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イギリスにきて確信「理想の国はどこにもない」(UK在住土屋明日香さん)。

海外に住むことにあこがれています

いつか海外に住んで生活したい・・・って思うんですよ。
できるんだったらって、同じように思っている人って多いんじゃないでしょうか。
こういう企画を実施するようになって「僕も」「私も」っていう声が届くようになりました。
最近、よく調べるようになってきたなかで、海外に住む方法っていうのはいろいろあることがわかってきましたが、生活感にはなかなかたどり着けなかったりします。
それを補完することが、「なるほど!子育てザ・ワールド」の意義の一つなのかなって、5回目を迎えて感じるようになってきました。

今回は、ゲストの土屋さんのお話を聞いて、ぜひ海外に住む、移り住むことのリアルを感じてもらえたらなと思います。

日本在住子育て中のLindaさんと私ATSUSHIが、お話を伺いながら「なるほど!」連発する子育てザ・ワールド、どうぞお付き合いください。

土屋明日香さんのご紹介

第5回目(10月18日(日))ゲストは、土屋明日香さん。

小学生二人(11歳&8歳)のママ。
東京大学文学部、教育学研究科修了後、スクールカウンセラー、臨床心理士として教育分野・医療分野で活躍。
奈良女子大学にて博士号取得後、2008年にパートナーの就職に伴い渡英。
イギリスで出産されて、現在は日本語学習者のためのFun Japanese Learning, 日本語を学ぶ子どものためのKids Learn Japanese 主宰していらっしゃいます。
イギリスでの子育て経験、教育を取り巻く現状を心理学的な視点から分析した「多様な関係の中で育つ子ども」を、日本評論社「そだちの科学」にて2013年より連載中。

初ヨーロッパのお話

ヨーロッパといえば、子育てにやさしい!っていうイメージが強いんですよね。
でも、そのなかで日本に情報がやってくるのは、やはり北欧、あとはフランス。
いわゆる成功事例みたいなものがはっきりしている国の情報はみかけますが、イギリスの情報というのはなかなか情報が上がってきません。
でも、僕はイギリス絶対いいよって思っていました。
その最たる理由は、キャメロン元首相の首相時代におけるパタニティ・リーブ(父親の育休取得)。
大臣のひとりが育休をとることを、とったほうがよいとかありえないとか・・・そんな議論を周辺がしている国と大違いです。
ジョンソン首相も、コロナ感染でどうなったのかわからなくなりましたが、感染前は、子どもが産まれたらパタニティ・リーブするって宣言されていたほどです。
それほど、男性の子育ても当たり前のイギリスの子育てってどんな感じなんでしょう。

イギリスも子育てにやさしい

一番大事なことは、子どもを中心に社会が構築されているかという話だと思うんですよね。
イギリスでは、小学校の送り迎えは親がするのが基本なんだそうです。
そうすると仕事の時間に差し支えるわけですが、「子どもの送りがあるから遅れて出社する」というのが、当然のように認められている。
どの国の話を聞いてもそうですが、本当に当たり前なんですよね。

お迎えにしてもそう。
小学校が終了する15時に、職場から直接迎えに行くお父さんたちはとても多くて、家に帰った後、そこから在宅勤務に切り替えることもスタンダードだそうです。
そして、それに肩の力が入っていないというのも大きいですね。
「やるぞーっ!」っていうタイプに見えない人たちも多いらしくて、いかにそれが国民全体に浸透しているかということを物語っているようなエピソードでした。
何で日本は子どもより仕事が優先になってしまうのかな。。。

小1の壁は存在しない

Linda)
それが当たり前なんですよね。
日本だと、保育園は19時まで預けられるけど(それでも大変)、小学校になると学童も18時とかで閉まってしまって仕事に支障が出ることが多くて、それが小1の壁なんて言われていますね。

土屋さん)
早いお迎えができない人の場合は、チャイルドマインダーという自宅で子ども預かる登録制の制度を使ったり、ナニーという方にお迎えや夕食の支度などをお願いしたり(ファミサポに近いのかな?)ということをしてますね。

あと、保育園も閉まるのが早いんですよ。
18時30分には全員出てもらうようになっていて、19時以降も預かってもらっていたりすると「虐待じゃない!?」というレベルなんだそうです。(ロンドンなどはまた違うかもしれません)

