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私的オススメ映画『ひつじのショーンバックトゥザホーム』


突然ですが、「オススメの映画は?」と聞かれたときに何て答えますか?

これは難しい質問ですよね。

だって相手の嗜好やセンスが分からないと、「オススメ」なんて出来ないのですから。


しかし、私はこの映画『ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』は本当に誰にでも自信を持ってオススメ出来る映画だと思っています。

老若男女、芸術的センス、文化・国・言語……、そんなの関係なしに誰にでもオススメ出来る映画です。

間違いなく、素晴らしい作品です。



『ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』鑑賞のススメ


『ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム』はイギリスのアードマン・アニメーションズとフランスのスタジオカナルが製作を手掛けたクレイアニメーション映画です。


冒頭に少し述べましたが、この作品の凄いところは「誰にでもオススメ出来る」という点なんです。

もし、私が「オススメの映画は?」と聞かれた場合、迷わずにこの映画を答えます。

相手が誰であっても、です。


例えば、相手が目の肥えたメンドクサイ映画好きであっても、この映画の芸術性は一定の評価をせねばいけないはずです。

また、映画をあまり見ない、座ってられないような人でも時間が短い(85分)ので気軽に最後まで見れます。

元々子供向けアニメなので、小さい子に見せても全く問題ありません。しかも、親も楽しめます。

カップルで見ても喧嘩になることはないです。ただ内容が素晴らしいので、ムードが作れないかもしれないのは弱点かも知れません。


これって、凄いことでしょ?誰に対しても80点以上が出せるんですよ?

だからこそ、私はオススメしてるんです。

ただ、そう……1つだけ嘘つきました。


唯一勧めることが出来ない人がいて、「エログロ・血みどろスプラッター・バイオレンス」系しか見ない人は退屈かもしれないです。

まあ、そういう人もこの映画を見ることで鬱屈した心を少しは開放できるかもしれません。(※先天的な嗜好ならばどうしようもできませんが)

心をクリアにしてくれます。



この映画のオススメポイント


この映画のオススメポイントを一言で表すならば

「誰でも・どこからでも話が分かるシンプルさ」だと言えます。

もし、どうしても気になる人がいればYoutubeの予告編を見て下さい。話の筋は予告編で分かってしまいます。


そしてその域に作品が達するには以下に挙げる凄いことが何重にも起きているのです。

①ストーリ展開が王道で、その世界観の中で無理がない

②キャラクターがすぐに区別できる

③映像だけで話が分かる


①について、これは海外の大衆向け作品全般に言えることですが、ストーリー展開(流れ)が破綻することが本当に少ないんですよね。

その世界観の制約の中で許されている表現を使って、大筋の展開と伏線の回収を違和感なしに行うという話作りの基礎が徹底されていると思います。

(※ここは「創作」全般のアカデミック化が海外の方が進んでいることがあると思いますが。)


だから、いい意味で「予想を裏切らない」

ですので、どこから見始めてもその大筋を追えるのです。

これは中々難しく、これだけでもエンターテイメント作品として合格点が出ます。


②について、キャラクターがすぐに区別出来る=全員に個性があるということです。

海外の映画を見てるときの「これ誰だ?」や、日本の映画を見てるときの「君何してるの?」みたいなことがありません。

これは、キャラクターの造形はもちろん、立ち位置(役回り)や行動がキチンと過不足なく差別化されているということです。


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(この画像及びサムネは映画公式サイトから使用)


これの何が素晴らしいかと申しますと、

「誰が何をしているか・考えているか」ということがすぐに分かる

ことなんですね。

ひいては話が分かりやすくなりますし、作る方も話が作りやすく、意図が伝えやすいので、観る側に面白さが伝わってきやすいのです。


③について、これが一番この映画の凄い点です。この映画、音声と字幕が無くても話が分かるんです。

なぜなら、そもそも言葉での会話がないから


凄くないですか?

音声は相槌のような声や、動物の鳴き声がほとんどで、後は画面を見ているだけで何をしているかが分かるのです。


画での表現の一種の極致と言いますか、情報はそういう風に鑑賞者に伝えることが出来るのかと感動せざるをえません。

この映画は本当にシンプルな故、中々到達出来ないレベルにまで作品性が研ぎ澄まされているのです。

舐めてかかると、バッサリと斬られてしまいます。



イギリスの宮崎駿「ニック・パーク」


一つ補足すると、この映画は単体の作品というわけではなく、『ひつじのショーン』というショートアニメの映画作品だということです。

さらに言うと、この『ひつじのショーン』自体も『ウォレスとグルミット』というアニメーション作品のスピンオフ的な立場ですので、元の元をたどれば『ウォレスとグルミット』が原点ということになります。


では、この『ウォレスとグルミット』がどんな作品なのかと申しますと、wikipediaを見て頂いても構わないのですが、

①イギリスの

②「ニック・パーク」が卒業制作で手掛けて

③熱狂的なファンを世界中で獲得した

④クレイアニメーション作品

なんです。


これについて簡潔にその凄さを例えるならば

「ニック・パーク」はイギリスの「宮崎駿」

なんだと言っておきましょう。


実際、この二人は対談を行っていて、親交も深いようです。ジブリとアードマンスタジオも交流が深いです。

(※この対談の内容は他のメディアを通して断片的には知っているのですが、私は元の内容は知らないです。)


ですから、本作『ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム』も直接ニック・パークが製作に関わっていないものの、ニック・パークの血脈を引いていて、

宮崎駿作品のように高い芸術性とエンターテイメント性を両立しているんだということです。


それでは、なぜ私がその『ウォレスとグルミット』ではなく、『ひつじのショーン』をオススメしたのかということですが、

これについて答えると、私は主軸となっているキャラクターの関係性、ひいてはストーリー展開の違いから『ひつじのショーン』を勧めました。


(※例えるならば、なぜ『もののけ姫』や『ナウシカ』を最初にオススメせずに、『思い出のマーニー』をオススメするんだい?と思われているかもしれない。)


『ウォレスとグルミット』はタイトルの通りの関係性で、博士(ウォレス)と犬(グルミット)が相棒で、二人で何か目的を達成するという話作りになります。

一方で『ひつじのショーン』はもう少しキャラの関係性が遠くて、牧場主と羊と牧羊犬という風に少しビジネス的な関係が入ってきます。

彼らはあまり普段べったりと仲良くしているものでないのですが、長編の映画版が制作されるにあたって珍しく「家族愛」みたいな繋がりをテーマに持ってきたので、そのギャップが個人的に作品全体としての完成度を高めているなと思ったからです。


そしてそれはそのまま作品に表れていて、「ビジネス的な関係に身を置き過ぎると本当の家族愛を見失ってしまう」というテーマは「バック・トゥ・ザ・ホーム」というタイトルとエンディングに表現されます。

(これは邦訳が素晴らしい)


エンターテイメント作品としてトップクラスにまとまっているから、見て下さいということです。

AmazonPrimeは見れるっぽいです。

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