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アフリカで助けられる生活

ケニアに来てからもうすぐ3か月。マラウィ同様、早速ケニアの人々の優しさに頼りながら生活している。

例えば先日。ようやく車のハンドルカバーが手に入ったのが嬉しくて、購入早々ショッピングモールの駐車場で付けていた。しかしこれが意外にも伸びなくて苦戦していたところ、にこやかなケニア人と思われる男性2人がこちらを見ながら通り過ぎた。ここぞとばかりに私は"Can you help me??"と2人に声をかけ、ハンドルカバーの装着をお願いした。
はじめはそのうちの1人が頑張ってくれていたのだが、なかなか1人の力ではうまくいかず、その相方を助手席側に呼び、もう1人が他方からカバーを引っ張ってようやくハンドルカバーの装着が完了した。Asante sana(アサンテ サーナ、ケニアの公用語のスワヒリ語で、どうもありがとうの意味)!!彼らが通り過ぎなかったら、私は途方に暮れていたか、別のサイズがあることを期待してハンドルカバーを買ったお店に戻っていたか、そのまま諦めて帰宅していたと思う。

このように通りすがりの人々に助けてもらうのはケニアに始まったことではない。以前に駐在していた南部アフリカにある小さな国、マラウィでもそうだった。

マラウィで助けられたことはありすぎて書ききれないが、ハンドルカバーに続き、車関連でも少なくとも2つある。

エピソード1つ目は、ガス欠事件。日本ではほぼペーパードライバーであったため、マラウィで車を乗り始めてから、ガソリンの残量を確認することを完全に忘れていた。その日は日曜日で普段であればお店や企業等ほとんどの施設が閉まっているが、ガス欠になった現場の目の前にオフィスらしき建物を発見。誰かいない~?と叫ぶと中から男性2人が登場。この時も上記の時同様、救世主が現れた。事情を説明すると、近くにあるガソリンスタンドまで行ってくるから待ってて、と500mlのペットボトルを片手にガソリンをゲットするために足を運んでくれた。少しすると先ほどは空だったペットボトルに黄金に輝くガソリンが満タンに!そのキラキラ輝くガソリンが、空っぽになった私の車のタンクに徐々に注がれ、無事に私はその後近くのガソリンスタンドまで辿り着くことができた。Zikomo kwambiri(ズィコモ、クワンビーリ、マラウィの公用語の1つのチェワ語で、どうもありがとうの意味)!!

エピソード2つ目。とあるミーティングに出席するために若干遅れており、焦りながらミーティングが開催されるオフィスに自車で到着。車を急いで停めようとしていたら、がっつん、となにかが起きた大きな衝撃音。まさかのタイヤ1つが脱輪。がーん。なんでこういう大事な時にこんなことが起きてしまうの、と撃沈していたら、数秒後に後からともなくマラウィ人の男性たちが10名ほど集まってきたと思いきや、周辺にある大きな石を見つけきてタイヤと側溝の間に積み上げ、いとも簡単に車体がふわっと上がり、あるべきところに車は戻った。事件発生から約15分足らずでの出来事だった。不幸中の幸いで、駐車しようとしていた場所には、そのミーティングに出席する人たちを乗せるドライバーさんたちが何名か外で待機していたため、ドライバーさんたちを含めた男性たちがまたもや私の救世主となった。

日本に長らく住んでいないため、若干記憶が薄れかけているところもあるかもしれないが、アフリカ(私はマラウィとケニアの2か国しか滞在したことがないため、”アフリカ”と纏めてしまうことには罪悪感があるが…)にいると本当に誰かが助けてくれる。例えば、日本で上記の脱輪事件等が起こった場合、JAFを呼んだらすぐに駆けつけてくれるのだろう。もちろん、そうしたサービスが既にビジネスとして成り立ち、組織化していることは素晴らしいと思う。しかし、そうした仕組みが当たり前になってしまっている日本では、全ての物事が問題なく動き、問題が生じても助けを求める企業やサービスが必ず存在している。私の知る限り、マラウィではそうしたサービスが存在しないからこそ、人々が助け合い、人々の温かさを感じられるのだと思う。

もちろん、日本にあるサービスに温かさを感じないわけではないが、ビジネス化されているだけに、やはりそこには人間性を感じるかというと正直わからない。

現在の世界では、どうしても技術や経済、開発の発展状況で一国のレベルが図られてしまっている。私がこれまでマラウィとケニアで感じてきた人々の人間性指数はなかなか数値化することができないが故に、それぞれの国の良さを正確に表し切れていない。

2009年より、イギリスの財団であるCharity Aid Foundation(CAF)が”World Giving Index”(世界人助け指数)を毎年発表しており、①過去1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか、②過去1ヶ月の間に寄付をしたか、③過去1ヶ月の間にボランティアをしたか」の3つの項目で世界各国の人助けレベルを図っている。昨年の2023年、日本は①の項目で最下位だった(因みに同項目の1位はジャマイカ)。

CAF, "World Giving Index 2023", page 9

昨年のレポートはこちらから読めるので、ご関心のある方は是非見ていただきたい。https://www.cafonline.org/docs/default-source/about-us-research/wgi_report_2023_final.pdf?sfvrsn=402a5447_2

この指標も個人的に面白いとは思うが、やはり人助け文化のレベルを表しているとは言い難い。

つまり、何が言いたいかというと、経済的には日本のGDPのような数値には至っていないかもしれないが、マラウィやケニアをはじめとしたアフリカの国々には、人助けの文化が人々の間に深く根付いていて、”発展した”国の日本人だからと言って、経済的指数だけを頼りにアフリカの人たちを決して馬鹿にしてはいけないし、直接のコミュニケーションを介すこともせずに、他国の人々へ偏見を持ってはいけない。

アフリカでの生活のおかげで、私も困ったときは以前より人に頼れるようになった。そして、困った人を見かけたら即座に手を差し伸べられるようになった。アフリカの温かい人々のおかげで、私も他者を少しでも助けられるようになった。