だから、職場環境も、通常だと17時くらいまでしか空いていないのが一般的で、それ以降まで仕事をするのは望ましくないと言われています。

ATSUSHI)
聞いていると、子どもの生活を中心に社会が組み立てられているなという印象なんですよね。
日本はどうしても親の働く環境に、保育園や学童が寄り添っているような印象なので。

土屋さん)
子どもが中心なのか・・・というとわかりませんが、やはり17時になるとみんなさっさと帰っていくということはありますよね。
ショッピングセンターなども、日曜日は6時間しか営業が認められていないなど、日本に比べると就業時間が短く設定されているとは思いますね。

子どもは外出が厳しい?

Linda)
そんな長い間家に居て何してるんですかね(笑)
日本だと、子どもは夜は塾に行ったりなんだで家に居ないことも多いし、イギリスでは塾とかはいかないんですか?

土屋さん)
塾に行くことはないですね。
行っている家庭もほとんどないと思います。

そもそも公園とかに子どもだけで行くことができなくて、親が同伴しないといけないですし、友達の家に遊びに行くのも、親同士が連絡を取り合って同意をしないといけないので。

あと、うちの子なんかだと19時には寝てしまうので・・・

Linda)
7時に寝る!???

土屋さん)
だいたい19時30分くらいには布団に入りますね~。
21時を過ぎるようだと「遅すぎる!」って。
小学校6年生くらいになると、テレビを見たりして21時くらいまで起きていることもありますが、赤ちゃんの頃からスリーピングサイクルが重視されているので、日本に比べると早いですね。

Linda)
日本だとどうかすると19時って保育所から帰ってくる時間とかですからね~。

小学校だと宿題は?

土屋さん)
ありますよ。
でも、金曜日に出て来週の水曜日に提出とかなので、週末のうちに終わらせちゃいますね。
もちろん、毎日出す学校もあるとは思いますが、それは学校によりますかね。
あと、うちは日本人の親家庭なので、日本語の勉強を教えているんですが、それは朝やるようにしています。

そういうことをしなければ、塾もないし、勉強の機会というのはあまりありません。

日本文化とイギリス文化の両立

土屋さん)
私たちは、親子留学できたわけではなかったので、こちらに住んでいると英語に染まってしまうと思っていて、家庭では日本語をルールにするなどしていますが、やはり学校では英語中心なので、子どもたちのほうがすでに親より英語力はうえになっていますね。
いつか日本に帰ることになるかもしれないので、なんとか日本語とか文化は伝えていきたいなぁとは思っていますけど・・・。

ATSUSHI)
Lindaさんもアメリカで長かったじゃないですか。
お話を聞いていると、両立というのは相当努力しないと難しいんじゃないかと思ったんですけど、いかがですか?

Linda)
うちも同じように朝にやってましたね。
日本から教材を取り寄せてやったりとか、大使館から教科書をもらえるのでそれを使ってやったりとか。
それくらいやっていても、日本に戻ってきたときはワールドクラス(外国人の人が行くクラス)で1年学ばないと授業にはついていけなかったですね。

土屋さん)
親はイギリス社会に適用するのに精いっぱいで、英語力を高めることに必死なんですけど、いっぽうで、子どもたちは親から教わらない限り日本語を学ぶことすらできないので、日本語を提供することにも力を入れないといけない。
そのバランスは結構大変ですね。


これまで、いろんな方がお話されていましたけど、両立というのは本当に大変なんですね。

日本とイギリス、どっちの教育がよいか?

ATSUSHI)
先ほど保育園が早く閉まるっていうお話もありましたが、子育てとか両立とか、そのあたりもう少し聞かせてください。

土屋さん)
イギリスでは親の働き方によって、預かり方が違うんです。
人によっては月曜日と水曜日だけ預かるとか、いろいろなので、預かる日によってグループが違ったりもします。
だから、同じクラスでみんなで何かを・・・ということがあまりないんですね。

あと、行事に向けて準備をするということがほとんどなくて。
日本だと、イベントに向けて行進とかダンスとかを練習したりするとか、予行演習的なものってありますよね?
それが全然ないんですよ!
行事を成功させるためにみんなで準備をするという教育をうけていないから、大人になってもイベントをやるときに、事前の準備というのがないんですよね。

