山川敦史 Atsushi Yamakawa

ちょっとした小説と、考えてることなど。ふだんはインタラクティブな作品をつくっています。…

山川敦史 Atsushi Yamakawa

ちょっとした小説と、考えてることなど。ふだんはインタラクティブな作品をつくっています。https://atsushi-yamakawa.com

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最近の記事

晴耕雨読

ここ数週間天気が悪い日が多く、せっかく暖かくなってきたのに勿体ないな、と思う。同時に、なんて融通の利かない生活をしているんだと虚しくなる。 多くの都市生活を送る人々は基本的に曜日毎に予定を決めている。平日に働くまたは学校に行く、土日に休む、出かける。こんな機械的なサイクルは、天気という最も身近な変数を無視した極めて不自然な習慣だ。 幼い頃からその習慣に慣れた人間は、自然とは「無視できるもの」であるという無意識の刷り込みのもと、最終的に自然を「コントロールする」みたいな傲慢

    • 同窓会

      大学(学部)の同窓会があった。 2020年に卒業してから4年ぶりで、定期的に会っている友達も、卒業以来会っていない友達も含めてたくさんの同級生と会って話すことができた。 今の会社には新卒で入ったものの、自分は大学院を挟んでいて年齢が少し上なこともあり、純粋に「同級生」と呼べる関係の人々は学部の人たちな気がしている。コロナで卒業式が無くなったこともあり、意外と皆それぞれの関係を大学時代から地続きなものとして捉えているような感覚はあるようだ。 改めて、自分は人との会話や関係を

      • 恥をかかなければ

        恥をかくのが嫌いだ、と気づいた。 私にとっての「恥」とは、「言葉にされない恥」である。表面上にこやかに接してくれている相手が、内心で「あ〜、この人全然わかってないんだな」とか「あ〜、こういうパターンね、はいはい」みたいな、見透かされている感みたいなものがとてもとても苦手で、相手の顔色を常に窺って余計な想像を膨らませてしまう。 例えば、歯医者に行くのが苦手だ。なぜかというと、痛くて怖いからということではなく、「あー、この人歯を大切にしてこなかったんだろうな」と見透かされるの

        • Core - 制作プロセス

          きっかけ2024年2月15日、and_dという大阪に拠点を置く学生団体の方から、「アーキディスコ」というイベントへのお誘いをいただいた。あとで聞いた話には、SNSで作品を見て誘ってくれたらしい。建築の学生が主体になっている団体とのことだったので、「なぜ自分に?」というのが最初に思ったことだが、詳しい活動内容を見ていると様々な分野に跨いだ作品展示や講演会、Zineの制作などとても興味深く、ぜひ参加させてほしいと伝えることにした。 展示場所として用意していただいたのが、MOG

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        • 考えてること
          8本
        • 作品制作プロセス
          1本
        • 超短編小説まとめ
          7本

        記事

          受動的、能動的

          中村佳穂の新譜を聴きながら、センチメンタルな気持ちになって久々に文章を書きたくなった。僕の「自信」というものはとにかく些細な人との会話や、小さな出来事に左右されるようで、今日はそれをどちらかというと失う感覚に陥り、駅を出て自転車に乗ろうという瞬間に色々な感情や考えが込み上げてきた。特に今日、一つの目標として考えていたアートアワードの授賞式(自分は選ばれていない)があり、かつそのアワードが今年は募集を取りやめるという事実が、今のこの感情に影響している気がする。 創作者としての

          お米にも道がある

          お米を炊こうとして、ふと「なんで米を炊く前に研ぐんだ?」と思った。というか、そもそも正しい米の研ぎ方も知らなかったので、「米 研ぎ方」で調べてみる。 お米の研ぎ方が、5つくらいのステップに分けて、かなり事細かく説明されている記事が出てきた。 ふっくらおいしいご飯を炊くには、研ぎすぎてはダメとか、ざる研ぎしてはダメとか、10秒くらいでやるとか、様々なルールがあるようだ。少し面倒くさいなと思う。 そして、一つ疑問が浮かぶ。 僕はそもそも「ふっくら」したご飯が好きではない。ど

          夏菜

           夏菜はとても背が高くて、いつも青いワンピースを着ていた。そして、少し不機嫌そうだった。  夏菜のことを初めて実際に見たのは、僕が小学三年生の夏休みだった。それまで夏菜は噂の中の存在でしかなかったのだ。 「毎年夏祭りの時だけ現れる女がいるらしいぜ」  駐車場の小石を車道にぶん投げながら、友達は言った。 「えー、だれ?」 「わかんないけど」 「おばけかもよ」 「ヒィー」  車が通り過ぎて、排気ガスの匂いがする。僕たちは汚れた手足をコンクリートに投げ出して、ぼーっと1日の終

