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コロナ下、上海はどう日常に近い状態に戻り、日本はどのくらい続きそうなのか

日本で東京含む7都府県では4/8から、また全国で4/16から緊急事態宣言が出されたが、現在、住んでいる上海がどのような経緯で、どのくらいの期間を経て元にもどったのか、なるべく一次情報のファクトベースで整理してみた。

この記事のトピック
・厳戒体制から平常に戻るまでの経緯と時間
・日本をどうやって戻していくのか?を考えるヒント(ほんのオマケ)

東京、5/6には人が外に普通に出られる状態にはならなさそうだと、多くの人が薄々と(?)思っていると思うが、そう腹を決めると思い、どんな感じで上海の空気が緩まってきたのかを見ていただけると良いと思う。

*自身、2月一杯は東京にいて、3/1に上海に戻ったので、2月中に関しては、その期間に上海にいた知り合いを通じた2次情報となる

前提:湖北省以外での感染数・死亡数はかなり少ない

今の日本と比較すると、上海を始め湖北省以外では東京・大阪ほどの状況にはならなかったというのが実際のところ。

下の表は4/18時点での発表数。
感染者・死亡者・破壊度で、武漢 > 湖北省 > その他地域できっかり3レイヤーでわかれている。(武漢の数字は追加訂正後)

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感染インパクト度度合いを見る上では、2つ目の100万人あたり死亡者を見てもらうと、一番、検査数等の影響が少ないと思われる。
表は、4/18時点の数字だが、4/22現在
・東京都だけで71名の死者。これは湖北省以外の中国の死者の半数を超える
・すると東京都では100万人あたり死者が7.6人(2倍の人口の上海は0.29人)
になっている。
余談だが、武漢レベルを超えているのは、世界でもスペイン・イタリア・ベルギーの3カ国のみ。

上海での打ち手、時系列

上海は、3月下旬には体感値で7~8割程度、武漢封鎖解除後の4/8以降はほぼ平常の人の出になっている。

Case数と、とってきた打ち手の時系列は下記の通り。
黄色枠は上海市政府、緑枠は中国政府の要請を示す。

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初期の対応の速さが際立っており、1/22の武漢閉鎖後、1週間以内に春節の1週間延長+インフラ・生活インフラ(スーパーなど)・医療以外の経済活動の停止の発令、さらに1週間以内に企業補償・リモートワークの強い推奨と就業開始のための要件発令を行った。

その結果、感染数を抑え、最小限に近い影響で乗り切ったと思われるが、それでも、1/27の春節延長発表以降、平常時の人の往来が戻るまでに2.5ヶ月程かかっている。

下記では、段階的にどう変わってきたのかを紹介している。

強い抑制(3週間:~2月一杯)

実はこの時期、市民に「外出規制」自体はでていない。このような生死に関わる病気を怖がるという国民的習性や武漢の実情の様子がSNSなどで流れていたせいか、殆ど誰も外に出ない状態が続いた。また、そもそも、出ても、どこもオープンしていないということもある。

実際に起きていたのは下記のようなこと。

▼2/9までインフラ、医療、生活インフラ(スーパー等)以外の一切の業務停止。

▼2/9後も、区 / 地域 / ビルオーナー の3レイヤーで、飲食店、娯楽施設(カラオケ、ビリヤード、マッサージetc..)が営業復帰可能かどうかがコントロールされた。
区・地域にも政府の出先の機関が存在しそこがコントロールをかけているのだが、市が認めても区がダメ、区が認めても地域がダメだったら営業できないという状況。
ビルから感染者が出ると、場所が公開される上、どうも、最終的にはそれを判断した人に責を課すというルールがあったようだ。(*ここについては噂レベルなので、ファクトを知っている人がいれば教えて欲しい)

▼一般企業も2/9以降、開始可能だったが
1. 強いリモートワーク推奨という強いメッセージ
2. 感染者がオフィスから出たら、社員全員が2週間強制隔離という高リスク
3. エアコンは強制換気無しのものは使えない(2月の上海では地獄)
4. 席はお互いに1m以上離れないといけない
というような状況で、2月からフルでオフィス就業開始した企業は殆どない。周りに聞いても、多くはリモート就業や輪番出社などを採用していたようだ

▼また、企業活動の再開にあたっては下記が必須だった。
・就業開始には、全メンバーの氏名、身分証番号、電話番号、過去2週間にどの都市に行ったかの移動履歴の提出
・就業開始後はビルへの入館証と検温必須
・社内でも毎日検温、結果記録(-> 4/23現在まだ続いている

▼マスク装着、移動軌跡記録の徹底
・外ではマスク装着が必須に。
・上海市の地下鉄にマスク無しで乗ろうとし、逮捕された人のニュースも
・地下鉄車両のQRコード読み込みによる記録
・飲食店等に行った際も、氏名、電話番号を記録。入る際には随申码(随申コード)での、自分が安全であることの証明、検温、消毒
・そもそも、飲食店も、席をとびとびでしか人を座らせない(これは義務付けられていた可能性もある)

徐々に回復(3月頭~3月3週目)