イギリスだと本当に行事とかバラバラで、正直みるに堪えないなぁと思うことはあります。
そのいっぽうで、イギリスの教育を受けて育った大人を見ると、クライシスに強いと思うんですね。
何かが起こったときに、今あるもので何とかしてしまうぶっつけ本番の強さっていうんですかね。
日本人は、準備するのが得意で、きちんとするんですけど、いざ危機が起こるとどうしよう!?てパニックになることもあって。

イギリス人たちの物事をうまくこなしていくところをみると、学校教育で得られたであろうその場でパッとできる瞬発力は養われているんだろうと思います。
でも、いっぽうで、準備して完成度を上げていくプロセスは非常に弱いんです。
もうちょっと準備すれば・・・っていうところが足りないんですよね。(60点くらいで満足してしまうというか)

親としては、日本的な準備と磨き上げていく体験もさせてあげたいなぁとは思っています。

Linda)
土屋さんは日本で教育を受けて育って、教育の専門家でもある中で、日本の一斉教育と、イギリスの個性的な教育とがあって、どちらがいい、どちらを子どもに受けさせたいと思われます?
今だと、運動会とかで競わせたり、みんなで同じことをさせるということに議論がうまれたりしていて・・・
日本で日本のいいスキルを学校で培ってほしいと思うか、イギリスの学校でゆるやかに個性を育むほうがいいか・・・ってどうですか?

土屋さん)
そうですね、今の子どもたちをみていると、日本の教育を受けさせたいと思います。
イギリスに来て確信したんですけど、理想の国はどこにもないなって。
日本にも改善しないといけないところはあるだろうし、イギリスにもいいところもあるけど、ここはなんとかならないかなっていうところがあるんですよね。
いいとこどりというか、両方のいいところを子どもも大人も体験できると、違うものが見えてきて、じゃあ自分はどうすればいいのかを考えられるんじゃないかなと思います。

あと、日本にあってこちらにないものとして、お手本を見てやるという作業が少ないんですよね。
それが大人になって影響しているなと思うんです。
以前、うちの車でカギがこわれて車屋さんに持っていったら、カギは治ったんですけど、今度扉のたてつけがおかしくなってしまらなくなったんですよね(笑)
そんなことがあっても全然悪びれずに「じゃあこれはタダでいいよ」って。

Linda)
それあんたが壊したんでしょ!って(笑)

土屋さん)
完成度を上げることが、教育のなかで強調されていない弊害なんじゃないかなぁと思うんですね。
自由にクリエイトする力は強いんですけど・・・。

日本では、完成度を上げることにすごく力を入れているんですけど・・・。

やっぱり両方が必要なんじゃないかなぁって思います。

ATSUSHI)
車の話、八年前に土屋さんにお会いしたときにおっしゃってたなぁって今思い出しました(笑)

それはさておき、理想の国はどこにもないってすごくいいお話ですよね。
僕なんかは、日本で子育てしていて、やっぱり今あるものでなんとかやるという瞬発力がすごく必要だと思っているので、イギリスいいなって思うんですよね。
とはいえねぇえ、どちらを取るかというのはなかなか強烈な二択ですよね。

Linda)
足して二で割ればちょうどいいのにね。

でも、両方知ってるっていいですよね。
これまでは海外のこんなところがよかったっていう話が多かったけど、今日のお話だと、日本の一斉教育もまんざら悪くもないんじゃない?っていうね。

イギリスでは不登校は虐待?

Linda)
イギリスだと、いろんな人種とか労働者階級の人とか、いろんな人がいると思うんですけど、小学校での多様性ってどうですか?

土屋さん)
ここは大学街で港街なので、いろんな人たちがいて、両親イギリス人という家庭は30%くらいかなぁと思います。
なので、いろんな宗教の方もいて、そういう事情から宗教上の理由で学校を休むことが認められているんですね。
イギリスでは学校を休みすぎると罰金を払わなきゃいけなくて・・・

Linda)
えぇぇーーー!???

