AI面接官の偏見

 最近、企業の採用活動において、書類選考から始まって、実際の面接までもAIで行うという試みが話題になっています。そこで浮かんでくる素朴な疑問は、「そもそもAIに人間を評価することなどできるのか?」という事です。

AI採用で使われている技術は、AIによるプロファイリングで、記事の中にもあるように『AIがビッグデータを解析して個人の「人物像」を推定する技術』です。普段色々な媒体から入ってくるAIに関する情報、AIの特性を見れば、私のような門外漢にも、たちどころにいくつかの問題点が思い浮かんできます。

・AIの思考(処理過程)のホワイトボックス化はまだ開発途上で、ブラックボックスのままだと、AIがどうしてそのような人物像を割り出したのか、その理由が分からない。理由が分からなければ、十分な根拠あってのことなのか、全くの偏見なのか、採用する側にも、就活する側にも分からない。分からないまま事を進めていいのか?採用する側にとっては将来の企業業績にかかわる重大事を、就活する側にとっては人生にかかわる重大事を……。根拠不明で採否を決定する事には倫理的な問題がなかろうか……

・AIの精度はデータの質にかかっており、精度が未熟なAIに人物像を判定させれば、必然的に偏見となる可能性は高まる。人物像を推定できるほど精度が高い、という事をどうやって保証するのか?

・忘れがちなことだが、AIには人の常識がない。決定的なのは、常識がないので、常識に基づく推理を働かせて行間を読むという事が出来ない。ところが、人の真意というのは、行間に現れる場合が多い。つまり、AI面接官は、人の真意をつかみきれないままに人物判定をする、と言うことになる。言外の意味をくみ取らずに、正確な判定ができるのだろうか?

・人の面接にあっては、感情というものが外せないファクターとなる。例えば、応募者の緊張をほぐして、応募者が自分の姿を100%出し切れるように持っていくとか、逆に、きわどい質疑応答で本音を引き出すとか……。面接で相手を見極めるという事は、最終的には、単なる情報のやり取りではない、感情のせめぎ合いになる。AIにそこまでできるか?

・仮にAIが書類選考・面接で高精度に人物像をつかめたとしても、逆に応募者がAI採用に疑問・不安・不審を感じて、応募を取りやめたら、それは、とりもなおさず競合他社に優秀な人材が流れるという事につながる。AIが人を判定するのもよいが、人(応募者)の方は人の方で、そんなAIを、そして、そんなAIを使う企業のあり方を見極めようとしていることを忘れてはならない。

・仮に優秀なAI採用のシステムがあるとして、そのシステムを自社に合ったシステムにカスタマイズするのは難しくないか?

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どうやら、本格的にAIを採用に用いるには、クリアしなくてはならない技術的な課題が山積しているようです。もちろんAIを1次的に用いることには有意性があると思いますが、未熟な技術段階のままあまりに多くをAIに頼ることには、間違いでは済まされないリスクがあるように思えるのです。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26803390R10C18A2TJM000/

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