Mitsuki takayama

テーマ:オウムという体験。自己(Self)。象徴言語。好きなこと:C.G.ユングの著書…

Mitsuki takayama

テーマ:オウムという体験。自己(Self)。象徴言語。好きなこと:C.G.ユングの著書を読む。就寝前にラマナ・マハルシのTALKSを読む。最近は重量が軽い『真我』を愛読。焚火とソロキャンプ。元オウム真理教・アレフ出家修行者(1989ー2006)。元TD。

マガジン

  • 日本社会とオウム/カルト

    <更新中>オウムから見えた日本社会。「カルト」あるいは「破壊的カルト」について。写真はオウム真理教東京本部(青山道場)跡(2018年6月)。現在は駐車場になっている。

  • 修行・信仰・日常

    <更新中>2016年頃から修行、信仰、出家生活について書いたエッセイ。ときどきの話題などなど。

  • 富士へ

    霊峰・富士、その宗教性。弥勒信仰、山の宗教(修験道)、富士講。

  • 母たちの国へ(続・オウムとクンダリニー)

    <全30話+epilogue>「続・オウムとクンダリニー」。教団をやめてから「オウムとはなんだったのか」を追求する内界への旅と、オウムからの帰還。

  • この本読んでみた

    読んだ本の書評。

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はじめに

オウム真理教での体験を綴った「オウムとクンダリニー」を章ごとにマガジンにまとめています。 私は、平成元年(1989)にオウム真理教に出家してから、教団の出版活動を担う編集部に三年、その後、東京本部道場で三年ほど信徒指導を担当しました。 地下鉄サリン事件(1995)を経て、2006年末にオウム(アレフ)を脱会したのですが、教団がなぜあんな事件を起こしたのか理解に苦しみ、やめてからもずっと考えさせられてきました。そして、「オウム真理教とは何だったのか」ということを理解するため

    • 夢は教える

      先日、とても考えさせられる夢を見た。 夢といっても、普通の夢とは感じが違う。この現実と比べても、その空間は硬質で濃密でよりリアルだと感じられる。そんな夢だ。 **** 夕暮れどき、わたしは一軒のアパートの前にいる。 隣にはAさんがいる。 Aさんは「引っ越す」と言う。家の前に何か不思議な形のものがあるので、「これは何するの?」と聞くと「知らないんですか?」と。 それはコロナ禍で考案された「足洗い」らしい。 足洗いの少し高い位置には蛇口があった。その下の平たい丸い石

      • 富士へ⑩降りてくるもの

        日本で一番高い山 本州のほぼ中心にあって 遠く離れた場所からでも 円錐形の同じ姿を望むことのできる独立峰 莫大なエネルギーを秘めた活火山 日本人は古来から神聖な霊山として畏れ、崇めてきた―― ***** 富士山が日本人の精神性の象徴だとするなら、その祭神がかぐや姫からコノハナサクヤヒメに代わっていったことは、当時の日本人の意識が大きく変わったことをあらわしているのではないか・・・そんなことをしばらく考えていた。 昇るかぐや姫・降りるコノハナサクヤヒメ かぐや姫は天に

        • 富士へ⑨かぐや姫の物語

          東京の世田谷区松原にある扶桑教の富士塚を訪れたことから、私の「富士へ」の旅ははじまった。 密集した住宅地のなかにひっそりと立っていた小さな富士塚。その近くには、かつてオウム真理教の世田谷道場があった。そこは私のヨーガ修行のはじまりの地だった。それから無性に「富士山」を知りたくなって、何年ぶりかに中央高速を河口湖方面に向かった。 富士山の文化遺産を巡り、富士山と富士信仰に関する本を読み漁り、富士山を望むキャンプ場で焚火をしながらいろんなことを想った。そのなかのひとつに、私が

