『天使の翼』第11章(75)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「くどいようだけど、僕らは、SSIPの捜査に意味もなく怯えている乗客という演技を通す。後ろ暗い所があっておろおろしている訳じゃない……ゆったり構えて。簡単な芝居だ」
わたしとローラは、こくりと頷いた。
「――それから、携帯端末身分証CIDは、聞かれたら素直に呈示すること」
携帯端末身分証CID――
この広大無辺な銀河系のはかない塵のごとき存在である人間、その一人ひとりを識別する、絶対確実で、しかも隅々まで普及可能な標識など、ない。携帯端末を身分証として使うのは、あくまで次善の策なのだが、悪用した場合の罰則が極めて厳しいこともあって、かなりうまくいっている制度の一つと言っていいだろう。
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