見出し画像

NHK 実践!英語でしゃべらナイト グローバルイングリッシュ12の心得-3「Tell me about yourselfに慣れよ」


グローバルイングリッシュ12の心得と48の秘訣第3回

まずは自分を語れ!Tell me about yourself.に慣れよ!

 ある日本企業に勤めるエンジニアの山田さん。自社が買収した米国企業との協業のキックオフミーティングに参加するために、シカゴに到着しました。ミーティングは1週間。最初の2日は空港近くのホテルで、プロジェクトチームの連携を円滑にするためのチームビルディングセッションがおこなわれ、その後の3日間は、買収先の米国企業のR&Dセンターで引き続きミーティングがおこなわれます。
 初日の朝、山田さんがホテルの会議室に入ると、すでに8人のほかのプロジェクトメンバーが到着しています。彼らは、コーヒーとドーナツやベーグルを片手に談笑していました。山田さんは慌てて、部屋の隅に用意されていたコーヒーを手にしながら、「コ」の字型に並べられたテーブルに着きました。ミーティングの開始です。ファシリテーター(facilitator 進行役)が、自己紹介と会議の趣旨を述べたあと、山田さんを指名してきました。

Now, it’s your turn. As I mentioned before, this is a half-year project. So knowing our team members is a critical first step towards our success. You have three minutes to introduce yourself. All right. How about Mr. Yamada? Tell us about yourself!

(では、皆さんの番です。先ほど述べたように、これは半年間のプロジェクトです。そこで、チームメンバーを知ることはわれわれの成功のために大事な最初のステップです。3分間で自己紹介をしてください。よろしいですか。山田さんからお願いできますか? ご自身のことを語ってください!)

 「自分を語れと言われても……どこまで話せばいいのだろう?」。山田さんは戸惑いながら、Good morning, everyone.とまずあいさつをしましたが、さあ、このあとは、どう続ければいいのでしょうか。


グローバルビジネスでは「初対面」が重要

 グローバルビジネスの特徴の1つとして挙げられるのは、「初対面」の人と働く場面が圧倒的に増えることです。そしてそれが重要な意味合いを持ちます。もちろん国内ビジネスでも、新しい取引先や初対面の顧客に出会うことは多々あります。しかし、同じ日本人同士なら、出身地、出身校、年齢などから何らかの接点を探し出して会話の糸口を見つけることが、それほど難しくはないでしょう。
 ところが、グローバルビジネスではそうはいきません。以前にも述べたとおり中国語で「全球化」と書き表すグローバル化では、まさに世界中の人と働く機会が増えるのです。しかも、国内ビジネスならば、上司、先輩、あるいは前任者が同行して取引先や顧客を紹介してから引き継ぐのが慣例ですが、グローバルビジネスでは、山田さんが経験しているように、いきなり、「単独」で乗り込まなければならない場面が出てくるのです。
 そうなると、自己紹介はとても重要です。自己紹介で相手に自分をしっかり知ってもらうことは、山田さんが参加しているキックオフミーティングのファシリテーターの言うとおり、ビジネスを成功に導く第一歩なのです。


自己紹介はプレゼンテーションの基本

 そこで、最初に覚えておきたいのは、「自己紹介はプレゼンテーションの基本である」という点です。日本でおこなわれる自己紹介は、社外では「●●社のXXXです」、社内では「■■部のXXXです」のように、社名や部署名に続けて自分の名前を言えば終わりというパターンが多いのです。それでもまったく問題なく仕事の関係が始められる理由は、日本が均質性の高い社会であることに起因していると考えられます。多くを語らなくともお互いに理解できるという隠れた前提があります。けれども、このやり方はグローバルビジネスでは通用しません。My name is Takashi Yamada. I belong to the XXX division of ●● company.と言うだけでは、決してうまくいきません。それこそ、聞いている人からTell me a little bit about yourself.と言われてしまうでしょう。多様性の高いグローバルビジネス環境では、自己紹介もプレゼンテーションだと認識し、名前を言うだけではなく、しっかりと自分のことを語ることが求められるのです。