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        記事

          富士へ⑧柱

          前回の記事の最後に「修験道や富士講とオウム真理教に直接のつながりはないものの、修行法や宗教観にはたくさんの共通項があるようだ。そこには、富士山がもつ宗教性が関係しているのかもしれない」と書いた。 では、富士山の宗教性とはどういうものだろう。 『イメージシンボル事典』の「山」の項目には、次のようなことが書かれている。 ・天と地が触れあう場所としての世界軸。 ・「生命の木」the Tree of Life として。 ・天へ登るはしご。 ・大宇宙の脊柱。 ・啓示の下る場所。

          富士へ⑦山の宗教

          歴史や文化に無知な私は、「富士山は有名な観光地」くらいに思っていたのだが、当然のことながら、調べてみると富士山は古来から「聖なる山」「霊山」「修行の場所」であった。 人穴洞窟周辺は、江戸時代に興隆した宗教「富士講」の開祖・角行という行者が修行していたところだ。その角行の系譜の六世にあたる食行身禄は、富士山で断食死(入定)している。 富士講の流れをくむ現在の扶桑教や実行教なども、角行を開祖としている。ただし角行自身は教団などとは関係がなく、一人の行者だった。 人穴洞窟で修

          富士へ⑦山の宗教

          死にゆくこと

          今年の春頃だっただろうか、『無人島のふたり』(山本文緒)を読んだ。副題が「120日以上生きなくちゃ日記」とあるように、ある日突然がんと診断され、余命四か月と宣告された作家が残された日々を綴っていく。私は小説を読む習慣がないから、作家・山本文緒さんのことはこの本を読むまで知らなかった。 今日これを書いているのは、この本を紹介することが本題ではない。 私の友人もがん治療のあと再発し、今後は積極的な治療はしないという選択をして日々を過ごしている。かなり痩せて体力が落ちたと聞いた

          死にゆくこと

          富士へ ⑥人穴異界

          10年ほど前、作家のTさんと一緒に、オウム真理教富士山総本部道場の跡地に建てられた「盲導犬の里ハーネス」を見学したことがある。そのとき、車で数分離れたところにある人穴神社にも立ち寄った。 人穴神社には、江戸時代に興隆した富士講の開祖・角行が、籠って修行したといわれる溶岩洞窟がある。洞窟の入口近くに社があり、向かって左側には富士講ゆかりの古びた石塔がたくさん立ち並び、洞窟を中心に全体が人穴神社として祀られている。2013年富士山が世界文化遺産に登録されるにあたって、人穴もその

          富士へ ⑥人穴異界

          戦後日本の「魂の救済」

          知り合いから「Eテレの思考のオルタナティブ観た? オウム真理教のことがちょっと語られていたよ」と教えられたので、NHK+で観た。わずか30分の番組だったが、戦後の日本社会のなかで「オウム真理教とは何だったのか」ということの要点がわかる内容だった。 番組を観て、オウム真理教にいた当事者として改めて納得したこともあった。1994年から1995年の教団最末期、麻原教祖と教団内部には「アメリカ軍から毒ガス攻撃を受けている」という被害妄想が広がっていて、ほどなくして教団はサリン事件を

          戦後日本の「魂の救済」

          ★夢メモ★幼馴染の大原さんの家に長く預かってもらっていたものがあるという。それを引き取りに来てと言われる。預けたのは私ではなく兄らしい。行って見ると大原さんの庭にいくつかあった。その一つが大きな石で作られたガネーシャ像。「こんな大きなものを預かってもらっていたんだ…」呆然とする。

          ★夢メモ★幼馴染の大原さんの家に長く預かってもらっていたものがあるという。それを引き取りに来てと言われる。預けたのは私ではなく兄らしい。行って見ると大原さんの庭にいくつかあった。その一つが大きな石で作られたガネーシャ像。「こんな大きなものを預かってもらっていたんだ…」呆然とする。

