『天使の翼』第12章(64)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
『その帽子、顎紐はある?』
「あっ!」
確かに、このままでは飛び立った瞬間に吹っ飛んでしまう。……それにしても、帽子の顎紐、何て概念まで把握できるなんて、デビルの知性には目を見張る……
改めて帽子をかぶり直そうとして、わたしは、制帽のひさしの上に乗ったゴーグルに気付いた。まるで帽子の飾りの一部のようで、今まで気にも留めてなかったけど、これを使わない手はない。
顎紐をきつく締めた後しばしの沈黙が流れた。デビルの体を伝って来る風を顔に感じた……
エリザは、いったん崖っぷちから後退した後、慎重に向きを定め、じりじりと間合いを詰めていった。
わたしは、もう彼女に命を預ける他なく、この瞬間を見逃すまいと、一生懸命目を見開いていた。
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