イノベーション、革新と破壊の分水嶺

 3/24付の記事『「破壊者」の道選ばぬロメッティIBM』によれば、『既存事業者を破滅に追い込むような革新を進めることで、企業価値を急拡大させる西海岸勢。ロメッティ氏はこうした「破壊者」路線はとらないと宣言する。』とあります。私は、これに若干の違和感を覚えました。とは言え、IBMの真意は測りかねるので、あくまで一般論として、『既存事業者を破滅に追い込むような革新を進めることで、企業価値を急拡大させる「破壊者」路線はとらない。』という言説について、考えてみました。この言説に違和感を覚える点は――

① 『既存事業者を破滅に追い込むような革新』というのは、第1次産業革命以来、今世紀現在進行形の第4次産業革命まで、ずっと続いてきた進化(イノベーション)そのもので、これを十把一絡げに『破壊』というネガティブ・イメージで表現するのはおかしい。② 企業が激しい競争の中で事業を推進する上で、競合する企業にダメージを与えない、という事がありうるだろうか。③ イノベーションの良し悪しを論ずるのならば、BtoC視点での考察も欠かせないはずである。

つまり、イノベーションにあっては新旧の交代は否応なく起こるもので、これを『破壊』と捉えて否定することは、広く人類共同体の進化を否定するに等しく、また、否定したところで、いずれ誰かがイノベーションを起こすことは避けられないと考えるのです。『破壊者』路線を取らないという表現は、イノベーションというものの本質への理解不足との誤解を受けかねず、いささか綺麗ごとめいていると思います。もちろん、企業がパートナー企業と共存共栄、という事は大いにあり得ますが、破壊しないというのは言い過ぎではないでしょうか。イノベーションというものを考えるに当たっては、これを『破壊』として全否定するのではなく、イノベーションが人類共同体にもたらす価値(プラス面)を確認した上で、その悪影響(マイナス面)をしっかりと押さえておかなくてはなりません。私は、それは主に3点あると思います。イノベーションは一部の先進的な企業によって急速に進みますから――

① 人的リソースの再配置がスムーズに推移するような施策が必要となる。② 特定の分野で特定の企業への集中が一定の限度を超え寡占とならないような施策が必要となる。③ 革新的な技術・ビジネスモデルがもたらしうる負の側面(AI脅威論・フェイクニュース・データ流用など)を管理・規制する施策が必要となる。 

イノベーションが進展する過程で生ずる歪は、これら対策(施策)の遅れで致命的なダメージを及ぼしかねず、その事が逆に、『革新』=『破壊』というイメージを助長するのだと考えます。その傾向が行き過ぎると、イノベーションそのものにブレーキがかかりかねず、バランスの取れた迅速な対応が望まれます。

ちなみに、イノベーションが止めることのできないもの、急速に進むものだ、という点に関しては、日経電子版にとても興味深い記事があるので添付しておきます。イーロン・マスク氏のことを忘れてはなりません。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28542580U8A320C1000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27895660Y8A300C1000000/

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