          母たちの国へ エピローグ 帰還

          「母たちの国へ」30話の「黄金の木」を書いて「オウムとクンダリニーはこれで終わった…」と思っていた。C.G.ユングの夢とヴィジョンの分析を学んできた私にとって、黄金の木の夢は長い旅の着地点にふさわしいものに思えたからだ。 ところが、あの夢を見た三日後、私は再び印象的な夢を見た。 それは夢というよりヴィジョンのようなものだった。 ◇◇◇ その夢を見たのは朝方だった。 漆黒の闇の中に青い地球が浮かんでいる。 私の意識は月の側から地球を見ている。 そして、ゆっくりと目が覚め

          母たちの国へ エピローグ 帰還

          富士へ ⑤女神

          富士山麓ドライブ 最後に富士山麓に行ったのは十年以上も前だった。オウムの後継団体アレフをやめてから、教団施設があった場所を二、三回訪れただろうか。人穴の総本部道場跡地には盲導犬の施設ができている。上九一色村にあった「第一上九」と呼ばれた施設跡地は公園になって、そこには「慰霊碑」とだけ刻まれた小さな碑がある。見るものはそれくらいで、他のサティアン棟があった場所にはなにもない。オウムでの体験をひと通り書いて、私なりに区切りをつけてからは、富士へ行きたいと思うこともなくなった。

          富士へ ⑤女神

          富士へ ④みろく物語

          今から三百年ほど前、「みろく」を自称する修行者がいた。彼は富士山とその神々を信仰する富士行者だった。名を食行身禄(じきぎょう・みろく)という。 ◇◇◇ 身禄は、寛文11年(1671)に伊勢国の農家小林家の三男として生まれ、13歳のとき親類を頼って江戸に出た。 17歳のとき月行という名の行者に出会う。月行は、富士山麓の人穴洞窟で修行した角行という行者の流れをくむ富士行者だった。月行に入門した身禄は、断食行を意味する「食行」という行者名を授けられる。 身禄の修行は、毎日、

          富士へ ④みろく物語

          富士へ ③マイトレーヤ

          最初の宣言 富士の道場用地取得と道場建設の経緯について、よく知っていると思われる人がもう一人いた。オウムの建築班のリーダーだった故・早川紀代秀さんだ。なにか書き残していないかと思って彼の著書『私にとってオウムとは何だったのか』を開いてみた。 そして、この文章の後に続く、次の記述が目にとまった。 注目したのは「この時、グル麻原は、『自分は将来マイトレーヤ如来となる魂である』ことを公言しました」という箇所だった。私は知らなかったが、麻原教祖は富士の道場用地でそう公言したとい

          富士へ ③マイトレーヤ

          富士へ ②聖地人穴

          オウムと富士山 宗教学者の島田裕巳さんの著書『日本人はなぜ富士山を求めるのか』に、こんな記述がある。 島田さんが言うとおり、オウム真理教には富士山に対する信仰はなかった。私たちは富士山麓で修行をしていたが、富士山を遥拝したことも登拝したこともない。ただし、オウムが富士山麓に総本部道場を建立したのは、「広い土地が入手しやすかったから」という理由ではなかった。 富士山麓を選んだ理由 1986年11月に三原山が噴火すると、麻原教祖は「次は富士山が噴火するだろう。シヴァ神の示

          富士へ ②聖地人穴

          富士へ ①松原

          松原の富士塚 2023年1月3日。私は世田谷区松原にある「扶桑教」本部の敷地内にある富士塚の前にいた。 扶桑教は、江戸中期に爆発的に広がった「富士講」の流れをくむ神道系の教団だ。「講」とは結社のことで、富士講は「富士の信仰結社」英語で「Cult of Fuji」という。正月早々私がここを訪れたのは、そこに「富士塚」があると知って一度実物を見てみたかったからだ。 偶然だが世田谷区松原はオウム真理教ゆかりの地でもある。ずいぶん昔、私は松原にあった東京本部、通称世田谷道場で入

          富士へ ①松原