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【香港旅行記⑦】まさかのベンサントレッキング

 ついに最終日となってしまった。香港七日目、またもや空港で目を覚ます。3日連続でホテルを利用しないという奇行は、できれば黙っていたいのだけれど、やっぱり面白いので書いてしまう。笑ってくれたら嬉しいです。どうか引かないでください。

 18:30発の飛行機で帰る予定なのだが、驚くべきことにもう空港にいる。どうも時間が余りすぎている。お金と時間と体力を考慮すると、あまり遠くに行く余裕がないので、空港に隣接した島に向かってみることにした。一応、香港ディズニーランドがある島と地続きではあるが、横にかなり長い。そもそもこの大嶼山という島はほとんどが山地で、人が住んでいそうな平らな部分がほとんどない。人工島に配置された空港が、島の1/7くらいの面積を占めているくらいだ。

砲台のある小学校

 バスに乗って10分ほど、ここにも文物徑で見たものとよく似た歴史遺構があった。大きな塀に囲まれた小学校の校舎だ。小学校なのに、兵の上に大砲が乗っていたり、硬く厚い塀に守られていることから、できた当時は、軍事的な意味合いもあったのだろうと思う。ここは塀の上に登れるようになっていて、それを辿ってぐるっと一周できるようになっていた。僕が小学生だったら毎日鬼ごっこをするだろう。高低差もかなりあって、後ろに向かって10mくらい高くなっている。土留め壁のような機能かと思いきや、そうでもなかった。山側にそんな危険な存在がいたのだろうか?落ちたら戻ってこられないくらい高い。

朝早くて人は全くいなかったけれど、運動会みたいな飾りがあった
上から見下ろす。車と比べてもらえれば大きさがわかりそう。
奥に向かって高くなる
海に向けられていた大砲は、今や高層ビルを打つ構え
断面と土地神のスケッチ

 ここの周辺にも、いくつかの土地神様がいた。来る前は高層ビルのイメージしかなかったけれど、ここまで道教を信仰している国だったとは。自分の目で、自分の脚でものを見て、色眼鏡を外すことは重要だ。

ダブル土地神
鉄骨で補強される土地神スケッチ
山形の石が可愛らしい

山の上の大仏

 「香港、観光」で検索すると結構最初の方に出てくる、天壇大仏を見学しに行く。山を椅子のようにして座っている写真を見て、スケール感がバグっているようで、気になっていたのだ。唯一の交通手段はバスである。本数はそこそこあるものの、さすが人気観光地、始点で席が埋まってしまうらしい。先の小学校を見た為に、中途半端な場所から乗ろうとした僕は、3本くらいのバスを見送らなければ乗ることができなかった。

 山道を40分ほど揺られたのち、大きな広場に投げ出された。広場にはいくつかの屋台などが出ていたものの、現金が底を尽きそうで、食べることができない。あれ、というかこれ帰りのバス代が足らなくないか?

 嫌なことは後回しにする主義なので、とりあえず大仏のお膝元へ。一段ごとに五体投地をしながら登る仏教徒が居たり、仏像の服の襞に触れるスポットに多くの人だかりができていたりで、なんかすごく偉大な感じを受けた。人が崇めていると、すごく見える現象だ。
 大仏の基壇部分は空間があり、売店と少しの展示があった。この大仏が作られる過程の写真も飾られていた。鉄骨が丸出しの体に向かって、クレーンで吊られた顔面が近づいていくところ。現代で巨大大仏を作ろうと思ったら、こういう風景になるのか。