          【初海外】ニューヨーク旅行の感想と行った場所

          2020年3月4日-13日までアメリカのニューヨークに行ったので、感想と行った場所のまとめ。 まずは[感想]。なんとなくジャンル別です。因みにはじめての海外旅行なので必然的に日本との比較。 ・人が個人として存在している 店に行っても日本は「店員さん」っていうアノニマスな感じだけど、アメリカでは1人の人間という感じ 人によってフレンドリーだったりかなり無愛想だったり個性的 ホームレスも堂々としていて、惨めな感じがしない ・人種が多様過ぎて、あまり日本人であることは気になら

          【初海外】ニューヨーク旅行の感想と行った場所

          無関心について

           東京は冷たいという人もいるが、僕はそうは思わない。ただ、立ち止まることさえ許してくれれば、東京という街が僕は好きだ。  ホームで電車を待っている時、向かい側にいる誰かのことを考える。慌ただしく階段を降りてきて、電車を逃す人、笑いながらイヤホン越しの誰かと会話する人、僕と同じようにただこちら側をぼーっと眺めている人。あらゆる人の風景が一様に直線上に並んでいる。  会社の飲み会で、誰とも話さずにつまらなそうにしていると一人の後輩が気を遣って話を振ってくる。僕は全く興味のないそ

          世界よ美大になれ

          僕が高校生くらいまで受けてきた学校教育や、日本社会に対して思うこと、それはあまりに「画一的である」ということだ。 こう言ってしまうと、その意見自体が酷く没個性的でありふれているように感じる。しかし、そういった意見自体がもはや聞き飽きたと感じるくらいに言語化されているということ。つまり「画一的だ」「没個性的だ」「窮屈だ」ということを、その社会に暮らす人自身が言語化できてしまうという点にまず問題があるのではないか。 何故なら、 いったん抱いてしまった人間に対する絶望感、人間

          髪の毛

          「あと一回髪を切ったら、さよなら」  彼女は、長い髪の毛先を自分の眼の前に持ち上げて、僕に示しながらそう言った。彼女の瞳は、ファストフード店の窓から差し込む強すぎる光を反射して光っていた。毛先にわずかに残る、金色。これがなくなったらもう別れる、そう彼女は宣言したのだった。僕はズーーと音を立ててシェイクの残りを吸い上げながら、その瞬間を見届けた。  僕らが付き合い始めてすぐに、彼女は金髪に染めた。 「そんなことする必要あるのかな……お互いもういいなら、すぐにでもいいじゃん」

          コンビニの好きなところ

           どんなに重要だと思っていたり、自分に影響を与えた出来事も、生活の中で思い出すことはほとんどない場合が多い。僕がコンビニまでの道のりで考えていたことは、今日の夕飯のことと、明後日の授業の課題のことと、もうすぐ始まる就活のことだ。  自動ドアが開くと、店員の気の抜けた挨拶が聞こえる。時計の短針は十時を過ぎようとしている。  コンビニの陳列棚に並べられたカップ麺をなんとなく眺めている。ふと我に帰り、横着してはいけないと思う。確か冷蔵庫にはキャベツと、ダンボールに父が送ってくれたジ

          コンビニの好きなところ

          秋に舞う

           秋は、見つめていた。容赦なく流れ去る車の群れ。そして、それらを見下ろしながらどこまでも宙を舞った。  秋は二十一歳である。一浪して東京郊外の中堅大学に進学し、来年で大学生活三年目を迎える。ただし、三年生として、ではない。なぜなら、二年生後期の必修科目を落とし、留年が確定したからである。間もなく、「本当の」二年生としての生活が終わろうとしていた。  秋は以前から、ふとした瞬間にあらゆる「流れ」から取り残されている感覚を覚えていた。高校生の時、模擬試験に二日連続で遅刻したり、

          傘立て

           ハッと気がつくと降りる駅の一つ前の駅を発車したところだった。イヤホンからは相変わらず、さして聴きたくもない曲がダラダラと流れている。電車の中でいつの間に意識を失っていたようだ。窓の外はすっかり日が落ちて、地平線の方にかろうじて光が覗いていた。今日もまた遅くなってしまった。  気分に反して、今週中にやらなければいけない課題がたまっている。そういうのをなんとなく棚に上げたまま、今日もだらだらと友達と話し込んでしまった。  こうして電車に揺られる間はいつも、帰ってからやることの

          ワスレナヅカ

           ぎこちない動きで、ボールを蹴る足。その人から送られてくるボール、それを小さな僕は必死に追いかける。僕が必死になって追いかけるほど、その人はケラケラと声を出して笑った。僕はそれが嬉しくて、わざと大げさに走ってみたり、転んでみたりする。  次第に泥だらけになってゆき、気づけば日は山々の彼方に沈もうとしていた。ボールがなかなか送られてこないのでふと顔をあげると、その人はもうそこには居なかった。残されたのは、力なく転がるサッカーボールの、長く伸びた影だけだった。 「かーさん?」