Study86_1.旨味を最大限に引き出した「ひらきなめこ」の唐揚げをつくるには?(下調べ編)
今回のテーマは「ひらきなめこ」です。大きくカサが開いているから「ひらきなめこ」。よく100円ほどで売っているなめこと比べると、こんなにサイズが違います。
今回はこの大きなひらきなめこを「おいしい唐揚げにする!」ことが最終目標です。
サイズが大きいので食感も違ってきそうですが、実際のところ何か違うのでしょうか?今日も実験に取り掛かる前に、元々紹介されている情報をもとに個性を掘り下げていきましょう。
ひらきなめこの特徴って?
まずは坂ノ途中さんでも言われている「ひらきなめこ」の特徴を、栽培方法とひらきなめこ自体の特徴に分けて整理していきましょう。
ひらきなめこは、ゆっくり大きく育ったなめこ
ひらきなめこの栽培方法の特徴は、一度栽培に使われた「菌床」を再利用して育っているということ。菌床の中の栄養は減っているので生えるなめこの量は減り、育つ速度も遅くなる。でも逆に言うと、大きく育てられる空間の余裕もあるし、じっくり時間をかけて育てられるということでもある。それがどんなふうにおいしさに繋がっているのか?が気になるところです。
浮かんできた疑問を整理する
じっくりゆっくりなめこ自身の力で育ってきて、旨味があっておいしいよ〜*というのは分かってきたのですが、疑問も残ります。
この辺の疑問を念頭に、調べを進めていきます。
まずは文献調査から
「ジャンボなめこ」として紹介された大きななめこの記述を発見。風味が強く、滑りが少なく、軸の歯応えが楽しめるとのこと。ひらきなめこも、同じような特徴を持っている可能性があり、期待が高まります!
大きい、且つ傘の開いたキノコは風味が強い
つまり、ひらきなめこは本当に風味が強い可能性が!でもこのオクテノール、乾燥させると飛んでしまうらしい。この風味、加熱した時にどの程度残ってくれるのかが気になります。
なめこがこの例外に含まれるかは定かではありませんが、ナメコも乾燥させると風味が強まるのかもしれない?という視点が出てきました。
「滑り」をどう扱うか?
少しは洗うか、洗わないか。
なめこの保存方法について、塩を加えたお湯でのブランチングが紹介されていましたが、その目的については触れられていませんでした。塩によってなめこの滑り成分に何かが起きるのでしょうか?
私が大好きなマギーさんにおもしろいことが書いてあるじゃないですか!キノコは洗ったくらいでは旨味は減らない、と。こういった否定系の記述は実験のやり甲斐が出てくるので大好きです。これからの実験でやってみましょう。
加熱速度について
ゆっくり加熱で風味が強まる可能性
乾熱調理というとつまり、「焼く」「炒める」「揚げる」などのこと。ただし「揚げる」は、天ぷらの場合衣の中で食材が蒸されるので、「乾熱調理」と言えるのは素揚げの場合だけとなるかと思います。そして、「揚げる」場合ゆっくり加熱は再現が難しいかもしれません。
保存方法について
なるべく早く食べるか、冷凍してしまうか
保存すると、甘みが減って、苦味が増える。ということが書いてあります。前半にも記述しましたがキノコは「傷みやすいのですぐ食べる」が大切そうです。
これは!冷凍後、加熱をすることで5'-ヌクレオチド、つまり旨味成分が増える、とのこと。これは足の速いなめこにとっては朗報です。補足すると5'-ヌクレオチドはイノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムを主成分とした混合物のこと。
菌床を再利用するってそんなに意味のあることなの?
最後に。「ひらきなめこ」の特徴として菌床の再利用が大きなポイントとなっていて、その結果としてなめこがおいしいですよ、というのが大切なストーリーです。ですが、菌床の再利用と聞いても「それは確かにいいね!」とすぐに合点がいかなかったので「菌床の廃棄事情について調べてみました。「菌床」は1度使ったら捨てられてしまうことが多く、栽培されるなめこの2〜3倍は出るとも言われている。菌床は土に還るものではあるが、土に還るまでには多くの時間がかかるため焼却処分・埋め立てされることが多い。⁽¹⁾
どのくらいの菌床が廃棄されることになるかというと、農林水産省が出している栽培量は年間で、なめこ単体で24,063トン、きのこ類全体で462,018トン(令和3年)。この3倍菌床が使われるとしたらなめこ単体で72,189トン、きのこ類全体で1,386,054トンもの量が廃棄されていることになる⁽²⁾。ここまでイメージすると結構な量に思えてきます。どおりで論文を調べていると、廃棄後の再利用方法を探る論文が多いわけです。
そんな社会背景のなか生産されている「ひらきなめこ」のおいしさを探しに、じっくり向き合っていきたいと思います*では、次からはじまる実験記事もお楽しみに*
参考文献
(1)廃菌床の処分方法と環境にやさしい再利用の方法をご紹介.株式会社ニッポー 2021
(2)きのこ類、木材需給の動向.農林水産省
今回取り扱っている「ひらきなめこ」は下記リンクの坂ノ途中オンラインショップから手に入れることができます*
最後までお読みいただきありがとうございます。頂いたサポートは「野菜のおいしい食べ方がもっと世の中に溢れるため」の活動や勉強のために使わせていただきますね。