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『天使の翼』第12章(66)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 どれくらい経ったろうか、全く時間感覚が麻痺した中で、突然エリザが四本の脚を広げた。……実際には目を瞑っていたので、逞しい首筋に伝わってくる筋肉の動き、そして、被膜が広がったに違いないバサッという音で分かった。
 落下速度に急ブレーキがかかった。
 同時にわたしの全身、そして顔が、エリザの体の中に埋もれてしまうかに思えた。
 その後、文字通り爽快なグライダー飛行が始まった。――実際に乗っていると、巨獣の重量などまるで感じられない。
 崖の上から他のデビル達が舞い上がっていく姿を見たが、同じように、わたし達も、軽々と断崖の高度を超え、盆地の空高く飛翔した。スピードと、比較するもののない空間という設定が、目の遠近感を狂わせ、遠くの雲が手に届くように感じられる……気が遠くなりそうになって下界を見ると、距離感がつかめて安心できたりする……

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