リズムへのアプローチ①

すごく基本的なところから始めますと
リズム楽器のなかにも音程が存在します。
ティンパニなんかわかりやすいですね。
ちゃんとチューニングしてあげないと
全体の響きが台無しになってしまうため
ここは最初に考慮すべき点でしょう。

まあドラム音源なんかはプリセットで使う人が多いでしょうし
直で使用しても実際問題そこまで悪影響はないのですが
それでもやっぱり、あらかじめベストの音程を探っておく方が
最終的な仕上がりの説得力が増すと思います。

さて、音程をクリアしましたら次は帯域別のTipsです。
まずバスドラムを筆頭とする低い周波数の楽器。
こちらはなるべくベースとの協和性を意識すると
ノリが良くなり、引き締まったサウンドになります。
ただし必要以上に意識しすぎてしまうと
根本的なグルーブ感が失われますので禁物ですね。

ちなみに、100kHz以下の完全カットは個人的に非推奨。
生物学的に耳で拾えない帯域といえばそうなんですが
上の帯域と有機的に結びついている成分がありますし
他にマスキングする楽器も少ないわけですから
なるべく自然なイコライジングで収録した方が◎です。

中間の周波数――スネアやタムなどにつきましては
おそらく多くのリスナーが無意識に“リズム”の認識、
つまり拍子やテンポの判断材料にしていると思います。
もちろんバスドラムがノリの原点ではあるんですけど
それを腑に落とすために必要不可欠といいましょうか
表現がたいへん難しいのですが、この周波数系は
“あって当たり前”レベルの重要な成分を持ちながらにして
前面に出すぎてはいけない、かつ存在感は常時
キープしてあげないといけない。そんな繊細なパートです。

高い周波数の楽器、つまり金物などは、
下の帯域が醸し出したグルーブ感を安定させ、
リズムを確固たるものにする統率力があります。
同時に聴き心地のよさ、華やかさを演出する力があり
やはり音楽において欠かせない要素といえます。
昨今流行っているAMSRとかも、心地よいと感じる成分は
この帯域に多く含まれているんじゃないでしょうか。

というわけで、ざっと三つに分けて話してきましたが
上記をすべて踏まえた上で、リズムを構築していく際
考えておいたほうが良い情報を改めて挙げましょう。

最重要事項は、中間の周波数を打つ際
メロディラインに寄り添うこと。
特にフィルはこれを意識することで、
リズムが声部と一体化している感じが滲み出て
楽曲のまとまり、オリジナリティを補強できます。
例えば、最初にメロディと親和するスネアをつくる。
それから外堀(他の帯域)を埋めていく。
この手順で煮詰めると、期待する結果が得られやすいです。

次に、低帯域はセオリーを厳守しすぎないこと。
編曲の方向性にもよりますが、第一段階として
まず単一トラックで一番しっくりくる場所に配置。
第二段階として、その上にサブ(≒ツイン・ドラム)を配置。
こうすることで、「中間の周波数以上のパートとの
兼ね合いを考えると不自然になってしまう……でも
本当はここでこの音が鳴っていて欲しいんだ」的な
ジレンマが発生した際、解決の糸口が見えてくるかもしれません。

最後に、高域はなるべく抑揚をつけること。
常に鳴っているべき音だからこそ
ワンパターンで機械的な譜面にしてしまうと
悪い意味でオーソドックスな役割に成り下がります。
シンバルみたいな“決め”についてはいいんですが
ハイハットとかは強弱と開閉、ライドもまじえて
表情をつけてあげるのがベターです。
ただそういう役割はワントラック(チャンネル)だと不十分。
もう1パターン別トラックでシェイカーなどを足してあげたり
もしくはトレモロ、ディレイとかのエフェクトをかけたりして
左右のパンを埋めるように編曲してゆくと
サウンド全体が清々しい雰囲気になっていきます。
畑が違いますが、人物のイラストを描くとき
瞳にハイライトを入れる感覚と似ているかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?