見出し画像

『天使の翼』第13章(3)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 エリザによれば、ハイアンコーナへの飛行は気流の状態にもよるが標準時で2時間ほどの行程だろう、という。……これは蛇足だけど、エリザは、わたしと巡業の暮らしをするようになってから、人間界の時間感覚というもの、その概念をかなり正確に理解するようになっていた。むろん、マウンテンデビルにも時間の感覚はあるのだが、彼女は、それを人間のそれ、時間感覚といわば同時通訳できるまでになっていた。マウンテンデビルの知性、変化への対応能力には驚かされるばかりだ……
 行程の半ばを過ぎたころから、雨は次第に弱くなり、やがて周囲は視界をふさぐ靄のような状態となった。心なしか、風を切るわたし達の周囲の空気が……大気が軽くなって暖かくなってきたような気がする……

この記事が参加している募集

SF小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?