新時代のテレビ

 AbemaTV(アベマTV)については、投資の観点からも、もちろん視聴者としても関心があったので、この記事『「テレビは衰退危機」 藤田晋氏ら、ネット巡り討論』は、すぐに目に入りました。いい機会なのでネットTVを巡る問題をいろいろ調べてみたのですが、かなり奥が深い。ちょっと列挙するだけでも――

● 放送法、特に同4条の政治的公平性など、テレビのサービスの質を担保していると考えられる規制を、ネットTVの世界にも持ち込むのか?● 映像コンテンツを届ける手段としての電波・ケーブル・ネットは、どうあるべきなのか?● 電波の周波数帯をいかに有効活用するか?● 通信と放送の融合が進む5Gへ向けて、放送産業はどうあるべきか?● 緊急時の情報源、ニュースとしての信頼性の高さから、既存のテレビ放送にも存在価値があるのでは?● ・・・・・・

広範かつ徹底した議論が必要なのは明らかで、国民として今後の推移を見守っていく必要がありそうです。そこで、今回は、単純明快にUX(ユーザー・エクスペリエンス)の視点で考えてみることにしました。それは何かと言うと、今後、ネットTVをモバイルで視聴するなど、映像コンテンツの視聴環境はますます多様化していくと考えられますが、『映像コンテンツのUXの王道』は不変だという事です――

 『(家庭で、)大画面で、信頼性のある、高品質なコンテンツを視聴する。』

このようなUXは、映像コンテンツを取り巻く環境がどのように変わろうとも不変、普遍の王道だと思います。

【1】それが可能なら大画面の方がいいに決まっている。

近くに大画面のモニターがある時に、わざわざ小さなモバイルで視聴する必要はありません。現状、テレビをPCとつないだり、スマホをテレビに接続する後付けの方法はいくつかありますが、ネットTVを煩わしい接続や設定なしで視聴できるテレビ、テレビのインターネット端末化が急速に進むと考えます。

その結果、テレビ広告の世界に、SNS並みのターゲティング広告が導入されるかも知れません。

ネットTVのコンテンツを制作する時に、最初から小画面を想定したコンテンツを作るか否かは悩ましい問題となりそうです。眼鏡型のウェアラブル端末が普及すれば、小画面を前提としたコンテンツという考え方は不要となりますが……

【2】情報の信頼性が問われる時代になる。

ネットの世界で起きているフェイクニュース・データ流用をはじめとした諸問題が、テレビの世界にまで波及しないように最初から対策を考えておく必要があると思います。フェイクニュースなどを排除する仕組み、システムが機能して、国民の重要な情報源であるテレビの信頼性が確保されることが必要です。

【3】結局、高品質なコンテンツが全て。

ニュース番組にしろ、娯楽番組にしろ、ドキュメンタリー番組にしろ、結局のところ、高品質なコンテンツの制作能力が、TV局の存続を左右すると思います。ネットと電波の垣根のなくなる新しい時代のTV局は、高品質なコンテンツの制作と収益の確保のバランスをどうとるか、新しいビジネスモデルの構築を迫られていると思います。それは、逆に言うと、視聴する側の姿勢も問われているという事だと思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29997300Z20C18A4TJC000/

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