磯野家のビールはKIRIN派? アニメ・サザエさんから見る昭和の食卓①
国民的人気アニメ「サザエさん」の番組当初の作品(昭和44年〜)がAmazon Primeで初配信されていることをご存知ですか? レビュー欄は歓天喜地一色で「歴史的快挙」とか「平成最後のビッグプレゼント」などのコメントが並び、カスタマーレビューは現在星5つが84%を記録しています。
そのぐらいのお宝映像満載の作品たちは、本当に見応えがありました。今のサザエさん一家とのギャップに驚きますし、リアルな昭和の時代の風景がとても新鮮で衝撃的でした。
アニメ・サザエさんから「昭和の食」を見つめてみる。
そこで今回から数回にわけて、アニメ・サザエさんからみる昭和の食卓風景や台所の実態、嗜好性の変遷というものを整理して記事化していきたいなと思います。
初回の今回は「サザエさん一家の晩酌事情」ですが、その前に簡単に時代背景とサザエさんの基礎知識をいくつかインプットさせてください。
アニメ・サザエさんが始まったのが昭和44年(1969年)10月5日。
もともと漫画の「サザエさん」は昭和21年(1946年)に福岡の新聞「夕刊フクニチ」で連載が開始され昭和26年に朝日新聞の朝刊に移って、昭和49年まで続きました。
偶然にも朝日新聞に漫画が引っ越しした日は、GHQのマッカーサー元帥が帰国した日。サザエさんは日本の戦後からの激動の時代を、日常としてコミカルに描き、その様子を私たちに教えてくれます。
今回のシーズン1では「1960〜1970年」の1年間分を収録しているわけですが、この頃がどんな時代だったのでしょう。まずはそこを補足しますね。
1969年(昭和44年)
・東京オリンピック開催の5年後の日本。
・東名高速道路 全線開通
・「アポロ11号」人類初の月面着陸成功。
東京オリンピックから5年経過した東京。
日本がぐんぐん経済大国として成長している時代です。主な幹線道路はアスファルト化しつつも、街路はまだ土での舗装。野良犬も当たり前のように街なかにいて、公害が社会問題化していた頃でした。
今回のサザエさんと「男はつらいよ」初回は、ちょうど同じ1969年放映。
時代背景などを付け足すなら、ぜひこちらも観てみてください。
よーく見ると、家電や街の情景が同じですし、さくらの衣装とサザエさんの衣装も合致しています。
さて、そんな時代の晩酌文化はどんな感じだったのでしょう?
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磯野家で登場する酒は「ビール」と「日本酒」だけ。
当時は高度経済成長期も真っ只中。サラリーマンの波平やマスオさんも満員電車に揺られ出勤する光景が描かれています。企業の「モーレツ特訓」というのも存在し、24時間働き続ける時代だったようです。
そんなサラリーマンの癒やしはやはり「お酒」だったようで、アニメでもよく晩酌シーンが登場します。
「どうだね、マスオ君。一杯」と、事あるごとに婿を誘う波平。晩酌の一杯目はビールで、その後は日本酒(熱燗)に切り替えているようですね。
晩酌時のおつまみも非常につつましくて小皿が並ぶ程度。また別の記事で紹介しますが、昭和の日常の食卓って本当に質素。日本人がどれだけグルメになってきたのかがよく理解できますね。
また、台所で甲斐甲斐しく徳利を鍋で温めるフネさんとサザエさんの後ろ姿もよく登場します。
結論から言うと、シーズン1の作品で波平さんやマスオさんが呑んでいたのは「ビール」と「日本酒」だけでした。
仕事帰り、外で一杯というのは本当に贅沢な出来事のようで、あまりアニメでも登場してきません。そのまま自宅へ戻りお風呂にはいって晩酌を楽しんでいたのでしょうか。
シーズン1で「外食」が登場したのは、マスオさんとカツオがおでん屋台に来ているシーンのみ。なぜカツオと?というのはぜに番組をみてチェックしてほしいのですが、ここでのマスオさんチョイスは日本酒。いいですなぁ。
波平が好きなビールはKIRINか?
ビール好きの磯野家。彼らがどこのビールを愛飲していたのか気になるところです。アニメでのビールラベルはこのぐらいの描写程度。仕方ありませんが、このラベルの色合いと当時の時代背景から考えると「KIRIN」だったのではないかと思われます。
1953年(昭和28年)頃は、原料配給制の関係で、朝日麦酒(現在のアサヒ麦酒)と日本麦酒(現在のサッポロ)と麒麟麦酒の3社のシェアは同率だったものの、それ以降は麒麟が独走体制で1976年にはシェアは63.8%だったそうです。アニメが放送された1969年も、それなりに麒麟のシェアが優位だった背景と、当時の麒麟の赤いラベルから類推するに、磯野家はKIRIN派だったのではないかなと思います。
1970年代、波平はサントリーの瓶ビールに心変わり?
しかし、波平×KIRINの蜜月時代もそう長くはなく、シーズン1終盤の1970年の放送回ではラベルは緑色にチェンジされています。
ラベルの色を見るに、サントリービールなのか…?
現代にも通じる、ビール戦争の片鱗をサザエさんの食卓からも感じ取ってしまいました。
ビールの単位は「1ダース…半ダース…」。
今は缶ビール主流なので「1ケース」というカウントをしていると思いますが、当時はダースというカウントだったようです。
磯野家宅のお勝手口手前には黒板が設置されていて、そこに足りないものを記す習慣だったようです。その黒板に見えるのは「ビール 半ダース」という文字。当時は瓶ビールが主流でケースで三河屋さんに発注していたのでしょう。今と違う単位にぐっときてしまいました。
いかがでしたでしょうか?
今の日常が、日常ではない時代て、こんな感じなんだ。と毎回感じさせてくれました。私の場合は食を中心にサザエさんを見ましたが、ファッショナブルなサザエさんの衣類考察とかも誰かしてほしい。
またカツオと大人のかかり方は、当時の教育方針としての考察として誰かに整理してほしいなぁと思ったのでした。
今後は台所事情や、夕食の献立、おやつの考察など、記事化できたらいいなと思っています。
【参考文献】
・「サザエさん キーワード辞典」
・「サザエさんとその時代」
・「サザエさんの秘密」
・キリンビール ブランドサイト
・サントリー ブランドサイト
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