英語でも空気を読むことは大事

 何を語るのかについては、次のページから紹介します。その前に重要なことをもう1つ述べておきます。それは、英語でも「空気を読む」ことが大切だということです。置かれた状況や雰囲気を感じ取りながら、適切な自己紹介をおこなわなくてはなりません。
 具体的には、次の4つの観点を考慮しながら、何を話すべきかを組み立てます。①Purpose(何のために自己紹介をするの?) ②Audience(誰に向かって話すのか? 聞き手は誰か?) ③Time(所要時間は?) ④Degree of formality(どれくらいフォーマルか? どの程度カジュアルでもいいのか?)
 例えば山田さんが直面している状況では、ファシリテーターが①と③を述べています。②はこれから半年間、プロジェクトを一緒にやっていくメンバーです。それならば、彼らから信頼を得られるようなことを何か言ったほうがいいでしょう。意外と忘れてしまうのが④です。このキックオフミーティングは、例えば新任の役職者のあいさつよりも、かなりカジュアルな雰囲気であるとことは容易に察しがつくはずです。しかも、3分もあれば、自分の趣味や嗜好、あるいは家族のことなどプライベートな部分にも多少触れて、相手に親近感を持ってもらうことができるはずです。
 ぜひ、インパクトのある自己紹介を実践してください。


グローバルイングリッシュの秘訣9 ー基本はShow&Tell にあり

 海外赴任を家族同伴で経験した人は、異口同音に言います。「子どものほうがはるかに英語がうまくなった!」。これは英語圏はもちろん、英語圏ではないインターナショナルスクールに通ったお子さんがいる方も含めてです。確かに、年齢が低いほうが耳が早く慣れて、外国語を習得するのに有利であることは間違いないようです。ただし、それ以外にも、学校教育の違いを指摘する人が少なくありません。その違いとは、海外のほうがプレゼンテーションの機会が多いことです。中でもよく知られているのが、Show&Tellという手法です。これは文字どおり「見せて、話す」というやり方で、幼稚園や小学校低学年では頻繁におこなわれます。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語を母語とする国だけではなく、香港、シンガポール、あるいは欧州のインターナショナルスクールでもおこなわれています。
 Show&Tellは、こんな感じです。まず、先生が児童・生徒に「明日はShow&Tellです。家から皆さんが大事にしているものを1つ持ってきてください」と伝えます。そして、翌日は、子どもたちが1人ずつShow&Tellをおこなうのです。例えば、次のとおりです。

I chose this.
As you can see, it is a soccer ball.
The reason why I brought this one is that
my grandpa gave it to me three years ago.
I love my grandpa so much.
So that’s why this is very special for me.

 Show&Tellでは、ほかの子どもたちからの質問も受けます。つまりQ&Aもあるわけです。簡単なようですが、ここには実はプレゼンテーションの基本が含まれています。
 ◦結論を最初と最後で言っているのでわかりやすい。
 ◦多くの生徒の前でものを見せながら話す習慣を身に付けられる。
 ◦The reason why~と理由付けをする、つまりロジックを明確にする練習になる。
 このShow&Tellは、大人もビジネスで応用できるのです。例えばシカゴを訪れた山田さんが自己紹介で次のように言うと、ほかのメンバーからの好感度が一挙にあがります。
I like working as a team member.
(チームのメンバーとして仕事をするのは好きです)
The reason why I enjoy this kind of team is that I can meet many people who have very different backgrounds from mine.
(このようなチームでの仕事が楽しいのは、私とはまったく異なるバックグラウンドを持つ多くの人と出会えるからです)
So I look forward to working with all of you over the next six months.
(ですから、これから6か月、皆さんと働くのを楽しみにしています)

 まさにプレゼンテーションの基本形はShow&Tellなのです。われわれもこうした基本を身に付ければ大丈夫です。ぜひ、練習してください。


グローバルイングリッシュの秘訣10 能ある鷹は爪を見せてもいいんだ!

