射光
大きな交差点のど真ん中に吹っ飛ばされた男の体は無惨な姿。
元々東西には横断歩道がなく全ての信号を把握しタイミングを見て渡るのが常であった。
大型のトラックに轢かれ即死。
それぞれの車線の先頭車両から降りてくる人、
歩道橋から見下ろす野次馬、
中でも正義感の強い男数人が無惨な体の近くに寄って集る。
面白半分で寄って来た大学生はその見るも無惨な死体に気分を悪くし嘔吐する。
それには誰も手を貸す様子はない。
南北の横断歩道を渡る小学生の女の子が死体を指差し
「光きれい。」
と言ったのを母親はすかさず制し、娘の顔を覆いながら小走りで離れていった。
周囲がざわつき始めたのは死体と空との間に一直線に伸びる凄まじい光線、
それも不自然な角度の光線に気味悪がったり呆気に取られたり。
ただじっと見つめている。
死体は首巻きそっくりの、鋭い目をした狸であった。
化かされた、馬鹿と阿呆か狸也。
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