゃんと自分の意思表示を
したよね。



私はそれも一つの強さで、
そうやって言えるのって
一匹オオカミみたいだよね?」



そう言うと、
なんだか彼は照れだしたんです。



可愛いですね、
格好はギャングスターみたいに
イキってて、
多分病院スタッフにも
そんな態度で接していたんでしょう。



でも、
それは本来の彼の姿じゃない。



医療の現場では、
そんなふうに



「なんでこの人は、
今こんなことになっているのか?」
という純粋な興味と
やっかいな患者という色眼鏡を外して
まっすぐな気持ちで向き合えると、



患者さんも本来の姿を見せてくれたり、
本音を打ち明けてくれたりするもの。



彼との関わりで
私はそういうことが出来たから、
彼は言うことを聞かない
スタッフ泣かせな患者さんから



慢性疾患に悩む素直な19歳に
戻ったんだと思うんです。



その後、彼は、ㅤ



「点滴の針は刺してもらって、
CTだけは受けるよ。
でも、飲む造影剤は不味くて
吐きそうだから飲みたくない」



という希望を私に伝え、
検査を受けることとなりました。



ちなみに、
彼の血管は、長年の治療で
極細のコリコリでした。



針先の方向を何度も修正しながら、
一発でなんとか入れる…という
ものすごい苦痛を
与えてしまいましたが、



「ナース、
一発で入れてくれてありがとう。
ベテランって言ってたのは、
本当だね」
と笑顔を見せてくれました。



私は内心、針を刺しながら、
この子、
失神するかもしれないな…
って思うくらい
痛がっていました。



最後は私への気遣いと
感謝の言葉までかけてくれました。



その後、
私に彼の対応を要請した技師に、
「彼はとてもいい子だったよ」
と話をすると、



技師は目を丸くして
「奈央子はやっぱり
手懐けるのがうまいなぁ」と一言。



ちなみにその患者さんとは、
私が帰宅するころに院内で
すれ違ったんですね。



「お腹の痛みはいいの?」
と私が聞くと



「よくわからないけど、
良くなったから、
これから家帰るところだよ。



ナース、
今日は点滴一発で入れてくれて
どうもありがとう!
今までで一番上手だったよ!」



そう笑顔を見せてくれました。



きっと彼にとっては、
針を刺すのが上手かどうかなんて
本当は関係なかったんじゃないかな。



私はそう思っています。



自分の気持ちを受け止めてくれて、
その気持ちに寄り添ってくれた人が
いたことが嬉しかったんじゃないかなと。



私は勝手にそう思っています。



こんなふうに、
病院という狭い箱の中では、
毎日たくさんのドラマが
繰り広げられます。



患者さんとスタッフのドラマ、
スタッフ同士のドラマなど、
そのドラマを見たり、
巻き込まれるとイヤだな…
そう思っていた頃もありました。



でも、今では
そのドラマをハッピーエンドにしたり、
そのドラマの裏を知ることで
想定されていたシナリオを
覆すことも出来ると知り、



数々のドラマに対する
私の向き合い方も変わったんですね。



私のもとに寄せられるナースたちの
ご相談内容の中には、
そんなドラマを見ることの苦痛、
巻き込まれることによる悩みも
多かったりします。



そんな悩めるナースたちも、
私とのセッションを通して、



自分の悩みはどこから来ているのか、
そしてその悩みはどうやったら
超えることが出来るのかを知り、
それを超えていったりしています。



私は日本という国境を超えて、
文化や人種、宗教の枠を超えながら
ナースとしてのキャリアを
積んできました。



その中で、
常に私の常識、
私の価値観をぶち壊される
ショックや苦痛、失敗や挫折も
たくさん経験してきています。



だからこそ、
日本で働きながらもがいたり、
悩んだりしているナースたちのために
私の経験を活かしたい!
そんな気持ちで私は活動しています。



ですから、
現状を超えた先に
どんな景色が待っているのか、
どんな自分になれるのかを見てみたい!



海外で働かなくても、
海外で働くナースなら
今の悩みやモヤモヤを
どう捉えるのか、
そしてどう超えるのかを知りたい!



そんな方がいらっしゃいましたら、
是非お問い合わせフォームから
ご連絡くださいね。



私は、病院という組織や
国という枠を超えて、
自分の経験を活かして、
悩めるナースたちのメンターになりたい!
そう思っています。



もし今、
誰にも打ち明けられずに
悩んでいるなら、



誰にも分かってもらえていないと
苦しんでいるなら、



オーストラリアのおたんこナースが
あなたのメンターになりますよ。



高橋奈央子
お問い合わせフォーム
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
  コチラ

髙橋奈央子とLINEで繋がる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?