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ビジネスを考える

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2019年11月の記事一覧

ローテクを切り捨てるリスク

 日経電子版の記事【風力を貨物船の推進力に 金沢工業大が帆の素材を開発】は、貨物船に帆を取り付けて、その風力エネルギーと、従来からのエンジンを合わせて推進力としようという施策をリポートしたものです。  このような施策は、温暖化ガスの削減を狙ったものですが、そもそも、蒸気機関が発明され、蒸気船が登場し、その外輪船が、効率的なスクリューに置き換わっていく過程で、何故、帆船、帆を使って風力エネルギーを推進力にするテクノロジーが廃れていってしまったのでしょうか?  ――合理的に考

もっとあっても良い、伝統的食材と大手食品メーカーのコラボ

 日経電子版の記事【唐辛子使う新潟の発酵食「かんずり」、カップ麺など開発 信越ビジネス最前線】は、「西の柚子胡椒、東のかんずり」などと並び称される新潟の代表的な辛み調味料「かんずり」とカップ麺などとのコラボに関するリポートです。  伝統的な食材、地方色豊かな食材、地域の名店の味など、文字通り「知る人ぞ知る」で、未だ全国区の「ポピュラー」な食品にはなっていないものを、大手食品メーカーのブランドに、原料として活用し、テイストとして使うなどして、個性的な派生商品、シリーズ商品を生

D2C的なモールとは

 日経電子版の記事【集客のカリスマ 美容モールって何?】は、カリスマ的な個人事業主によるヘアカット・トリートメント・ネイルケアなどビューティー系の10のショップが集まった「THE SALONS」に関するリポートです。  この個性的な「美容モール」の記事の中で最も印象深いのは、その特徴を示す「7つのポイント」です。その部分をピックアップしてみると―― ▶「美容モール」の7つのポイント① 1フロアに集結しており、様々なサービスを受けたいユーザーにとって  は時短となる。 ②

これはD2Cのお手本かも知れない

 日経電子版の記事【6期連続で売上高減 転機はユーザーとの対話だった スノーピーク「楽しいまま! 」成長を続ける経営】は、ユーザーと社員が本音で語るイベント「スノーピークウェイ」を通して経営改革が進んだ、というリポートです。  この記事を読んで真っ先に思い浮かべたのは、①SNSなどを通じて消費者とコ・クリエーション(価値共創)しながら、②自社で企画・製造(ファブレスも)したプロダクトを、③中間流通をなくした自社サイトなどで直販する(販売価格を抑えられる)『D2C(ダイレクト

カラオケルーム✖ライブ配信=これはイノベーションかも知れない

 日経電子版の記事【カラオケルームで「フェス」満喫 ライブ映像を配信】は、通信カラオケ大手エクシングの、カラオケルームに音楽などのライブ映像を配信するというサービスについてのリポートです。     イノベーションとは何か、最も分かり易いのが、今までになかった異質なもの同士の結合で生まれる新しい体験価値です。  その意味で、『カラオケルーム✖ライブ配信』という試みは、一般論として卓越したもの、ポテンシャルを感じずにはおれません。  例えば―― ① 大画面・高精細・高音

データがデジタル化され共通語となる時に何が起きるか?

 日経電子版の記事【ヤフー・LINEが狙うスーパーアプリ 上海で体験】は、記事から引用するなら「現金による支払いをキャッシュレスに置き換えるモバイル決済アプリ。しかし決済だけが目指すゴールではない。タクシー配車やモバイルオーダー機能を組み込み、サービス利用から支払いまでをシームレスにつなげる」という『スーパーアプリ』に関するリポートです。     そもそも、このような事が可能となるのは、個人情報・決済・配車・予約など様々なデータがデジタル化され、共通の情報基盤として活用可

アートとビジネスの同質性

 NIKKEI STYLEの記事【仕事に生きる能力を鍛える アート鑑賞ワークショップ】は、改めて、ビジネスにおけるアート思考の有意性を考えさせてくれます。  例えば、アートと科学・技術の間には共通する基盤、ベースとなるものがあるのではないか?  ――そんな事を思い起こさせてくれる存在の一人が、レオナルド・ダ・ ヴィンチです。レオナルドの偉業の数々を見た時に、芸術的な業績と、科学・技術的な業績とで、それを成し遂げた人間が別人格であった訳ではありません。  ――一人の偉大な