3/1に上海に戻ってきたが、体感で60%くらいのレストランなどが開いていたが、殆ど誰も外に出ていない状況が続いた。3月頭は10%程度、下旬でようやく50-60%くらい人が出始めるようになったか、という感じ。
なお、通常30分でデリバリーされるネットスーパー(盒马)は、3月頭の1週間、1.5~2時間遅れ、2週目でも30分遅れなどが常態化していた。
2週目の後半あたりからは、通常の30分内配送に。

このときに続いていたルールは、下記のようなもの。

▼住居区の出入り時の通行証提示・検温
・2月から継続
・住んでいる人は通行証を発行してもらう
・持ってない人は、住居区の壁の中に入れない
※上海ではアパートや家は、必ず一定のエリア(住居区)として管理されている。そして、その周りには壁があり、門が設けられているため、こうなると友人同士の家を自由に出入りできない。

▼食べ物デリバリー・宅急便配送者の住居区からの締め出し
・上記に従い、住居区の壁の中に、配達員は入れない
・住居区毎の一括置き場所が臨時設置され、そこに全てが置かれる。

▼多くのオフィスビル・住居区で国外からの帰国者の2週間自宅隔離を推奨 or 強制(政府のオフィシャル通達が出る前から)
・住んでいる住居区は、2週間、あまり外出しないことを推奨
・会社が入っているオフィスビルは2週間出社禁止
だった。

▼各ショッピングモール・飲食店での検温

▼飲食店での個人情報提出と消毒・検温

平常モードへの以降(3月3週目~4月2週目あたり)

3月3週目以降、更に1ヶ月程かけて80~90%程度の人出に戻ってきた。
4月に入ってからは、ショッピングモールの検温もなくなり、上海市内にいる限り、ほぼ、通常の生活に戻っている。

一方で、
・飲食店での検温や随申码の提示要求を続けている店舗もあり
・海外から帰ってきた人の全件PCR検査と2週間の強制隔離
・公共場所ではマスクが原則、地下鉄検温の継続、オフィスでのマスク着用・毎朝検温
・人が集まる商業施設の営業コントロール
などは続いており、まだ暫く付き合うことになるルールになりそう。

「商業施設のコントロール」の例としては、カラオケボックスは一度開いたが海外持ち込み症例が増えたあたりで再度休業、映画館も一度開くというアナウンスがあったが、撤回され、現時点では2020年内一杯は休業の見込みなど。症例数の増加などを見ながら、緩めたり締めたりしている。

では、日本ではどのくらい続くのか?

上海で上記くらいの厳しさで2.5ヶ月かかっている(ちなみに、武漢は更に厳しい措置をとった上での、3ヶ月弱で封鎖解除)ので、現段階のレベルの非常事態宣言では、日本が90%くらいの平常度に戻るには、直感的には3ヶ月では足りないレベルになると思われる。

というのも、非常事態宣言下でも、オフィス出勤をせざるをえない状況だった人も大勢おり、狙ったどおりの抑制効果は得られないと思われるからだ。

"8割おじさん"の記事によると、80%減を達成できて、1日の感染者数が減り始めるまでに30日なので…今の状況だと1日の感染者数が減り始めるまでに60日くらいかかり、更に活動再開まで1ヶ月~2ヶ月というところだろうか。

他方、BCG日本株による免疫を日本人が持っているという希望がある。
免疫を持つ人が多ければ、外部活動はそれを持つ人から始める段階的シナリオも選択できるようになり、他の国よりも早いテンポで、回復~次の1歩への動きを進められる可能性はある。

しかし、上海を見ても思うが、状況が収まったとしても、完全にコロナ前と同じということはないだろう。
今、頑張りどころだが、"頑張って元の状態に戻ることを信じて乗り切る"のではなく、ちょっと変化するであろう状況で、どんなチャンスがありそうなのかを見つつ、いつも通りの力でやるにはどうできるのかを考えながら頑張るのが必要なタイミングだと思う。

なお、GDPが-6.8%の発表があったとおり、中国経済、結構ダメージが来ている。次のエントリでは、そのあたりをブレイクダウンしてみようと思う。


# 2020.4.29追記
下のようなブログが公開されていた。
このファクトに基づいて、ちゃんとデータがトラッキングできるようになれば、日本も段階的緩和が早い段階に可能になるのではないか。

中国は、まだ全然分析できていない状態だったからとりあえず強い一手を放ったが、そろそろ色々と分析できているはずなので、適材適所な打ち手が打てるはず。
「平常」にならなくとも、感染抑えつつの活動再開は可能なはず。
(ただ、締めるべきところはしっかり締めて)

上記ブログのポイントは、2つ。
①感染力・死亡率が共に高い高齢者は出歩かせない。若い人中心に経済をまわす
②感染リスクが高く、行った人も言いたがらず(~追跡不能になる)、クラスタ潰しを不可能にしてしまうクラブ・キャバクラ・風俗は営業停止
→ここは手厚く補償(もしくは、必要に応じて来客の実名・身分を承諾した店のみ営業というのもありだけど、日本だと、特に銀座・赤坂あたりだと受け入れられなさそう)



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