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Study86_8.旨味を最大限に引き出した「ひらきなめこ」の唐揚げをつくるには(生と冷凍どっちがいい?編)

この記事は、《自然にやさしく 環境負荷の小さい農業の普及を目指し、野菜セットの定期宅配をはじめとした様々な取り組みを行う会社「坂ノ途中」》が取り扱う野菜から1つをピックアップし「一番おいしい食べ方」を探究していく記事です。

これまでに行った「ひらきなめこ」の実験記事はこちらから
Study86_1.下調べ編
Study86_2.下処理・洗い方のコツはある?編
Study86_3.下処理・洗い方のコツはある?編2
Study86_4.加熱速度でおいしさは変わる?編
Study86_5.揚げる時の衣は何つける?編
Study86_6.揚げる時の衣は何つける?編2
Study86_7.揚げる時の衣は何つける?編3

前回までは、ひらきなめこに合う「衣」の種類を実験してきました*「米粉」「片栗粉」「大豆粉と米粉のブレンド」が良さそうだぞ、というところまで選択肢が絞れてきました。今回は、ひらきなめこを「生」のまま調理した方がいいか、一旦「冷凍」した方がいいか?を確認していきます。Study86_4の実験で煮込みの場合は「冷凍」の方が圧倒的に旨味が増すという結果が出ているのですが、これが揚げた時も成り立つのかを試していきます。用意した条件はこちら。

A、冷凍 /大豆粉・米粉
B、生  /大豆粉・米粉

「大豆粉・米粉」のブレンドはこれまで通りひらきなめこを水に一瞬じゃぶんと浸けてすくに引き上げ、水切りはほぼせずに粉をまぶします。さらに指先につけた水をかけながら衣に凹凸を作っていきます。

左からA、B
A、冷凍 /豆乳粉・米粉
B、生  /豆乳粉・米粉

油の温度は水で溶いた衣が3秒ほどで上がってくる程度(170〜180℃)で、2分(前回と同じ)揚げます。揚げたものがこちら。

左からA、B

揚げてしまうと、旨味の強さの違いは分からなくなる

どちらも食感のある衣がおいしかったのですが、正直旨味の強さの違いは感じられませんでした。油が舌に膜を張ってしまうので、旨味が感じにくくなってしまっている可能性があります。また、ひらきなめこ自体のジュージーさももう少し感じられたらいいな、という想いが残ります。

カサが開いてしまった。
丸まったままの方が食感がよくておいしい

また、もう一つ気になることが。ひらきなめこをひっくり返すとよく分かるのですが、「生」の方はカサに丸みがなく横に開いてしまいました。

左からA、B

横から覗くとよく分かります。

横から見たA カサが元々の形を保っています
横から見たB カサが開いてしまっています

開いてしまったからといって味が変わるわけではないのですが、食感が変わってきます。サクッとした食感のものは形に立体感がある方がおいしく感じられるので、カサが元の形状を保って丸まっている方が食感がよいのです。そのせいで、今回は「冷凍」の方がおいしく感じました。繰り返しますが、味の違いまでは感じられません。

カサが開いた原因についてですが、実はこのとき、カサが開いたBを揚げるとき少し温度が高くなってしまったかなという心配事がありました。温度の高さがカサの開きの原因の一つかもしれないということを頭において、今度は衣を「片栗粉」に変えて再度比較しました。

C、冷凍 /片栗粉
D、生  /片栗粉

左からC、D

片栗粉の場合は、ひらきなめこを水につけずに粉を絡め、しっかりと余計な粉を落とします。

C、冷凍 /片栗粉
D、生  /片栗粉

揚げ方は同じく170〜180℃2分です。

左からC、D
C、冷凍 /片栗粉
D、生  /片栗粉

冷凍から片栗粉をまぶして揚げると、衣が泡状に固まりやすい?

C、冷凍 /片栗粉

この時初めて衣の様子が違うことに気づきました。「冷凍」は衣が泡状になって固まっています。一方、「生」は粉っぽい見た目のままです。

D、生  /片栗粉

この現象は、2回目の「揚げ実験」の際にも起きていました。

2回目の揚げ実験で「片栗粉」をまぶしたひらきなめこ

このときもひらきなめこは「冷凍」の状態です。(このときは完全に片栗粉をまぶしすぎている状態なのでご了承ください)

前回の揚げ実験で「片栗粉」をまぶしたひらきなめこ

前回の結果を見ても、やはり衣に泡状の部分ができていました。薄づけであれば食感が悪くなることはないのですが、一つ興味深い発見です。

今度は「冷凍」のカサが少し開いた。

左からC、D
D、生  /片栗粉

今度はしっかりと温度も合わせられたと思ったのですが、今度は「冷凍」のカサが少し開いてしまいました。カサの開きの原因は「冷凍or生」とは関係がなさそうです。

「冷凍」は油はねしやすい

この辺で気づいたのは、「冷凍」は油はねしやすい、ということです。これまでの揚げ実験ではずっと「冷凍」を使用してきたのですが、20秒ほどでバチバチと油はねがひどくなるのでフタをする必要がありました。ところが、「生」はそこまで油はねが激しくありません。揚げ物をする上で危険な調理はお勧めできないので、味の違いがここまで出ないとなると「生」を推奨した方がいいのでは?という気持ちになってきました。

味については、「片栗粉」の場合も旨味の違いは感じられませんでした。

続いて、カサの開きの原因が分からないので揚げる温度180-190℃に上げることにしました。衣はA・Bと同じ条件です。

左からE、F

E、冷凍 /大豆粉・米粉 高温
F、生  /大豆粉・米粉 高温

揚げたものがこちらです。

左からE、F

明らかにEの「冷凍」を揚げすぎました。これまで通り2分待ったところ揚げすぎてしまったので、「生」は2分を待たずに引き上げています。

E、冷凍 /大豆粉・米粉 高温
F、生  /大豆粉・米粉 高温

カサの開きは温度とも関係ない

温度を上げたものの、カサは開きませんでした。カサの開きの原因は「高温で揚げたこと」ではなさそうです。「冷凍or生」でも「温度」でもないとすると衣のつけ具合でしょうか。もう少し根拠が必要です。

揚げ方は、「高温」「短時間」がよさそう

中身のジューシーさには大きな違いがありました。揚げすぎた「冷凍」は衣の食感はいいのですが水分が抜けすぎてひらきなめこ自体の食感がカスカスです。一方、早めに引き上げた「生」は衣の食感もよくジューシーさも残っていました。これまで170-180℃2分で上げ続けてきたのですが、高温短時間で揚げることで水分を最大限残しつつ、カリッとした衣を作ることができる可能性が見えてきました。

今回の気づきと次回に向けて

1、生の方が油はねがしない
2、生と冷凍で、感じる旨味の差は分からない
3、揚げ方は、高温短時間が良さそう

レシピ確定に向けて大事にポイントが見えてきました。次回はいよいよ揚げ方の比較をし、レシピを仕上げていきます。次回もお楽しみに*

「ひらきなめこ」について詳しく知りたい、購入したい、という方は坂ノ途中のHPからどうぞ*


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