 皆さんは英語の履歴書を書いたことがありますか? 英語の履歴書と日本語の履歴書には大きな違いがあります。
 まず、日本語の履歴書に書く、性別、年齢は英語では書きませんし、企業もこれらを最初から要求することはできません。また日本語の履歴書は写真添付ですが、英語では基本的に写真は付けません。写真によって差別にならないようにという配慮です。ほかにも違いがありますが、記述内容の特徴をひと言で言うと、「属性を書く日本、実績を書く英語圏」と言えるでしょう。日本の履歴書では、学歴については、入学・卒業の履歴を場合によっては小学校にまで遡って書きますし、職歴は●●社入社、■■部勤務、その後、▲▲部へ異動というように、「どこに属していたか」を書きます。一方、英語の履歴書では、確かにどこに属していたのかについても書きますが、そこで「何をしたのか」が重要になってきます。
 この履歴書の違いが自己紹介にも表れやすく、所属部署だけを述べるような自己紹介の例が多く見受けられます。
I belonged to the ■■ division. Then, I was transferred to the ▲▲ division.と述べるだけでは、受動的にしか聞こえませんので、本当の自己紹介にはなりません。
 そこで覚えておきたいのは、英語環境では「能ある鷹は爪を見せてもいいんだ!」です。ただし、くれぐれも誤解しないでほしいのは、単なる自慢話はどこの国でも嫌われます。行き過ぎるとBe humble!と言われてしまいます。
 「自慢話」にならずに「爪を見せる」ためのポイントは次の4つです。①「聞かれたら、語る」が基本。②「聞かれてはいないけれども、相手が知っておいた方いい実績」には触れてもいい。③実績は客観的に述べることを旨とし、主観的な修飾語は避ける。④Iとweの使い分けをする。
 ①と②については、先に述べたように「空気を読むこと」が要求されます。聞かれてもいないのに、余計なことを語っては自慢話になります。山田さんのように、プロジェクトチームに参加した状況では、専門分野を明確に述べておくことが重要です。そこでMy area of expertise is statistical analysis for quality assurance.(私の専門は品質保証のための統計分析です)とか、I majored in chemistry in my undergraduate studies and have a master’s degree in chemical engineering.(大学では、化学を専攻し、化学工学の修士をとりました)などと、大学や大学院での専攻を述べてもいいわけです。
 ③について補足すると、自分のしたことにgreatとかexcellentというような表現を付けるのが望ましくないことは言うまでもありません。客観的な事実を言えばいいのです。その際には④で示したように、Iとweの使い分けを上手におこなうと、個人の実績と同時にチームワークを大事にしていることも表現できます。例えばTwo years ago, I had an opportunity to join a cross-functional project team as a project leader. We managed to cut production costs by 30%. That was a record for our company.(2年前、私は部門横断的なプロジェクトチームにプロジェクトリーダーとして参加しました。われわれは、30%のコストカットを達成しました。それは、わが社の一番の記録でした)
 能ある鷹は爪を見せてもいい。覚えておきましょう。


グローバルイングリッシュの秘訣11 相手の記憶に残る工夫を

 山田さんの事例で見たようなプロジェクトメンバーの紹介ならば、Tell us about yourself.と言いますが、使用頻度として高いのは、Tell me about yourself.です。つまり相手が1人で、こちらも1人。例えば、新任の上司が部下と1人ずつ面談をおこなうとき、あるいは、訪問した企業で1人ずつヒアリングをする場面などが思い浮かびます、山田さんの事例で言えば、R&Dセンターで会う人がTell me about yourself.と言ってくる確率は高いでしょう。新しい仲間とランチやディナーに一緒に行くときなど、インフォーマルな場面でも頻繁に聞かれるフレーズです。いずれにしてもTell me about yourself.と聞かれたら、相手はあなたのことを知りたいのですから、気負うことなく、自分を語ればいいのです。そうすれば、相手もあなたのことをしっかり覚えてくれるでしょう。
 大事なのはパーソナルタッチ(personal touch)です。つまりあなた自身の持ち味を出すことです。具体的には次のことを心がけておくとよいでしょう。

コツ1 ポジティブな感情をストレートに

 ビジネスでは、ポジティブな感情を率直に述べることが重要です。例えば、I’m pleased to join this team.(このチームに参加できてうれしいです)という表現だけではなく、もっとその気持ちを強く表すI’m excited to join this team./I’m thrilled to join this team./I’m delighted to join this team.といった表現のバリエーションを持っておくとよいでしょう。

コツ2 本音を述べるときにはひと工夫を

 日本人としては、最初は上記のような表現を使うのに抵抗があるかもしれません。あるいは照れてしまう人も少なくありません。もちろん、気持ちが入っていなければ逆効果にもなります。後ろ向きな発言や弱気なコメントは相手にいい印象を与えません。けれどもこちらが緊張していることや、慣れない場面でプレッシャーを感じていることを伝えることは可能です。ただし、そのときにはひと工夫が必要です。例えば次のように。

