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『天使の翼』第11章(62)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 何の保証もなかったが、ローラは、少し安心した表情を見せた。何といっても、大公国という過酷な政府の支配する世界で生きてきた女性だ。一つ一つ気に病んでいては、呼吸すらできない……。困難な状況が予測されても、それは、必ずしもすぐ襲ってくる訳ではない。……かといって、ずっと平穏な状態が続く訳でもないのだが。
 タイミングよくハイ・アンコーナ行きの特急『マウンテン・スネーク号』の発車を知らせらアナウンスがあり、わたし達は、列車に乗り込んだ。列車の名称が間違い様のないそのものずばりなのが、おかしい。
 車内は、中央の通路を挟んで、左右にずらっとコンパートメントが並んでいた。無論、車体のくねりに合わせて、コンパートメントは弓形に連なっている。……なのに、コンパートメントの室内は、車体の屈曲に関係なく矩形に保たれている……。一体どういう構造なのか、まさか、個々のコンパートメントが4次元的に独立している訳でもあるまいに?

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