テクノロジーとスキルの腐れ縁

 日経電子版の記事【トヨタ、海外工場が3Dプリンターに飛びついた理由】は、日本で世界をリードする新しい生産技術を生み⇨国内工場で展開⇨海外工場に「横展」するのが基本のトヨタにあって、一見意外な事に、海外の方が3Dプリンターの実用化に積極的、というリポートです。     記事では、そのような現象の理由として、わざわざ3Dプリンターを使わなくても試作車を作り上げてしまう、試作部門の技術力の高さが挙げられています。  確かに、一般論として、既存のテクノロジーを使いこなす高度な

『ジェスチャーインターフェース』のポテンシャルと課題

 日経電子版の記事【家電「手かざし」操作、日本へ ルネサスなど開発急ぐ】は、レーダーで手振りなどを検知してスマホなどを操作する、という『ジェスチャーインターフェース』に関するリポートです。  レーダーや画像認識の人感センサーなどで、手振り・身振りなどを検知し、機器を操作するジェスチャーインターフェースと言えば、かの名作映画「マイノリティリポート」のようなSFの世界を思い浮かべますが、いよいよゲームの世界を飛び出し現実の世界での活用が広がっていくようです。  そもそも、この

千葉ロッテに学ぶサービスのデザイン

 日経電子版の記事【熱狂呼ぶ千葉ロッテ エンジニア流ファンの作り方】は、「12球団屈指の熱狂的な応援を受ける球団」千葉ロッテの仕掛けに迫った好リポートだと思います。  そもそも、スポーツ観戦というサービスは、相手チームもあり、勝ち負けもあって、勝敗という事だけにこだわるなら、サービスの質を維持するのがきわめて困難な、ムラのあるサービスという事になってしまいます。しかも、それじゃあ勝ちっ放しの常勝チームであれば良いかと言うと、それではスポーツ、勝負事の醍醐味がまったくなくなっ

これはプロシューマー(生産消費者)の原型かも知れない

 日経電子版の記事【キャンプ2000泊! アウトドアパーソンのまま東証上場 スノーピーク「楽しいまま! 」成長を続ける経営】は、「アウトドアパーソンを体現すべき企業である以上、アウトドアパーソンであって、そのうえでビジネスパーソンであることが基本」というスノーピークに関するものです。    アウトドア用品の企業が躍進するには、何よりもまず、そこで働く者がアウトドア大好きな筋金入りのアウトドアパーソンであること……すんなりと腹落ちできるセオリーですが、この事例は、生産者が消

理性としてのAI

 日経電子版の記事【ニシキゴイの価値、AIで算定 新潟・長岡で試み】は、AIによってニシキゴイの価値を客観的に算定するシステムを開発しようという動きをリポートしたものです。  そもそも、記事によれば、ニシキゴイの価値は、品種・体長・体形・色彩(濃淡・模様のバランスなど)・泳ぐ姿(優雅さなど)・親ゴイの系統などから客観的に評価されるべきものだと言います。  しかし、ニシキゴイに限らずモノの評価にあっては、人間による評価という現実がつきまといます。  ――時代の流れに伴う流

イノベーションのキーワード満載の「ネイルプリンター」開発

 日経電子版の記事【自動マニキュアや爪替え放題も 時短サービス続々】は、カシオ計算機とコーセー化粧品が協働で、機械が自動で爪にマニキュアを塗る「ネイルプリンター」を開発したというリポートです。     この記事、「なるほどね」とは思いつつも、危うくさらっとスルーしてしまう所でした。しかし、熟読してみると、この卓越した商品の開発にはイノベーションのポイントとなるキーワードが満載なのです―― ▶「ネイルプリンター」開発に見るイノベーションの  ポイント(1)『異業種の参入』

再発見されるリアル店舗の価値

 日経電子版の記事【ウォルマート最高値、見直される実店舗の価値】は、ネットとリアルの融合でアマゾンエフェクトの猛威に立ち向かうウォルマートの好業績をリポートしたものです。  記事では、そんなウォルマートのネット通販事業の切り札として、「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字を取った「ネットで購入して店舗で受け取る」サービス『BOPIS(ボピス)』が取り上げられています。  注目すべき『BOPIS』のサービスについては、折に触れて考えてきましたが、