JALイノベーションラボの決定的な点

 この記事『スタートアップ×大企業 日航、技術系100社と連携』、私は、最初一読して危うくそのままスルーする所でした。簡単に言うと、大企業が生き残りをかけてオープンイノベーションのための拠点を設ける、という内容で、私は、「拠点だけ設けても駄目だな。イノベーションはアイデアが全てだから……」と早とちりしたのです。

その時目に飛び込んできたのが、記事にあるJALイノベーションラボのイメージ図でした。そこには、貨物・整備・客室など、JALの各部門がJALイノベーションラボに参画していく形が明確に示されています。具体的には分かりませんが、もし、現場の部門、最前線の現場の人材が若手も含めてJALイノベーションラボに関わっていくのだとしたら、様相は全く変わってきます。

誤解されがちなのですが、イノベーションというのは、イノベーションのアイデアというのは、突然外から湧いてくるものではありません。必ず何かしらの課題があって、その『課題に気付いて』解決しようとするところから、思わぬアイデアが浮かんでくるのだと思います。例えば、タクシーをつかまえるのにしばらく待つのは仕方ない、とそこで思考停止してしまえば何も生まれませんが、そこで『場合によっては何十分も待つことになるのは課題だと気付けば』ライドシェアのビジネスモデルが生まれます。

その課題には、大きくは人類全体のためになるようなものから、深刻な社会問題、社会課題などいろいろあるでしょうが、実は課題が一番山積しているのは、何を隠そう企業の内部、現場そのものなのです。現場の人材は、細部を知らない外部の人間がいくら頭を絞っても思い付けないような、切実でシリアスな課題に気付きうる立場にあります。気付きうる、と言ったのは、残念ながら仕事に流されてしまって、身の回りで起きていることをこれが当たり前と無意識にあきらめてしまうと、課題に気付くことはできません。また、いくら課題に気付いても、それを吸い上げて課題解決までもっていく仕組みがないと、せっかくのアイデアも、大企業特有の冗長な決裁ルートをたどるうちに立ち消えとなってしまうかも知れません。

私は、一番のイノベーションの種は現場課題にある、日々地道に業務をこなし、直接顧客と接している現場の人材の抱える疑問・不満、アイデアにあると思います。その現場課題を吸い上げ、外部のスタートアップの知恵とマッシュアップして、課題解決=事業化にまで持っていける仕組みというのは、非常に強力なイノベーション・エンジンだと考えます。忘れてならないのは、往々にして、そのような現場課題の解決は、外販することによってさらに収益を生み出したり、より大きな社会課題への解となることがあるということです。

私に限らず、投資家は気になる企業のWebページをチェックするものですが、残念ながら最近JALのWebページはチェックしていなかったのでのぞいてみることにしました。……そこには、いい意味での驚きがありました。進めているイノベーションを紹介するコーナーが、とても充実していたのです。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29263440R10C18A4TJ1000/

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