馬鹿でかい大仏
鉄骨で作る仏像の写真をスケッチ

 でかい大仏があれば、決まってでかいお寺もある。上から見たときのその大きさにワクワクして行ったけれど、ただ大きいだけだった。また、金稼ぎの道具が沢山見えてしまって、興ざめしてしまった。新年という時期的な理由ではありそうだが、各建物の入り口に「香油箱」という名のお賽銭箱が置いてあり、みんなそこに「紅包」という赤い封筒にお金を入れたものを突っ込んでいく。中の展示も、やけに現代化、商業化されていて、しょぼいCGを用いた解説とか、解像度の低い写真を床壁天井に引き伸ばした場所などがあり、team lab.の超劣化版みたいな感じだった。またそこにもいちいち、小さな「香油箱」が置いてあった。一年でいちばんの稼ぎ時なのだろうが、あいにく僕の手元には現金が残っていない。

上からお寺を見下ろす
お寺側から大仏を望む。溢れ出るB級スポット感

 お腹が空いた。屋台に売っていた焼き鳥を買おうと、お姉さんに札を渡したら、首を振られた。マカオ!と言われて、初めてこのお札がHKDではなく、Patacasというマカオのお金だと気づいた。お札のサイズ、触り心地、デザインがどれも似ていて、間違えさせることが目的なのじゃないかと感じるくらいだ。マカオでは香港のお金を問題なく使える(レートも同じで、名前が違うだけ)のに、香港ではマカオのお金を使えないらしい。

 バスに乗れるかが怪しいと思っていた残金は、焼き鳥どころか、ジュース一本さえ買えない残金だった。マカオでお釣りとして渡されたであろう30Patacasを、どうにかして30HKDに戻せれば、バスに乗ることができる。
 広場に座っていた何組かの家族やカップルに(一人で来ている人は僕くらいしかいなかった)声をかけて交換交渉をしてみるも、首を振られてしまう。みんなマカオに行く予定がないのか、単に面倒なのか…。恐らくは後者だろう。辛いけれど、なりふり構っていられない。スケッチブックに交換要件を大きな字で書き記し、広場を歩きながら人に見せてみる。それでも、ちらっと見るだけで、声をかけてくれるような人はいない。ベンチに座ってノートを掲げながら、20分ほど行く人来る人を眺めていたら、なんかすごく悲しくなってしまった。最終日にこんな惨めな思いをすることになるとは。

虚しくノートに残る叫び

やはり頼れるものは…

 そういえば、バスに乗るときに何組か、山登りに向かう人々を見かけた。あの時は、どこに行くのだろうと思ったけれど、もしかしたら目的地はここだったのでは?と気づいた。調べると、バスに乗ったところまでは、2時間ほど山道を歩けば、戻れることが分かった。まだまだ飛行機には余裕があるし、ありかもしれない。しかし水も食料もなく、便所サンダルを履いたまま、2時間も山道を歩けるだろうか?
 頭の良い人だったら他の選択肢を思いつくのかもしれないが、僕は一瞬間の逡巡の後には、もう歩き出していた。やはり頼れるものは、自分の脚のみだ。もはやこの旅のテーマになりつつある。

 これが予想以上に楽しかった。数多くの登山客とすれ違って挨拶を交わしたり、景色を眺めながら一息ついたり、秘境のお寺みたいな場所を発見したりして、足の痛みこそあるけれど、精神的な疲れは全然感じなかった。
 流石に喉の乾きはひどくて、途中見かけた川の水を水筒に注いでゴクゴクと飲んだ。乾いた喉に、自然の水は最高に美味しい。(これが原因か分からないけれど、台湾に帰国した翌日から1週間くらい、喉の痛みと発熱に襲われた。)

 1時間半ほどで地上に戻ってこれて、空港まで戻ってクレジットカードでラーメンを食べた。空腹にはラーメンと相場が決まっている。香港料理?そんなものはどうでも良い。

再見、香港

 ということで、長きにわたったこの旅行記も終わりになります。もし読んでくれた方がいましたら、是非とも感想を聞かせてください。それが面倒であれば、良いねを押していただけるとすごく嬉しいです。次回は、5月ごろにシンガポールに行く予定です。また旅行記を書くと思うので、お楽しみに!

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