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『天使の翼』第12章(69)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 彼は、最後にもう一度わたしに視線を据えた後、しなやかな身のこなしでエリザの横に並んだ。
 ――二人で何か会話を交わしているようだ。……テレパシー?……
 わたしは、ヒューヒュー吹き付ける風に、たまらずゴーグルをかけ直した。
 やがて、何事もなかったように、赤い鱗の巨獣は去って行った。
 『彼、あなたのことが気に入ったみたい』
 「えっ?……」
 わたしには、エリザが愉快そうに笑っているのではないか、と思えた――逞しい首が小刻みに上下しているように見えたのだ……
 その件に関してはそれで終わり、特に説明はなかった。
 わたし達は、いつの間にか、盆地の中央部に来ていた。
 この辺りは、餌となる飛行性生物が少ないのか、デビルの姿もまばらだ。わたし達は、ゆったりと――実際には相当のスピードなのだろうが――優雅に滑空していた…………わたしは、自分の心映えが、何時の間にか、この地の天候同様に晴れ晴れとしていることに気付いた。静謐な瞬間だった。広々とした、何も遮るもののない大空、燦々と降り注ぐ太陽の光に抱かれ、冷涼な風に包まれて…………何かが、わたしの心から剥がれ落ちていき、とても澄み切った心の目で、過去と、そしてこれから先のことを見通しているような…………

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