インストにおけるメロディ楽器の選定

※今回はいつも以上にふわっとした内容です。
 オカルト話だと思って適当にお読みください。

歌モノはそのアーティストの音域によって
メロディの最低音と最高音が決定されます。
最高音は表情が出やすいので、サビで用いて
インパクトを強くするのが定石ですね。
これは基本的にインストでも同じで、
主旋律を担当する楽器の音域に合わせて曲を書きます。

一方、歌とインストで明確に違う部分もあります。
それは“音色としてのエネルギー量”。
人間の声って非常にパワーがあるんですよ。
なぜなら直接 感情を乗せられる音だから。
※もちろん楽器の演奏でも感情は込められますが
 それらは物理的に間接表現になる、という意味です。 

インストだと、例えば5分尺の曲があったとして
全編 同じ楽器だけがメロディを担当することって
あまりないのではないかと思います。
そういうコンセプトの曲なら良いんですが、
特に理由もなくメロディ楽器が単体になっていると
シンプルに飽きやすい編曲になる嫌いがある。
ゆえに、普通はパートごとに音色を使い分けるものです。

ところが、歌モノは一人で最後まで歌うのが普通ですし
聴いている側も途中で「別の声が聴きたい」とは
まあ、なりませんよね?(なる人もいるかもしれないけど)
つまりボーカルは音色として見た時に、
単体でも通用するほどのエネルギー量があるんです。
AhとかOhとかだけのコーラスにですら
他の追随を許さない、絶対的な響きが含まれている。
あまつさえ歌詞(言霊)があるとより強力になります。

さて、上記を前提に何が言いたいかと申しますと
インストはメロディ楽器の選定にかかる労力が
歌モノに比べて数倍以上かかるという事実です。

編曲領域の話になってまいりますが、
リードを張れるような音域と表情を持っている楽器って
そもそも絶対数が少なくて、しかも毎回それらを
ローテーションしていると曲のバリエーションが
マンネリ化してくるんですよ。

例えばAメロ、Bメロ、サビで3つの楽器を使用。
これを補強するため、ユニゾンでさらに3つを使用した場合。
1つの楽曲で6つの音色が要求されることになります。
※前述の通り、楽器の音色はボーカルと比べると
 エネルギー量が少ないのでユニゾンさせるのが基本です。

これが10曲なら60種ですよ。
つまり、多少は被っていいにせよ
それぞれ違う雰囲気のメロディにしようと思ったら
アルバムくらいの曲数をつくり終わる頃には
「もう曲の制作はしばらくいいや……」と
いつの間にか疲弊してしまっているわけです(n敗)

このような問題を回避するのに役立つのが、
『音源のこと①』で紹介したシンセ音源の活用です。

生音系に関しては如何せん数に限りがありますので
こちらは開き直って“絶対に使う”と覚悟を決めましょう。
その上で、自分自身でカスタマイズした
世界に一つしかないシンセ音を取り入れるのです。
特に生音とのユニゾンでそれを使うと、不思議なことに
使い古したはずの音色たちが別の一面を見せてくれるので
「お、ありきたりな音じゃなくなった!」と納得できます。

また、覚悟を決めて使う生音のほうですが
こちらの選定はシーンに合わせて、セオリー準拠で良いです。
その代わり、ボーカルと同じくらい表情をつけてあげます。
奏法や拍、ベロシティだけでなく、ピッチ(しゃくり)、
ビブリ(モジュレーション)、アタック&リリースなど。
かつ、ミックス時はめちゃくちゃ気合を入れて
ボリュームのオートメーションを丁寧に書きましょう。
ここさえサボらなければ、作り手も受け手も
「つまらない音だな」と感じるニュアンスが激減します。

上記のような“急がば回れ”の工夫を凝らすことで、
私はインスト作りの楽しさを思い出すことができました。
それはきっと、頑張った分だけ音にエネルギーが宿り、
歌モノに匹敵するような感情を表現できるからなのかな、と。

なら最初から歌モノやればいいじゃん!?という声が
聞こえてくるようですが、でも歯車が噛み合ったインストって
そこにしかない、唯一無二の感動を得られるんですよね。
私はその魅力に取り憑かれている人間なので、
今後もたぶんインストメインなのは変わらないと思います。

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