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『天使の翼』第13章(13)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「大好き、Eliza!」、最後にわたしがシャウトして曲を終えた後、Elizaはグイと鎌首をもたげて、まるで太古の巨大生物のように空気をビリビリと震わせて咆哮した!
 こんなパフォーマンスは事前の打ち合わせになく、わたしもびっくり……でも、そこは吟遊詩人らしく、おくびにも出さずに、わたしは颯爽とエリザの左前脚を駆け下り、盛り上がった観衆の大歓声に全身をさらした。
 お金やら、帽子、ジャケット、サングラス、さまざまな物がわたしの足元に飛んでくる。人類とともに宇宙船という名の方舟に乗って銀河系へと旅立った二つの生き物、犬や猫まで飛んできてわたしに抱きつこうとする。
 その大歓迎に苦笑するわたしの姿を見て安心したのか、今度は子供達がドッと駆け寄ってきてわたしの周囲を取り巻いた。歌というのは老若男女を問わない人類全体の心の共通語だ。……ついでに言うと、こういうシーンでは必ず現れる、どさくさに紛れてわたしに抱きつこうと企む男女を問わない輩たちから、子供たちはまるで親衛隊のようにわたしを守ってくれた。
 わたしは、子供らの輪の中心にしゃがみ込んで、この新しいわたしのファンたちに、握手やらハグやらでファンサービスに勤しんだ。
 そんな状態だったから、遠くから人を不安に陥れるあのサイレンの音が近づいてきているのに、最初わたしは気づかなかった。

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