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おいこら、金返せ!

2016年バックパッカー旅。
最長5カ月は帰国しない予定だったが、インド・ブッダガヤでの出来事により悪い予感がし、わずか2か月半で一時帰国した。

あの時、インドへ行く目的であった「タージ・マハル」「ガンジス川」はクリアしていたのだが、出会う旅人やガイドブックを見ていたら、他にも見たいもの、したいことが増えてしまった。

そのため私は、スリランカでインドビザを取得し戻ってきたのである。

始めの地は、南インド・マドゥライ。ここを訪れる旅人は、これからスリランカへ行く人か、スリランカからインド入りするという人が多い。したがって、旅人はすごく少ない。

久しぶりのインドに期待の反面、不安は大きい。以前インド入りした時は、心強い日本人の相棒がいたが、今回は1人だ。

私はマドゥライに着いたら、インドSIMを購入することを決めていた。理由の1つは、私のスマホはGPS機能が弱いがSIMを入れたら正常に動くため。2つ目は、南インドはWi-Fiがある宿が少ないため。

空港で購入しようと思ったが、到着したのは夕方だったので、暗くなる前に中心地へ行って宿を確保したかったため空港を後にした。

空港から中心部へはバスで行くつもりだった。空港の外に出ると「タクシー!」という声が聞こえて来た。私は「ノー、バスで行く」と答える。すると「バス停はこっちだー」という声が聞こえる。こういうとき、インド人のタクシーのいうことはあまり信用できないので、無視して信用していない自分のスマホのGPSを参考に、空港の駐車場をウロウロする。

すると、チャイを飲んでいるインド人が集まっていた。(空港でもチャイか!さすがインドだな)と思いつつ、「バスはどこですか?」と聞くと、英語が話せないご婦人が制服を着たインド人に教えてあげなさいと言ってくれた。

制服を着たインド人は「あっちだけど、ここから結構距離があるよ。バイクで連れてってあげるよ」と言った。私が疑いを隠しきれずにいると「私たちは空港の駐車場のスタッフだから安心しなさい」と言われた。「フリー?(ただで?)」と聞くと、「もちろんフリーだ!」と答えた。ということで、お言葉に甘えて、彼らを信じてバイクに乗り込んでしまった。

しばらくすると、バイクはバス停に停まった。「もう少ししたらバスが来るから」と言って、バイクの彼は颯爽と去って行った。

(ここは本当にインドなのだろうか)と疑ったが、ここはインド。

南インドを旅した人はよく言う、"北インドと南インドのインド人は全く違う"と。今のような場合、北インドだったら100%チップを要求されるだろう。

バス停に着くと、学校帰りの小学生や中学生らしき子がたくさんいた。一人の子に「アラパラヤムに行きたい」というと、"話しかけられた!どうしよう、キャッ!!"みたいな反応をされた。

南インドを旅した人はよく言う、"北インドと南インドのインド人は全く違う"と。南インドの人は擦れていないと。

バスが来て、すし詰め状態になりながらも、無事にアラパラヤム・バスパークという名の中心地のバスターミナルに到着。

バスターミナルに降り立った途端、何人かのインド人の少年に握手を求められた。キャンプ地に降り立ったプロ野球選手のような気分だ。

そして、スマホでGPSの状況を確認したら、全くもって動いていなかった。これはこの先まずいなと、SIMを買いに行く。

その辺にあるSIM屋で「SIMを買いたい」というと、「インド人の友達はいるか?」と聞かれる。「バラナシにならいる」と答える。「違う。タミルナードゥ(この州)にはいるか」と聞かれ「いない」と答える。

その時思いだしたのだが、インドのSIMは面倒臭いことにインド人の友人がいないと買えないという話がある。首都のデリーやムンバイの空港だと、比較的その辺は免除されスムーズに買えるらしいが、地方空港やその他の商店だとやはり紹介制らしい。

ということで、SIM屋は「分かった。じゃあ俺が友達ということにしてやる」といい、「いくら?」と聞くと「SIM本体とデータ5GBを合わせて1500ルピー」と言う。「1500ルピー!?高っ」と思いつつ、早く欲しかった私は購入してしまった。そして明日「アクティベートするから11時にここへ来て。その時にパスポートのコピーを持ってくるように」と言われた。

目指していた安宿に到着する。宿のマネージャーは、話しやすそうな人だったので聞いてみた「インドのSIMっていくらですか?」と聞くと、私が購入した値段の半分だった…。自分のリサーチ不足と冷静でない判断で購入した訳だが、ダメ元でSIM屋に抗議に行くことにした。