Frankly, I feel a little pressure when I speak English. However, I should remember what I’m always telling my ten-year old son whenever he has a baseball game. That is, “Just relax! You’ll do fine!”
(率直に言うと、英語で話すことに少しプレッシャーを感じています。でも、私が10歳の息子に、野球の試合があるときにいつも言っていることを思い出さなければならないでしょうね。「リラックスすれば大丈夫だから!」と)

 こんな風に言えば、ほのぼのとした笑いも取れるでしょう。つまり、ひと工夫とは、多少のユーモアのセンス、聞き手が身近に感じられる事例、そして率直に語ることです。
 以上のことを少し心がけるだけでも、あなたの「語りのインパクト」は増加し、相手の記憶に残るでしょう。


グローバルイングリッシュの秘訣12 Story-tellingを磨こう

 国際会議や海外の学会に出席した日本人が苦労するのが、休み時間やカクテルパーティー、そしてディナーのときの会話です。
 「ビジネスの話題なら話すことがあるけれども、初対面の人といきなり仕事以外の話をするのは難しい」と述べるビジネスパーソンは少なくありません。そもそも日本語でも、このような場面で会話を続けることはそう簡単ではありません。「話題が続かないから、すぐNice talking with you.と言って、次の人を探してしまうんですよ」と立食パーティーの経験を語ってくれた人もいれば、「コースメニューだと、着席しているのでテーブルから逃げられないからつらいですよ」と述べた人もいました。
 苦手意識ばかりを持つよりも、まずは少しずつ努力しながらでも、慣れることが重要です。He [She] is a good story-teller.は話し上手であるという褒め言葉です。これまで紹介してきたことを積み重ねていけば、誰でもa good story-tellerになることができます。
 博士号を持つある日本人は、国際会議で上記のようなインフォーマルな時間の会話が重要だと気づき、語る力を高めるためにカルチャーセンターでワイン・テイスティングのクラスを受講し始めました。「ワインならヨーロッパ、アメリカ、南米、そして日本と有名な産地が世界各地にありますし、特にパーティーのときは話題に困らないんですよ」と教えてくれました。ワインに限らず、身近な話題から始めればいいのです。食事やスポーツ、あるいは泊まっているホテルでの体験談などから始めれば、相手も会話に参加しやすいでしょう。
 もう1つ大事な秘訣は、逆接的に聞こえるかもしれませんが、相手に質問をすれば会話の糸口を見つけることができるということです。5月号の≪心得2≫の「秘訣3」で「聞き上手は質問上手」と紹介しましたが、質問力を高めることは、語る力を鍛えることにもなります。
 例えば、会議の開催地に何度も来ている人や地元の人が相手なら、Could you recommend any places I should visit this weekend? (週末、訪問するのにお勧めの所を教えてもらえますか?)、あるいはWhat is your favorite food in this area? (この地域で一番好きな食べ物は何ですか?)と聞けばよいですし、相手も初めて来ているのならば、Are you planning to do any sightseeing after the conference? (会議のあとで、どこかに観光をしますか?)、あるいはWhat are the best restaurants that you have tried so far? (今まで行ってみた中で一番よかったレストランはどこですか?)などと尋ねてみるのもいいでしょう。
 質問をして相手がおもしろい話をしてくれたら、それは大いに参考になります。その意味で、相手にもSo tell me about yourself!と遠慮しないで聞くことにもトライしてみましょう。

【NHK実践!英語でしゃべらナイト】
 グローバルイングリッシュ12の心得シリーズ

【第1回】グローバルイングリッシュ12の心得-1
「グローバルイングリッシュという発想」

【第2回】グローバルイングリッシュ12の心得-2
「Active Listening
」 

【第3回】グローバルイングリッシュ12の心得-3
「Tell me about yourself
に慣れよ」

【第4回】グローバルイングリッシュ12の心得-4
「オープンマインドの本質」

【第5回】グローバルイングリッシュ12の心得-5
「ハイスピードに慣れよ


グローバルイングリッシュの秘訣シリーズ全12回(元記事)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?