ライト兄弟へ


小さな鳥が下手な調子でも大声で、しかも一定のリズムで鳴いている様子は
実に耳障りだなぁ
と思いながら、公園のベンチに寝転んで、片手にはちくわを持ちながら木漏れ日から差す光に薄目になっている僕だ。

この木から大きさは関係なく、毛虫が落ちてきて顔に載ったら嫌だなぁとも思っている。
このベンチの裏側はどれくらい汚れているのか確認しておけば良かったなぁ或いはすでに、団子虫の巣窟になってやしないだろうかとも。

ちくわは、英語でtube-shaped fish paste cakeこのcakeであることを知ってから、近頃食べている。

クマンバチが羽に空気を絡ませて空中で滞留している様子は飛んでいるというよりは浮いている、その小さくても頑張っている姿はとても可愛い。

実に面白い航空力学の話は要約すると、飛行機と昆虫とでは

" とぶ "

という動詞は同音異義語であるということらしい。

日本に来たらばライト兄弟も冗談だろうと笑ってくれるか


先日、夕飯を共にしていた友達は僕に言った。

「ゴキブリが人間と同じサイズだったら、その走る速度は新幹線と同じらしい。だからあの足にある、無数のブレードもいよいよ危険。」

と。この公園にはベンチが二つ並んでいる。
一つは僕が寝転んでいるベンチ。
昨晩の大雨でまだ少し湿り気があったから避けたもう一つのベンチには、
いつの間に来ていたのやらこの近辺でよく見かける女装した中年男が、
太陽が昇る方向を見ながら座っている。
長いさくら色のスカートが風で揺れている。

そのぼんやりした視界に、
移動してきたクマンバチが浮いている。
奥に見えるガードレールには頻繁に上がり下がりする温度差が連れてきたダウンジャケットが引っ掛かっている。
渦の使い手、クマンバチ。


さっきの場所より可愛く見えた、



不思議な航空力学上の話をしよう哉。

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