米国自動車保険市場の動向と従量課金型自動車保険サービス『Metromile』

従量制自動車保険のMetromile、カリフォルニアに進出

上記の記事にもありますが、アメリカでは従量課金型自動車保険の潮流が存在するのです。テクノロジーが発展してきて取得できるデータが活用されつつある今日、自動車保険の課題を解決する大きな一手となっています。
そこで、調査した自動車保険市場の概略と注目のスタートアップ『Metromile』を公開します。稚拙ですが興味ある方はご覧あれ。

【米国の自動車保険市場】

(参照Nasdaq)
市場規模:$1860億(2014, 総収入保険料)
これは保険市場全体の約35%を占める。
増々市場は大きくなる見込み。2017年には$2000億突破。2022年には$2270億とも言われている。
予想される要因は二つ
①自動車の売り上げ台数が増々伸びる
②金利と債券利回りが向上する→保険会社への投資が増大する。
Big4の存在 (StateFarm, Geico, Allstate, Progressive)
この4社が48.38%(2014)のシェアを保持。1.27%↑(2013年比)

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Metromile
【概要】

2011年設立の自動車保険のスタートアップ企業
カリフォルニア州サンフランシスコで、気候予測サービス企業Climate Corporationの創業者であるデビッド・フライドバーグ氏と、携帯電話補償サービス企業Asurion出身のスティーブ・プレトール氏によって創設。
2012年12月、ユーザーの運転走行距離を捕捉する携帯無線付GPSテレマティクス装置「Metronome」を利用した従量制自動車保険の提供を開始。
現在(2015/10)、オレゴン、ワシントン、イリノイ、カリフォルニア、ヴァージニア、ペンシルベニア、の各州で保険事業を展開。
2015年1月、Uber契約運転者向け従量制自動車保険の提供を開始→シェアリングエコノミー関連企業との連携にも積極的な姿勢。
総調達資金 $14M
【設立経緯】
フライドバーグClimate Corporation(農場において、気候予測システムを使って集めたデータを分析、運用、販売するサービス)を立ちあげていたものの、Monsantoに11億ドルで売却。彼は透明性のある保険事業こそが都市部における車利用者たちに革命を起こすと信じていた。投資を募り、Risk Management SolutionsやAsurionで活躍していたSteve Pretre(現Metromile社アドバイザー + iCracked社 戦略アドバイザー/コンサルタント) や、Intuitに買収されたAisleBuyerの元CTOであったDan Pretre(現同社CEO)などを仲間に集めMetromileを設立。
【背景】
アメリカでは70%を超える人々が、(車にそこまで乗らないために)自動車保険料を払いすぎていると言われている。
既存の保険会社は今まで、人が”実際”どれくらい運転しているのかを正確に測ってこなかった。→誰がたくさん運転して、誰がしないのかを把握していない。
↑これは”フェア”ではないしょう。と考えた設立者達。
Uberや公共交通機関、自転車などが増々車の利用を下げている。
【Board Members】
Dave Friedberg Chairman of the Board CEO(Climate Cooporation)
Krishna 'kittu' Kolluri New Enterprise Associates
Neil Rimer Index Ventures
【ミッション】
At Metromile, our mission is to empower drivers by creating a more connected and informed car ownership experience.
メトロマイルにおいて、私達のミッションは、より一貫性と知識を用いた(持った)車の所有(経験)を通して、ドライバーたちに権利や活力をもたらすこと。
【自社説明】
Revolutionizing car ownership to fit your urban lifestyle is what Metromile is all about. By taking our deep understanding of data and transforming it into information and services that make having a car less expensive, more convenient, and smarter, we aim to make the urban car experience as simple as it can be. And for some, we hope to make car ownership a possibility where it wasn’t before.
"都市生活に適した車所有の革命こそがMetromileである。私達のデータ、そしてそれを情報やサービスへと利用することが、安価で、便利で、賢く車を所有することを実現できる。私達は可能な限りシンプルに都市における車(所有)体験を実現したい。そしてまた、車の所有というものを可能性に溢れたものにしたい。"
【Investors】
SeriesA(2012.12.5) $4M
First Round Capital, Index Ventures, New Enterprise Associates and SV Angel
SeriesB(2013.4.30) $10M
Felicis Ventures, Index Ventures and New Enterprise Associates

【事業の特徴およびビジネスモデル】
サービスについて
ターゲットは都市部の普段あまり車に乗らない人や、週末にしか車に乗らないような人。また、自動車保険料を必要(自分の走行距離に対して支払う保険料)以上に払いすぎている人。
1マイル(約1.6㎞)ごとに保険料を支払うシステム
オンラインで申し込み、Metromileから送られてくる無料のガジェット(Pluse)を車のdiagnostic portに差し込むだけ。→何か特別な道具や知識は必要なし。
無料のスマホアプリと連動することでガソリン代を抑えた効果的な運転方法や、より短い通勤経路を教えてくれたりする。
走行距離1000マイル(/年)以下のドライバーであれば、平均して400ドル(約4万8千円)の節約出来る可能性あり。
ベース料金は$30、それに$3.2/1mileが契約者に課金される。例えば、ある人が月に500マイル走行したとすると、下図のように保険料が請求される。

