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『天使の翼』第11章(80)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 初めて間近に見るSSIPの制服は、大公国のハウス・カラーであるグリーンのくすんだ感じで、型は、前宇宙時代的な軍装だった……特徴的なのは、制帽が、普通のタイプより明らかに丈が高い……
 三人の男達は、油断なくわたし達三人の身の回りと室内に視線を配った。
 部下二人は、恐ろしげなニードル・マシンガンの銃口を、ぴたりとわたし達の胸の辺りに向け構えている……黒光りのする異形の生き物のようなマシンガンの銃口は、あまり見詰めていると吸い込まれそうだった。
 「あなたから、一人ずつ、身分証明を呈示してもらう――」
 指揮官が、何故かわたしを指さした。
 「――ポケットに手を入れる時は、ゆっくりと」
 わたしは、彼の目をひたと見据えながら――わたしは、本番……いざその時になると妙に落ち着いて度胸が据わるのだが、正直言って、怖気づくことなく半ば反抗的に見返すことが、作戦上いいかどうかなど、考えているゆとりはなかった――、言われた通り、ゆっくりと黒のコートの前をはだけ、ジーンズのスカートのポケットに右手を差し入れて携帯端末を取り出した。

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