「ちょっとちょっと、宿のマネージャーに聞いたら半分の値段だったよ。お金返してよ」。すると「まぁまぁ落ち着けよ。俺は嘘をついていない」。そしてそばにいたインド人が言う「そうだ。彼は嘘をついていない。これとこれを足したら1500ルピーだ」だけど、彼が指差す"これ"は、あきらかにSIMの値段ではない。仕方ないと思って、「明日"必ず"使えるようにしてよ」と言い放って帰った。

翌日、朝一でティルパランクンドラムという郊外のお寺へ行き、約束の11時にSIM屋へ行く。SIM屋は言う「今から祈りの時間だ。14時にしてくれ」と。(お前が指定したんだろうが!)と思いつつ、祈りの時間なら仕方ないと引き下がる。

ミーナークシー・アンマン寺院を観光した後、14時に再びSIM屋へ行く。店は開いていない。15時に行ったら、「17時にならないとできない」という。その後「今日の夜には使えるようになる。もし使えなかったらチャイをおごる」と言われ、それを信じて宿に帰る。

夜になっても、日が変わっても「使えないじゃないか!」。

翌日、頭から蒸気を出して、SIM屋へ行く。
「まだ繋がらないんだけど。とりあえずチャイおごって」とチャイを飲む。
「使えない。お金返して」と言うと、スマホに詳しそうな人を呼んできて、その人が色々操作する。私のSIMを自分のスマホに入れ替えて「SIMには問題ない」という。「じゃあ使えるようにして」と言う。「はい、セッティングした。100ルピーよこせ」。スマホを使ってみる。「繋がっていないから払えない。繋がるまで帰らない」と伝える、粘る。SIM屋は言う「もう、お願いだから帰ってくれ」。私自身も、もう自分のスマホのセッティングに問題があることは分かってきていたので、仕方なく引き下がることにした。もちろんセッティング代という名目の100ルピーは払わない。

それにしても、どうすれば使えるんだろう。1500ルピー(2500円弱)も払って、無駄にすることなんてできない。信頼できそうな宿のオーナーに相談してみた。代わりに電話で問い合わせてもらっても解決せず、違うSIM屋を紹介してもらう。「このSIMはどこで買ったんだ?」と聞かれ、この辺で買ったとは言えず「空港で買った」と嘘をつく。「Vodafoneのショールームがバスターミナルの近くにあるから、そこへ行きなさい」というアドバイスをもらう。

Vodafoneのショールームへ行く。
スタッフの女性に「お宅のSIM使えないからセッティングしてください」というと、私のスマホを操作しだす。「新しいSIM買ったら?!」と言われる。「はっ?!私が購入したSIMはどうなるの?まだ1回もつかっていないのに。あなたの会社のSIMなんだから使えるようにしてよ」というと、困った様子で「じゃあ駅の近くのショールームへ行って」と言われる。「今晩もう別の街へ出発するから時間がないの」といい、(もう諦めるか)と思って店を出ようとすると、「ちょっと待って」と言われる。さっきまでいなかった男性スタッフが登場し、私のスマホを操作する。「君のスマホ、相当重いね」と言われ、通知音がとめどなく響き渡る。「使えるようになったよ、いい旅を!」と言われてホッとした。「ありがとう!私は旅を楽しみます、VodafoneのSIMと一緒にね」と言って、笑顔でお別れした。もちろんセッティング代などは要求されなかった。ちなみにこのVodafoneのショールームは、私がSIMを購入したSIM屋の目と鼻の先。最初からここで買いたかった!

人に騙されるとき、私はたいてい「焦っている」。

冷静に考えれば、インドの物価からして、"1500ルピー(2500円弱)"という金額は一般人には高すぎる。もっと冷静になれば、私の日本のスマホ代は、1ヶ月2000円前後、日本より高いというあり様。

インド旅の再開早々、騙されたのがこのマドゥライで良かったと思う。これからのインド旅の良い教訓となった。

私が出会ったSIM屋以外は、本当にいい人がたくさんの街「マドゥライ」でした。
(↓親子かと思ったら兄弟。彼らはいい人です。)

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【SIMが使えなかった原因】
"スマホ(Android)のAPN設定がされていなかったせいだと思うよ"と、後に出会った旅人さんに教えてもらいました。→参考サイト

※2016年8月18日~20日 インド・マドゥライ
「Over30女子バックパックでアジア周遊」

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