【類似他社】
AutoMD $7M(CA/US) (車を修理してくれる会社を検索するウェブサービス)
Cox Enterprises, Federal-Mogul and U.S. Auto Parts Network
Carvoyant $300K(FL/US)
American Family Ventures, SK Ventures and Stage 1 Ventures
Dash Labs(US)
車のデータを集める類似他社は確かに複数存在するものの、既に自動車保険と組み合わせて事業を展開しているのはMetromilileの独自の強みである。
【最新の取り上げるべきリリース】
2015.8.13 CTOにJose Mercado就任 
Jose Marcado氏は13年間ソフトウェアソリューションを提供し続けてきたキャリアがある。Metromileの前は、AisleBuyerにて GoPaymentという支払いアプリケーションの開発に携わっていた。TIBCO、ZENworksといった会社でのキャリアも積んでいる。
2015.1.28(最新でないが) Uberのドライバーへのサービス開始
Uberと共同でMetromileを用いた新たな自動車保険課金システム(下図)を提供。

【平均自動車保険料】
20社以上の保険会社を調べ上げたQuadrant Information Servicesによると、アメリカ人が支払っている平均自動車保険料(年間)は$907.38(2014年)。
月平均に直すと、1人当たり$907.38÷12=約$75/月
一番保険料の高い16歳のケースでは、$8226÷12=約$685/月
車の所有者が支払う毎年平均自動車保険料は上がっている。
一般的にティーンネイジャー(10~20代前半)のような若い年代は保険料が圧倒的に高い。
Metromileはベース$30に$3.24/1マイルを足した料金。
→月間走行距離14マイル以下のドライバーにとってはメトロマイルが価格的に優位。
→平均保険料が一番高い16歳に至っては、月間走行距離が約211マイル以下のドライバーにとってはメトロマイルが価格的に優位。
【個人的な好奇心】
既存の保険会社の保険料に見合うだけの運転をしていないアメリカ人(特に都市部)が多いということを幾度となく強調しているが、果たしてアメリカ人全体としての走行距離はどうなんだろう?

とあるデータによると、むしろ2009年よりも1人当たりの一日あたりの平均走行距離は増えている。→確かに都市部のアメリカ人は乗らなくなってきているかもしれないが、田舎に住む人や輸送者はより乗っているのかも知れない。(車の価格や、ガソリン価格、また飛行機の価格の変動とかも影響している?)

競合調査

Dash(Company:Dash Labs)
【概要】
Dashはどんな車(1996年以降製)もOBDポートに自社ガジェットを差し込むだけで、Smartにしてしまうプラットフォームサービス
2012年1月に設立。
"最高の運転体験を提供"
BlueToothを用いて、車とスマートフォンを接続。車の状態を簡単に知ることが出来たり、自身の車や運転に関する情報(運転性能)をSNS(TwitterやFacebook)にて友人達とシェアできる。
有名なIoTプラットフォームであるIFTT.comと協力
海外ではカナダ、メキシコ、EU諸国、イギリス、その他アジア諸国の150ヶ国以上で使用されているサービス
Appストアにてアプリダウンロード数20万越(2015.4)
【設立経緯】
CEO Jamyn EdiはハーバードビジネススクールにてにてMBAを取得し、NYU Stern Schoolで大学教授をしながらHBOの役員も務めていた。一方で CTO Brian Langel. は自分自身の会社を経営していた。アイディアは当時からあったものの、安定志向に流されなかなかスタートさせることが出来なかった。彼らは、「成功は一夜にしてならない。」と語る。Dashを始める前にも入念なリサーチを怠ることは無かった。
【重要人物】
Jamyn Edis (CEO and Founder) ハーバード大にてMBA取得
Brian Langel (CTO) Ocheyedanという会社の元設立者 
【評価】
アメリカ合衆国エネルギー省(ホワイトハウス)、Better Homes and Gardens(40万人の読者を抱えるライフスタイルマガジン)、Cloud Innovation World Cupから賞を受ける。
【Dashの意義】
テクノロジーが発展してきているものの、今までドライバーが知りえることのなかった(用いられてこなかった)情報を数値化(見える化)することによって、ドライバーに対してより良い体験・判断を提供する。
【競合他社】
Mojio
Zubio
Automatic Labs
【Investors】
Seed VC (2012.11.26) SOSVenture
Seed (2013.04.04) TechStars $20K
Seed VC-B (2014.05.05) New York Agents, CyberAgent Ventures $1.2M

【ビジネスモデル】
下図のガジェットをユーザーに購入してもらい収益をあげる。また、ユーザーは購入と共に、スマホと連動するため無料アプリをダウンロードする。

【最新の取り上げるべきリリース】
New York City starts driver-tracking program(2015.09.07)
DriveSmartと呼ばれるこのプログラムは、ニューヨーク市民がどのような運転をし、どれくらいの走行距離であり、どれくらいガソリンを使用しているのか、400人を対象に調べるニューヨーク市が実施するプログラムである。そこで使われているサービスはDash.by, Metropia, and Commute Greenerの3つである。このプログラムは自動車保険(Allstate社)の割引も受けられる。近い将来はAllState(また、他保険会社)と手を組んで、新たな自動車保険課金システムを生み出すことも考えられる。

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