『シェアードモビリティー』 ~自家用車が公共交通機関となる時~

 電子版新聞の良い所は、空き時間に簡単にバックナンバーにアクセスできる事です。特に意識することなく過去記事に目を通すことで、質の高い情報の取りこぼしがなくなる。今日私の目に飛び込んできたのは、2日前の記事で、見落とさなくて良かった、と思う卓抜した内容でした。

普段投資をしていると、今話題の『自動運転』・『コネクテッドカー(自動車のIT化)』・『オンデマンド配車(カーシェアリング)』等々のテーマを全体として捉えることはあまりなく、逆に、それぞれのテーマに対応した対象企業のリストの中から投資対象を絞り込んでいく、という作業に終始しています。投資するのは個々の企業だから、どうしても、森ではなくて木を見ている。

この記事は、今モビリティーを取り巻く『自動運転』・『コネクテッドカー』・『オンデマンド配車』といったテーマが、社会の変化に後押しされて、いかに有機的につながって、『社会課題の解決』と『新たな価値の創出』に突き進んでいるか、その全体像を、国際的視点も踏まえて俯瞰しています。まさに森を見ているのですが、この記事の卓越しているのは、その『俯瞰』が単なる現状の俯瞰ではなく、タイムマシンに乗って未来までも俯瞰している点です。

したがって、記事では、特に『新たな価値の創出』にスペースを割いています。ごく簡単に要約すると――

・運転から解放された全く新しい空間としての車内空間。
・クラウドコンピューティング時代の自動車IT化が享受しうる新しい情報サービス(OTAアップデートなど)。
・シェアリングエコノミー時代の最先端・高効率の移動手段『シェアードモビリティー』。

車のあり方は、確実に所有からシェアへとシフトしていく、という事が、説得力ある文言と図表・画像で提示されています。将来、車とのかかわりは、一括購入ではなく、使った分だけ支払うサブスクリプションモデルに置き換わり、さらに進むと、車は、モノではなく、サービスとしてのパッケージの一部となって、サービスドミナントロジックの潮流に飲み込まれていく……

勉強不足の私は、この記事を読んで、新しい言葉をいくつも覚えました。すごいなと思うのは、この記事は、普段聞きなれない横文字を、全く嫌味な所なく、分かり易く提示していることです。簡単に言うと、この記事を読んでいて、意味が分からず、ネットサーフィンするような事態は全く起きませんでした。聞き慣れない言葉が出てきても、記事の中でその意味が明快に分かる、自己完結している。……それって、新聞記事の鏡ではなかろうか……

この記事を読むことで、私の想像力は、遥かな未来、いや、それほど遠くはないかも知れない未来へと運ばれていきました。

そこは、『シェアードモビリティー』の行き着く先です……

 ……高層ビルの立ち並ぶ街には、よく整備された自動車専用道が血管のように張り巡らされ、そこを大小さまざまな無数の車が自動運転で走っている。車の流れはスムーズで、渋滞は存在しない。車内では会話が弾み、ビジネス・ランチらしき光景も見られる。時々、車が停車専用レーンに入っては、待たされることなく人が乗り降りしている。車への乗り降りは、精緻なオンデマンド・システムで管理され、人々は、全くストレスを感じることなく自分の目的に合ったモビリティーをチョイスしているようだ……

私の瞼に浮かんだ光景は、自家用車が公共交通機関となった世界でした。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25973430S8A120C1000000/

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