土屋さん)
そうなんです。
だから、日本の不登校とか引きこもりのニュースを見ると、なんで親は逮捕されないんだ!って真顔で聞かれます。
教育を受けさせていないことが教育の機会を奪っている虐待だと思われるんですね。

そのかわり、ホームスクーリングというカリキュラムも認められているので、教育をうける選択肢は複数あるんですけど、学校に行く選択をしたにもかかわらず、学校に理由もなく行かせていないと罰金とかが発生するんです。

Linda)
それだけ教育を重んじているということですよね。

土屋さん)
イギリスでは今、コロナも第2波で大変な状況なんですけど、学校は閉めないんですね。
それは、日本みたいに塾をいかせることもないので、学校が無くなると教育の機会が無くなってしまうからなんです。
それくらい学校の果たす役割は大きのかなぁと思います。

大人の生き方が多様かどうか

ATSUSHI)
塾に行くことが無いとなると、学校での成績を挽回していい大学を目指していくということはかなり難しくなりますよね。

土屋さん)
イギリスの場合、アカデミックに行くことがいいと思っている人がマジョリティかというとそうでもないんです。
大学進学の率もかなり低いですし、早く働いて稼いでほしいっていう親も多いですね。
そしてそれが悪いということもないんですね。

Linda)
そこにプライドを持っている人も多いですよね。

土屋さん)
労働者階級の人は、それに誇りを持っているので、大学に行かないことがメインストリームから抜け落ちるということにはならないんです。

Linda)
そこが日本とは違ってますよね。
イギリスは日本と違って大人の生き方が多様で、子どもたちは親の生き方に倣っていくから、生き方がばらけていくと思うんですけど、日本はどうしてもみんな同じになってしまうから、教育がレッドオーシャンみたいになってしまうって感じですね。

そもそも一緒じゃないことが当たり前だから、生き方の選択肢がたくさんあるんですよね。
日本だと答えがひとつしかないから、だから日本は息苦しくなるんですよね。

家でのあり方が大事!

Linda)
一つ感想が届いています。
チームの成長の段階として、帰属→承認→成長→強化→勝負という5段階があって、一段ぬかしには成長ができないもの。
日本は前半が弱く後半からスタートしてしまうけど、イギリスでは前半で止まってしまう。
これをバランスよくステップを踏んでいくシステムができると良さそうだと思う。
確かにその通りですよね。

土屋さん)
子どもとしては、たしかにほめて伸ばして認められるということが大事なんだと思うんですよね。
足して二で割ったような制度があればいいですよね。

Linda)
今、制度として足りない部分というのは、家で補完するところなんでしょうね。
土屋さんも、イギリスの教育で足りないところは家の中でされているし、私たちも家のなかで足りないところを補っているわけで。

ATSUSHI)
だから、今、こういう場が必要だということなわけですね(笑)

ということはさておき、あらためて家庭の役割というものを考えさせられましたね。

私が見つけた子育てのなるほど!

土屋さん)
イギリスにはパタニティ・リーブ(父親の育休取得)があるんですね。
とはいえ、生まれたときから発生する制度で、いつ生まれるかわからない中で、授業もあるしどうしたらいいか悩んでいたら、同僚の先生からも学生からも上司からも、
「子どもが生まれたらその瞬間から休んでいいから」
「人生には授業より大事なことがあるんだから」

といわれたことがあって、本当に心が軽くなったことがあったんです。

イギリスは教育も子育ても完璧では全然ないんですけど、でも、人の温かさというかそういうものが素敵だなと。

Linda)
制度をつくるだけじゃなく、成り立たせたり包み込んだりする心を、少し大きい話だけど、人権という者を一人一人が理解しているなぁ。

ATSUSHI)
そうですよね、学生までそうやっていうということですよね。
本当に小さいころから大事にしていることを共有しているっていう気がしました。

Linda)
マンゴーさんの回のときに、社会全体が人を大事にしていることを子どもが感じているっていうのを話してたんですよね。
もしかすると、自己肯定感というのは褒めることだけではなくて、社会全体が人を大事にしているよって言うことを感じられるっていうことで得られるものなのかも・・・。

いかがでしたか?

今回もおつき合いいただきありがとうございました!
教育や子育て、だけじゃなく、どういう社会をつくっていくべきなのか・・・ということを考えていく必要が、我々親世代には求められているような気がしました。
またみんなで考えてみたいですね!

次回は、11月15日(日)を予定しています。

またぜひおつき合いくださいね!

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